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大人こそ楽しめる現国の文章-若者へのメッセージ-

高校生の頃、現代文で問題に正解不正解があることにあんまり納得してなくて、あんまり好きではない科目でした。浪人生の頃「現代文では文章を素直に読む力を試されている」と教わって、少し納得しました。点数も上がりました。でも結局の所、単なる点取りゲームとしか捉えていませんでした。英語は人生を広げる科目、世界史は人生を深める科目と思っていたのに比べると、なんだかチープな感情でした。

しかし今日、機会があって現代文の文章を読んでみると、これがかつて感じていたよりも格段に面白いのです。

教科書に載っている文章は長い間変わりませんが、大学受験で出題される文章は世相を反映して変わります。大学によって傾向は変わりますが、共通試験(私の頃でいうセンター試験)の問題だと、文章自体が、次代を担う若者へのメッセージになっていることが多いんです。あんまり偏ってもいなくて、中立性が高く、誠実なメッセージになっていると思います。

今日読むことになったのは、「有用性の蝕(しょく?)」というテーマの論説文でした(出典: 伊藤徹「《時間》のかたち」)。

この世界に存在するものを、役に立つように使う。「有用化」は人間が大昔からやってきたことですが、近代以降、現在に至るまで続く科学技術の追究は、それを徹底することを特徴とします。しかし、有用化を徹底すると、あらゆるものが手段になり、本質的に無意味なものになってしまうというパラドックスがあるのです。

経済成長、利益の最大化、論理性、医療技術の進歩と長寿など、「究極の目的」っぽく語られることが多いお題目も、有用化を徹底する限り、結局それは何かのための手段となり、永遠に目的にはたどり着けない、ということを言っています。どんなお題目も、とりあえずのものに過ぎないのです。そういったものととともに生きるほか仕方ないとしても、それがはかないものであることを自覚して、距離を取り、凛々しく生きましょう、みたいなことが書いてありました。こんな文章、高校生の頃の私には絶対にピンと来ません。

ここからは私のフィルターの影響が大きいかもしれませんが、私にはこう読めたんですよね。

若者よ、騙されるな。

社会に出ると、周りの大人達は、まことしやかな理屈を使ってこぞって君を責める。

職場で上司が叫んだり、テレビで政治家が叫んだりしている言葉に、影響されすぎないように気をつけてね。

有用性とは無関係に、君は生きている。ただ存在しているだけで、光り輝いているんだということを、忘れないでね。

間違っても、そんな「とりあえずのお題目」にかなわないからといって、自分を殺してしまうようなことの無いように。

ちょっと難しい文章だったので、誤読してるかもしれませんが、めちゃくちゃかっこいい出題だと思いました。

「騙されないでね」

今、このメッセージを発してるクリエイターさんは、多いなーと感じます。

田舎には田舎の、都会には都会の、お題目の押し付けが、いっぱいありますよね。身近な人間の大多数から言われたら「私がおかしいのかな」そんな風に思ってしまいます。

誰もが自分の価値観で生き、他人の生き方も尊重できるような、優しい世の中になっていくといいなあ。

おわり笑

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