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夜更けの珈琲は未完書房で【完結】

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日常系現代ファンタジー/人には視えない〈モヤ〉が見える大学生と謎の本屋に現れる幽霊。短編、中編、長編とシリーズで書いたものをまとめて連載していきます。
vol.1~vol.88まで無料でお読みいただけます(最終話vol.94)
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夜更けの珈琲は未完書房で/目次

 人には視えない〈モヤ〉が見える大学生と謎の本屋に現れる幽霊。短編、中編、長編とシリーズ…

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夜更けの珈琲は未完書房で vol.1

朝靄が晴れるころ〈1〉  僕はそれを〈モヤ〉と名付けた。  雲のようにフワフワ漂い、輪郭…

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夜更けの珈琲は未完書房で vol.2

朝靄が晴れるころ〈2〉 『ミカショボウ』という本屋の話を僕にしてきたのは友人の播磨だった…

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夜更けの珈琲は未完書房で vol.3

朝靄が晴れるころ〈3〉 「今お店開いたばっかりだからさ。お兄さんラッキーだね。じゃあ、ご…

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夜更けの珈琲は未完書房で vol.4

朝靄が晴れるころ〈4〉 「少しだけ、説明しますね」  彼女はそう言ってカウンターを挟んだ…

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夜更けの珈琲は未完書房で vol.5

朝靄が晴れるころ〈5〉  ギシリ、ギシリ、と古びた階段が音を立てた。モンブラン色の髪の毛…

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夜更けの珈琲は未完書房で vol.6

夜の間に間に〈1〉  大学の一部で広まっていた「彼」に関する噂は、都市伝説とか、七不思議とか、そういう類の話だと思っていた。どちらかといえば、私はそんな話を真に受けるタイプではなかったし、もしそれが事実なのだとしても、私には関わりのないことだった。彼と親しくするつもりはなかったから。けれど、もしかしたらその方針を変更しなければならないかもしれない。 「ミカー、新しく入った子、社文の一年だって。お前同じとこじゃねえ?」  サークル部屋として使われているプレハブ小屋は学食の

夜更けの珈琲は未完書房で vol.7

夜の間に間に〈2〉  あと三日で満月。僕はその日を心待ちにしながら、播磨に呼び出されたサ…

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夜更けの珈琲は未完書房で vol.8

夜の間に間に〈3〉  まさか、シブキの言っていた一年生が御影君だとは思いもしなかった。ワ…

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夜更けの珈琲は未完書房で vol.9

夜の間に間に〈4〉  ルイを飲みに誘ったのは、モヤが気になったからだ。かといって僕に何が…

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夜更けの珈琲は未完書房で vol.10

夜の間に間に〈5〉  公園の門にもたれかかり、無垢は僕の顔を見上げていた。以前と同じTシ…

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夜更けの珈琲は未完書房で vol.11

夜の間に間に〈6〉  せっかく気持ちよく酔っているのだから、このまま帰ろうとは思わなかっ…

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夜更けの珈琲は未完書房で vol.12

夜の間に間に〈7〉  ルイのあとをついて店に入ろうとしたとき、後ろから名前を呼ばれた。 …

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夜更けの珈琲は未完書房で vol.13

夜の間に間に〈8〉  購入した『無垢』と、手渡された鍵を手に、私は階段を上がった。  二階にあるのは『未完』の棚と、薬棚のような小さな引き出しがたくさん並んだロッカー。私の手の中にあるのはそのロッカーの鍵だ。 「『未完』の書棚に並べても良いと思われるまでは、ロッカーで保管して下さい」  店主はそう言ってこの鍵を私に手渡した。  ポツポツと点在する不揃いの机と不揃いの椅子。私は窓の傍にある小さな木製の丸テーブルに『無垢』の本を置いた。テーブルにはアールヌーヴォー調のラン