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夜次元クジラは金魚鉢を飲む【無料】

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現代ファンタジー長編小説/全45話 四次元へ誘う夜次元クジラ、転校先の四次元出目金、教室に現れた海。居場所をなくした波留は死んだ母親に会うため四次元散歩していたが……
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長編小説『夜次元クジラは金魚鉢を飲む』

▼本作は小説投稿サイト「ステキブンゲイ」でも公開しています。 創作大賞2022中間審査通過 …

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夜次元クジラは金魚鉢を飲む  #0

0. プロローグ 記憶の中の母親  夜次元クジラが汽笛のような声で鳴いて空に昇っていった…

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夜次元クジラは金魚鉢を飲む #1

←0.プロローグはこちら 1. 金魚のいる教室 「そうですか。お父様はあの事故で」  森谷…

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夜次元クジラは金魚鉢を飲む #2

2. WIZMEE 「簡単な確認事項と、新学期からの流れをお話していきますね」  森谷は…

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夜次元クジラは金魚鉢を飲む #3

3.  四次元金魚  チャイムが鳴り、森谷が後ろを振り返って時計を確認した。 「もっと聞…

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夜次元クジラは金魚鉢を飲む #4

4.四次元のクジラ  波留の席は教室の廊下側の壁際、一番前。すぐそばに扉があって、正面に…

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夜次元クジラは金魚鉢を飲む #5

5.クジラとの対話  夜次元クジラの鳴き声が、波留の鼓膜を震わせた。  シンは海の中に立ち、ターコイズブルーの澄んだ海は遥か遠くまで続いているのに、教室の後ろの黒板の文字が見える。 「俺の好きなものは海とサーフィン。イタリさんの好きなものは?」  波留は呆然としたまま「僕?」と問い返した。ザブン、ザザンと耳に届く波の音が生徒たちのどよめきだと気づき、我に返ったとたん海は消え、シンは教室に立っていて、水のない中空をクジラが泳いでいた。教室中の視線が波留に集まっている

夜次元クジラは金魚鉢を飲む #6

6. 金魚係  三年二組は先に終わったらしく、波留が通り過ぎざまに隣の教室を見ると数人…

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夜次元クジラは金魚鉢を飲む #7

7. スケッチブック  三年三組の教室を出て視聴覚室の前を通り過ぎると、廊下は左へ折れて…

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夜次元クジラは金魚鉢を飲む #8

8.思春期の男の子  アラームで目を覚ましたシンは、スマートフォンで時刻を確認すると慌…

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夜次元クジラは金魚鉢を飲む #9

9. 砂浜の二人  空には薄く雲が広がり、サーフボードを抱えて砂浜を歩きながら、シンは見…

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夜次元クジラは金魚鉢を飲む #10

10. 微睡の海  坂道を自転車で下って路地を抜けたシンは、しばらく線路沿いに走って海岸…

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夜次元クジラは金魚鉢を飲む #11

11. 四次元散歩  ひとり金魚部屋に残った波留は、金魚鉢の傍にある一番後ろの窓を開けて…

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夜次元クジラは金魚鉢を飲む #12

12.  去年の金魚係  ドアのガラス越しに波留と目が合うと、森谷は嬉しそうに教室に入ってきた。 「さっき校舎の下から人影が見えたんだ。シン君かと思ったら波留さんだった」 「シンは餌やったら帰りました」 「波留さんは帰らないの?」 「あ、えっと。もうちょっといてもいいですか? 家に帰っても人の出入りが多くて落ち着かないから」  まだ立ち上がる気力がなく波留が椅子に座ったままでいると、森谷は向かいの椅子を引いて腰を下ろした。出目金が方向転換して一生懸命森谷のそば