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アイスクリームと脱走者【完結】

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長編小説/全62話/14万5千字程度/2017年に初めて書いた小説です。
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2021年6月の記事一覧

アイスクリームと脱走者/37

37.口止め料はチロルチョコレート  車に乗り込み、暖気しながら兄に電話をかけた。カラオケボ…

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アイスクリームと脱走者/38

38.クリスマスと年末の予定は  十二月に入ると、うまし家にクリスマスツリーが飾られた。ツリ…

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アイスクリームと脱走者/39

39.きみちゃんの電話 「美月、波多、千尋、三人か。ラーメンでも食いに行くか」  店長は顎…

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アイスクリームと脱走者/40

40.「年内で店閉めるんだ」  花壇脇の看板が、ライトに照らされていた。  Cafe&Restaurant …

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アイスクリームと脱走者/41

41.惚れ薬のせい  みっちゃんのことを話す店長は、まるで弟の話でもしているようだった。 …

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アイスクリームと脱走者/42

42.プロポーズのつもりで  冬休みに入ってこの冬一番の寒波がやってきた。  クリスマスの日…

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アイスクリームと脱走者/43

43.猫をかぶる  朝起きると空気がピンと張りつめていた。部屋の中でも吐いた息が白い。  ベッドから起き出して庭先をのぞき込むと、兄の車が出ていくところだった。両親の車はすでになく、空は憎らしいほど青く澄み渡っている。  祖母は「洒落た店は落ち着かん」と留守番を決め込み、そのせいと言うわけでもないけれど、兄の婚約者は今夜家に泊まることになっている。  昨夜バイトを終えて家に帰ったとき、風呂上がりの兄が「彼女明日泊まるから」と言った。何から何まですべて事後報告で、都合のよ

アイスクリームと脱走者/44

44.結婚のカタチは  五人そろって会社を出たのは十二時半をまわっていた。文子叔母さんは「ま…

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アイスクリームと脱走者/45

45.母と似た人  コンコンとノックの音がし、ドアが開いたと同時にコーヒーの香りが漂ってきた…

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アイスクリームと脱走者/46

46.求めているものと同じものを  史緒さんとの会食があった日、アルバイトを終えて家に帰ると…

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アイスクリームと脱走者/47

47.千尋は千尋のペースで  翌日、昼過ぎに史緒さんを駅まで送って彩夏のアパートに行った。部…

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アイスクリームと脱走者/48

48.決断したんだよ 「千尋、もう帰る? きみちゃん行かない? 彩夏も」  カウンターにいた…

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アイスクリームと脱走者/49

49.やっぱり似てなかった 「波多も先に行ってて良かったのに」 「帰り千尋に送ってもらうのに…

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アイスクリームと脱走者/50

50.ノリでしちゃった告白だから  一人遅れてラーメンを食べ終わったころ、波多がスマホを手に外に出ていくのが見えた。  それぞれ精算して席を立ち、わたしが一番最後に店から出ると、「ミサト」と波多が手招きする。通話中らしいスマホを差し出し、「ユカから」と彼は言った。 「ミサトに代わってって」  まわりが「ユカ」という言葉に食いつき、わたしは盛り上がる彼らから距離をおいて「もしもし」と話しかけた。緊張で声が震えた。 「ミサト。久しぶりー」  はしゃいだ声のユカも、緊張し