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VTAは他に類を見ない特異な(青春群像)コンテンツ

初めに

 元々、VTuberが面白いって話とか、VTAが面白いって話をできたらなーと思ってnoteを開設したはいいものの、界隈のあれこれ、私自身の忙しさが理由で放置をしてしまっていました。

 こんな中で飛び込んできた突然のニュースに、私自身も、フォロワーも悲しさや怒り、困惑を隠しきれない。
 でも、ふと、逆張りオタクの血が騒いでしまって、「こんな時だからこそVTAの面白さを伝えるnoteを公開すべきじゃないか?!」と思ってしまいました。

 VTAのオタクの皆さんからすると、既にご存知のことばかりだとは思うのですが、それでも楽しめるように書いたので良かったら読んでください。

注意

※この記事には、私個人の推測や意見が含まれます。
※人にとっては、メタいと感じる話が含まれます。苦手な方は無理せずブラウザバックお願いします。
※既にアーカイブが非公開になっているVTA生のツイートが出てきます。
※タイトルにもある通り、私はVTAを「青春群像コンテンツ」だと捉えています。「実在する人間が関わっているのに、その捉え方はどうなんだ」と思われる方もこのnoteは向いていません。
※「VTAはいいぞ」と言っているだけです。VTA以外のその他のコンテンツや個人を貶す意図はありません。比較があったからといって、比較された対象を貶めた訳ではありません。


VTAとは

 バーチャル・タレント・アカデミー、通称VTA。
 にじさんじを運営するANYCOLOR株式会社が運営する、「バーチャルライバー(VTuber)として活躍するための新たなタレント育成プロジェクト」(※VTA公式サイトより)です。

 これだけを聞くと、古参ぶれることが、オタクがVTAを見る理由かの様に聞こえますが、それだけありません。むしろ、私が把握する限り、それがメインの理由で"VTAの熱心なファン"をしている人はごく少数で、他に何かしらの理由があってVTAを見ている人が多い印象です。
 もちろん、ファンが推している一人一人のVTA生個人が推しがいのある素敵なコンテンツ提供者であることがその理由の最たる部分だと思います。そうであることは前提として、このnoteでは、特定のVTA生に依らずに、「VTA」自体をコンテンツとして見る理由のいくつかをお伝えできたらと思います。

 VTAの基本情報は公式サイトにある情報を見ていただければいいのですが、公式サイトにない情報をまとめると、

  • オーディション形式によって配信をするVTA生と配信をしないVTA生に別れる(※今回の記事でメインで扱うのは、配信をするVTA生。以下「VTA生」と書く場合、この配信をするVTA生のことを指すと思って下さい。)

  • VTA生は個人のYouTubeチャンネルやSNSアカウントを持たず、「VTA」全体のアカウントをシェアして活動する

  • VTA生の配信は基本的に、1人につき週に1回、30分だけ

  • SNSはX(Twitter)のみ。月曜日に1投稿だけの更新(※もちろん、ファンの投稿にいいねやRTを公式アカウントがすることはない)

  • 上記2点以外でVTA生として表立って活動することは基本的にない

  • にじさんじライバーと違い、Live2Dなどの動くモデルを所持しておらず、共通衣装(※通称:制服)を着た立ち絵1枚のみで活動(※ファンアートを使用することもない)→にじさんじデビューするときに見た目が一新される

  • ゲーム配信や歌配信は基本的に行わない

  • YouTubeでは、スーパーチャットやメンバーシップなどの金銭を伴う機能はオフになっている(※広告収入は入っている可能性がある)

  • 基本的に、グッズやボイスが出ることはない

  • VTA生毎にGoogleフォームを設置しており、配信の企画で使うお便りなどを視聴者から受け付けている

  • いわゆるフィクションっぽい設定、公式説明文がない

  • にじさんじデビュー時、またはその他の理由でいずれは配信アーカイブが非公開になる

  • etc…

 この環境で活動しているのがVTA生です。
 オタクから見ても、活動者視点から見ても「かなり厳しい制約だな」と思われるかと思います。ですが私は、むしろこの環境だからこそ生まれるVTAの良さが沢山あると思っていて、それをこのnoteでお伝えできたらと思います。

アカデミー(学校)

 VTAは、1企業が行う1プロジェクトではありますが、公式サイトの文面「入学」「学びの場」「在校生」「卒業生」や、ANYCOLORのIR資料の「VTuberの養成所を開校」(※2023年4月期 有価証券報告書12頁より)などの文言を見るに、「学校」と捉えていいのかなと思います。

 VTAを学校と捉えることで様々なエモが生まれると思っていて、例えば、先述した厳しい制約も「生徒を様々な危険から守るために学校が決めた校則」のように思えてきたりします。

 VTuber界には、すでに学校を設定とした箱やユニットがあったりしますが、VTAは設定ではなく、リアルなバーチャル世界へ繋がる新たな学びの場」(※公式サイトより)です。

 VTA生は、毎週の配信やツイートだけでなく、「週に20時間以上」「配信プラットフォームに関するSEO対策やコンプライアンス研修など各種座学、企画制作等のワークショップ」の講義や、「ライブ配信や歌、ダンス、演技」のレッスンを受けます。(※「」内は公式サイトの引用)
 これらの講義は、オンラインで行われる(※リンク先の動画は1期生のみ時点の情報なので、今とは違う可能性もあり)こともあるそうですが、公式サイトに「週に平⽇3⽇の都内での夜間レッスン」とあるように、オフラインで実際にVTA生や講師陣と顔を合わせる機会が頻繁にあります。後述もしますが、VTA卒業生や元在校生・在校生の配信・ツイートからもそれは伺えます。

オフラインレッスン・クラス分け

 レッスンや講義の際には、クラス分けがされている事も分かっています。

 このオフラインレッスン・クラス分けがよりVTAを学校らしくしてくれる要素だと私は思っています。
 
 このクラス分けは、期や時期によって人数は前後するのですが、観測できる範囲(※1期生のみの時代を除く)の1番少ない時期で6人、多くて11人と、にじさんじの同期ユニットよりは多く、派閥やグループができるにはギリ足らないくらいの独特な人数感で構成されています。この独特な人数感が、過疎地域の小中学校や、少人数精鋭の特殊なコースが設置された高校の様な、フィクションっぽい学園ものの空気感を生み出しているのではないかと考えています。

 例えば、1期生の風楽奏斗が在校中に投稿した充電器を貸し借りするこの動画(※Xのバグにより音ズレする場合あり)では、

「レッスンの合間」とあるように、学校の休み時間を思わせる男女の仲の良いクラスのような雰囲気が感じられますし、

2期生の青桐美星乃が2週に渡って投稿した、レッスン入り順マジ予想は、

当時の1組のクラスの全員が出演しており、「この人クラスじゃこういう立ち位置なのかな」といったクラス全体としての雰囲気を掴めます。

 メンバー間のオフラインの絡みという点でいうと、にじさんじライバーでもオフコラボや3D配信などで伺えるとは思いますが、上記の動画のようなVTAの動画が「休み時間や始業前、放課後に仲良いクラスのメンバーとスマホでフラッと撮った動画」のような雰囲気を感じられるのは、コラボのために集まったのではく、いつものように顔を合わせている中の1コマを見せてもらえるからかなと思っています。

 余談ですが、2期生の未来丹音羽が話した授業中のエピソードも

VTAの講義の雰囲気を汲み取れるユニークなエピソードになっていて私は好きです。

制服

 少し脱線した、推測・考察が多い話にはなりますが、VTAが学校らしく感じる要素の1つに制服があります。

 VTA生が立ち絵で着ている制服は、性別問わず、黒っぽい紺?の布地に、襟・肩・袖・袖口などに2本の白いラインが入っているスタジャンともジャージとも言えないようなジャケットを着ています。VTuber界の制服、いや現実世界に存在する制服と比べても、とてもシンプルなデザインだと思います。

出典:栞葉るりの2023年5月29日のXの投稿

 実際に、現実世界にあるアパレルブランドでも似たようなジャケットを見つけることができます。そのようなVTA制服に似た一般に売られている服をファンの一部の間では「(VTA)概念服」と呼んでおり、実際に購入したファンもいます。(私も持っています)

出典:GUオーバーサイズバーシティジャケット

 話が少し変わりますが、近年、実在する日本の学校で、制服の代わりに学校で着用することのできる服を一般のアパレルブランドの既製品から選ぶことができる事例が増えていることをご存知でしょうか?

 私は、初めてVTAの制服を見たときに、これらの事例を思い浮かびました。事例に挙げられてた学校でこの制度を導入する理由としては、性別によらず生徒の好きなように制服が着れる点や購入費用が安価であることが挙げられています。これらの理由がそのままバーチャル世界に適用できるとは思えませんが、バーチャル世界で2021年に新たに開校された学校が、現実世界の学校の新たな流れを汲んでいたとしたら、とても面白くて素敵だなと思ったのです。

 また、上記に挙げたGUの概念服の商品名に「バーシティジャケット」とあります。所謂、スタジャン、スタジアムジャンパーやアワードジャケットと同義だそうで、アワードジャケットは、その名の通り「大会で活躍した選手に記念(アワード)として贈られるジャケットでもあった」(※スタジャンとは?スカジャン・バーシティジャケット・アワードジャケットとの違いを解説!より)そうです。
 他ジャンルでいうと、ディズニー ツイステッドワンダーランドの誕生日イベントであるユニオンバースデーでキャラクター達が着用していたのも恐らくこれに当たりますね。

出典:ディズニー ツイステッドワンダーランド エペル・フェルミエ ユニオンバースデー


 引用元記事にもありますし、ツイステでも同じですが、一般にスタジャンやアワードジャケットというと学校名や所属クラブを模したワッペンや刺繍を思い浮かべますし、アパレル店で売っているもの基本的にはそれらが施されていて、上記に挙げたGUの商品のようなワッペンや刺繍がない無地なものを見つけるのは少々、手間取ります。
 「VTAの校章(ロゴ)くらいあってもいいんじゃないか」とも思えますよね。ツイステだって、NIGHT RAVEN COLLEGEと学校名が書かれていますし。
 それらがなく、現行のVTA制服のデザインになった理由として、私は2つ説を唱えます。

 1つ目は、VTA制服がアワードジャケットだから説です。先述した引用元の記事にもあるように、アワードジャケットは元々「卒業年度、戦績など」を刺繍したそうです。
 VTA生としてお披露目になった段階では、VTA生にそれらはありません。むしろ、こっから作っていくのです。それを表現するために、敢えてなんの施しもしていない、無地な状態なのかなと考えられます。

 2つ目は、スタジャンともジャージとも言えないようなジャケットだから説です。
 「スタジャン」「アワードジャケット」などで画像検索をしていただくと分かるのですが、VTA制服のように肩から袖にかけて縦にラインが入っているデザインのものは殆どありません。一方で「ジャージ」と検索していただくと、肩から袖にかけての縦のラインはあるのですが、襟元にラインが入っているものは殆どありません。というか、襟の形が全然違います。
 この、なんともカテゴライズし難いVTA制服のデザインが、現実世界には存在しないバーチャルらしさを表しているのではないかと思うのです。(※これは以前に私がフォローしている方がTwitterで仰っていたことも参考にした考察です)

少ない情報量

 VTA生は冒頭で述べたように、週に1回30分の配信、週に1度のツイートしか自ら発信する手段がありません。
 また、にじさんじライバーや他のVTuberのような説明文がありません。説明文がないということは、VTA生の職業や種族、年齢が分からないということです。VTAの配信でそれらが言及されることもありません。(※年齢に関しては、飲酒・喫煙・運転ができるかどうか等の大まかものは言及されることがある)
 これは、視聴者に対してだけでなく、同じVTA生の同期や先輩・後輩も同じようで、卒業生の多くは、にじさんじデビューに際してVTA生の素性が明かされたときに視聴者と同じように「まさかあんな正体とは」と驚いたり、逆に「(物騒な)匂いはしてたんだよね」などのコメントをすることもあります。

解釈の余地

 素性が分からない、情報量が少ないということは、それだけ想像・考察の幅が広がります。解釈の余地が生まれます。解釈違いが起こるほどの情報がないので、自由に発想しやすいのです。

 極端な例にはなりますが、既に恋のキューピッドという職についていることが分かっているVTuberがいたとして、その人がサラリーマンとしてスーツを着て働いている姿を想像したとしても、それはリーマンパロとして、ない世界線の1つになってしまいますが、VTA生がサラリーマンとしてスーツを着て働いている姿を想像すれば、それはにじさんじデビュー後に明かされるかもしれない素性の1つとなり得ます。

 とはいえ、全く何もないところからの想像・考察は難しいものです。VTAは提供される情報量の塩梅が絶妙です。VTA生が発言した過去のエピソードトークや既に持っているスキル、VTA生の価値観など、配信で得られるちょっとした想像のタネから「〇〇ってことは、△△って可能性もあるよね?!」といくらでもオタクの想像は膨らみます。

 そして、情報が殆どない中で行われるVTAの活動は、オリジンストーリーと捉えることもできるでしょう。
 映画などのフィクション作品の第1作目、オーディエンスが何も情報を持たない状態からいきなり始まり、困惑や想像・考察をしながら徐々に世界観やキャラクターを理解していく様に似ています。
 にじさんじライバーやその他のVTuberは設定にフィクションらしさが含まれていますが、VTAは、VTA生が「何者なのか徐々に分かっていく(分かっていきそうな)ワクワク感」自体がフィクションらしさを感じさせる訳です。

 この「何者なのか」という問いの何者、狭義では、公式説明文にあるような設定を指すことができますが、広義ではにじさんじライバーを指すことができます。
 「にじさんじライバーなのか?」という問いに対して「いいえ、VTA生です」と答えることはできますが、そう答えるVTAのファンは少ないはずです。「にじさんじライバーみたいな…」「にじさんじライバーになるかもしれない…」等と答えるファンが多いはずです。
 というのも、VTA生とにじさんじライバーは二元論で分割できるような全く別の存在ではないからです。VTA生は、にじさんじライバーになる可能性がある存在であり、VTAでの活動を通して、その確からしさを確定していくのです。

 この、自分が「何者かになろうとする」・「何者か分かろうとする」・「何者か知らしめようとする」過程にあるのがVTAです。「何者か」を求めて試行錯誤・切磋琢磨する様は、まさに青春と言えるのではないでしょうか。

絶えず変化する関係性

 度々お伝えしているように、VTAにはオフラインレッスン・クラス分けがあります。また、それに加えて、ビジネス用のメッセージアプリであるSlackを使ってVTA内での連絡をとっていることも配信などから伺えます。

出典:九埜織人の2022年9月19日のXの投稿

 Slackには、ハドルミーティングという通話機能があり、それを使うことで一度に複数人と会話することが可能です。VTA生はそれらの機能を使って、配信外、レッスン外でも交流を深めているようで、度々その通話中やチャットでのエピソードが語られます。

 配信は、週に1回30分しかないため、基本的には企画が優先されます。そのために、他VTA生との面白いエピソードがあったとしても、配信の時間の尺の都合で、話されないことがあったり、別の週に回されることがあります。VTA生たちは、週に3日のオフラインレッスンに加えて、オンライン、放課後、休みの日等で交流しているのにも関わらず!
 つまり、視聴者が預かり知らぬところで、これまでに殆ど関わりのなかったはずの2人がいつの間にか急接近していたり、クラス替えなどがきっかけで元々仲の良かった2人が関わる機会が減ってしまったりと、絶え間なく関係性が変化していくということです。
 しかも、それを視聴者に伝える機会は限られているし、それを伝える義務もないため、いつどんな関係性が生まれているかを知れることは視聴者にとってのサプライズになり得ます。もちろん、これらも想像のタネになりえますし、多すぎない情報量のため、解釈の余地が多分にあると言える要素の1つです。

 また、VTA生は期に関係なく、互いに教えあったり、協力し合う様子も配信などで伺えます。絵が描けるVTA生にイラストや素材を提供してもらったり、機材トラブルで困ったときに教えあったり、ゲームを教え合ったりなど。
 VTAから初めてデビューしたRanunculusのデビュー曲『DONBURA KONBURA SPEAKERS』の歌詞に

相談ごとは今日もデッキで
助け合い、助け合う 困ったときだって
「それできない?」「あれできない?」
「できなくなくなくないよ!」

『DONBURA KONBURA SPEAKERS』 Ranunculus

とありますが、それを体現しているのがVTA生という訳ですね。

VTA独特の関係性の変化

 にじさんじでも、突発的に垣間見れる関係性の変化を見ることはできますが、VTAには、VTA独特の関係性の変化があります。それは、VTA生の年齢が判明したことによる変化です。

 以下は、同じくVTAの1期生の鏑木ろこと先斗寧がにじさんじデビュー後に、コラボ配信で見せた一幕です。

鏑木ろこ(18歳):初めてウチらがあったときは、お互いの歳、知らんかったのよ
先斗寧(20歳):そうそうそうそう
鏑木:わかんないから素性とかなんも
先斗:で、だんだん分かってきたというか、判明したときに「ぁよちよちよちよち」
鏑木:「おい!昨日までそんなことなかったじゃん!」

出典:ぽんちゃんとにじ鯖を探索する旅に出る【Minecraft|先斗寧・鏑木ろこ|にじさんじ】

 このように関係性が変化した場合、その変化の理由を、VTA在学中に視聴者が知ることは難しいですが、VTA独特のユニークな関係性の変化として紹介しておきます。

 また、元々同期だったメンバーがにじさんじデビューの時期がズレたことで先輩後輩に変化したり(例:RanunculusとVOLTACTION等)、逆に、元々先輩後輩だったメンバーがにじさんじデビューに伴い同期に変わる(例:鏑木ろこと石神のぞみ・倉持めると)といった関係性の変化もVTA独自のユニークな関係性の変化の1つです。

 その他にも、デビューに伴って変化する様々なことに対するエモさや面白さが存在するのですが、思っていたより筆が進んでしまったことと、昨今のVTA周辺の状況も踏まえて、今回はこのあたりにしておこうと思います。

VTAの今後

 最後に、私が考えるVTAの今後について語らせてください。
 下記のインタビューは、Idiosデビュー後に取材され、OriensとDyticaのデビュー後に公開された記事の一部です。

――2023年に入ると、VTA(バーチャル・タレント・アカデミー)でも大きな動きがありました。(略)同時にVTA自体に注目が集まっている印象もあり、熱心なファンも増えていますよね。
鈴木:
我々が想像していた以上に(VTAそのものに)ファンがついた、という印象です。

出典:にじさんじ統括プロデューサーインタビュー 5周年を迎え、次の展望は?

 上記インタビューにあるように、会社としてはファンがそんなに増えない想定だったというか、 ファンが増えすぎないように、(勿論、コストの面もあるとは思いますが)ビジュアルも一般的なVTuberと比較すると控えめで動かず、公式説明文も用意せず、(時間の都合や、権利の問題もあるとは思いますが)コンテンツとして引きがあるゲームや歌配信もさせず、最低限の広報にしていたんだろうと1年程前から私自身は捉えていました。

 ですが今、VTuberがVTuberらしくいれる上記の要素を減らしてもなお、この熱量でこの数のファンができることが分かったのは、VTuberという概念が大きい変革のときを迎えていると捉えています。もちろん、ANYCOLORがそこを意図してVTAを始めたわけではないと思いますが、VTAがここまできたことで、新しい種類のVTuber(らしき何か)が生まれたのではないかと思うのです。
 
 哲学研究者である山野弘樹氏が哲学の雑誌『フィルカル』(Vol.7 No.2)の『「バーチャルYouTuber」とは誰を指し示すのか?』という論文で、

(1)アバターとの身体的な連動(身体的アイデンティティの成立)、
(2)フィクショナルな設定への自己移入(倫理的アイデンティティの成立)、
(3)アーカイブにおける自己定立(物語的アイデンティティの成立)(略)
「身体的アイデンティティ」、「倫理的アイデンティティ」、「物語的アイデンティティ」の3つが成立し、それらが渾然一体となることを通して(「配信者のアイデンティティ」からは区別される)「VTuberとしてのアイデンティティ」が構成されるという事態を示す。

山野 2022,p.251

と述べています。
 VTAは上記の3つが全部少しずつ足らないんです。立ち絵一枚のみで活動するので(1)アバターとの身体的な連動はしないですし、 自己移入する(2)フィクショナルは設定もないし、 いずれかは配信アーカイブが非公開になって消えてしまうので、(3)アーカイブにおける自己定立もしません。(※(3)に関しては少し強引です。VTAにいる間はアーカイブにおける自己定立をすると解釈するのが妥当だと思います。)

 山野氏は後日、Twitterで

とも述べています。私は、VTAがこの「『フェアリータイプ』のような新しいタイプ」に当たるのではないかと考えています。

 そう考えると、VTAというコンテンツ、めちゃくちゃ面白くないですか?!?!?!
 凄いものをこの熱量でリアタイできている気がしている今に、私は誇りを覚えています。

 みなさんもVTuberの歴史に残るであろう1ページをリアルタイムで追ってみませんか?


 この記事に関して、ご指摘、感想、批判等、私にお伝えしたいことがあれば、マシュマロに送ってくださると、私が目を通しやくて幸いです。


2023/08/05 20時頃に誤字脱字修正、加筆を行いました。

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