【前編】ある夏の日、科学の甲子園を綴る


夏ですね・蒸し暑さに閉口する日々。私は東大受験生の高校3年生。迫りくる夏模試と天王山たる夏休み、当然のことながら手放される楽しみ。こんな日々の中でも私はそれなりに楽しく生きていますが、少し前、たった3か月前に確かに存在した、人生で最も大切だった4日間についての話をしましょう。

科学の甲子園とは?

私の記事は大体この始まり方をしていますね。科学の甲子園とは、野球の甲子園と同じように、都道府県予選を勝ち抜いた代表47校が頂上を目指して激闘する大会です。文字通り科学について競い合い、そして交流することが目的です。

競技には筆記競技1つと実技競技3つがあり、実技競技のほうが配点的には大きいです。そのため、必ずしも都会の進学校が勝つとは限らないところが一種の醍醐味です。ここで、歴代優勝校を見てみましょう。

第1回 埼玉県立浦和高等学校
第2回 愛知県立岡崎高等学校
第3回 三重県立伊勢高等学校
第4回 渋谷教育学園幕張高等学校
第5回 海陽中等教育学校
第6回 岐阜県立岐阜高等学校
第7回 栄光学園高等学校
第8回 海陽中等教育学校(2回目)
第9回 (中止)
第10回 京都府立洛北高等学校
第11回 筑波大学付属駒場高等学校
第12回 栄光学園高等学校(2回目)
第13回 栄光学園高等学校(3回目、史上初の連覇)

進学校ばかりですが、それでも地方公立が大いに健闘しているということがわかることでしょう。例えば、滋賀県の膳所高校と愛知県の岡崎高校は過去2回、岐阜県の岐阜高校に至っては4回もTOP3入りをし、岐阜高校や岡崎高校は優勝経験もあります。私立はというと、超強豪校の栄光学園は優勝3回、TOP3入り5回、海陽は優勝2回、TOP3入り5回という恐ろしい成績です。来年も熾烈な争いになることでしょう。楽しみですね。

辿り着くまでの道

都道府県予選編

さて、全国大会への切符を掴むためにはまず各都道府県で行われる予選を突破せねばなりません。主観ですが、進学校がひしめき合う東京都と兵庫県あたりの予選は熾烈を極めます。また、地方では出場校がほぼ固定のところもそこそこあります。ちなみに、今のところ全国大会13回中13回出場しているのは、膳所(滋賀)、岐阜(岐阜)、宮崎西(宮崎)、ラサール(鹿児島)の4校です。

肝心の私の話ですが、今こうして全国大会の体験記を書けているということは予選を突破できたということですね。簡単なことではなかったので、全国の切符を掴めたときは本当に嬉しく、予選で戦った人たちの思いも背負って力の限り戦ってこようという思いでいっぱいでした。

全国大会準備編

こうして掴んだ全国大会への切符ですが、この切符は数ヶ月を優に溶かします。いえ、楽しいのでよいのですが……。この準備期間もかけがえのない友人たちとの思い出になりました。私の高校は早めに準備を開始したはずなのですが、事前公開競技(※)の準備が最後の最後まで終わりませんでした。
※ 事前公開競技とは:大会より前に競技内容が公開され、各校で事前に作戦を練ってくる競技のこと。大抵は車や気球など実体のある装置を作らせた上で、レースをさせたり得点勝負をさせたりします。

本番直前は、本当にあと数日でずっと夢見てきた科甲に行けるのか?これは全て私の妄想なのではないか?とさえ思い、当日夜7時に起きて顧問に大目玉を食らう夢、当日の実技競技で失敗して会場を燃やす夢など様々な悪夢を見ました。何はともあれ時は過ぎ、とうとう当日を迎えることになります。

本番

Day1~はじまりの日~

朝早くに起き、家を出ました。家を出てメンバーと合流するまでが一番緊張しました。つくばエクスプレスという路線が秋葉原から筑波まで通っているのですが、秋葉原でちらほらそれらしき集団を見かけるようになり、終点のつくば駅は高校生集団で埋め尽くされていました。

紆余曲折を経て会場に着くと、廊下に人間五重塔を作っている集団がいました。なんか変なことやってんなーと思いながら素通りしたのですが、もう一度通ったときになんと知り合いであることが発覚して心底ビビりました。他にも、E学園あたりの人たちが毎朝ラジオ体操をしていたらしいです。科甲会場にいると人は頭がおかしくなるのか、頭のおかしい人たちが科甲に押し寄せるのか……。

開会式は「感慨」そのものでした。本当に自分は全国の舞台に立つことができたのだ、これからどんなに楽しいことが待っているだろう、この4日間はきっと一生の思い出になるだろうなどという様々な思いで胸が一杯でした。SNSの知り合いたちがYoutubeの開会式中継を見ていたらしく、それなりに騒いでいたようで面白かったです。友人にも見られていたらしく、開会式後に速攻LINEが来て笑われました。はい、私はどうせ階段で躓きましたよー

1日目の午後から筆記競技がありました。筆記は2つの会場に分かれていました。チームワークに大いに助けられました。個人の能力に関しては、私たちができないというよりも、周りができすぎるのだということにしておきましょう。仲間の反応は「手応えあり」でした。下に筆記試験の問題リンクを貼ったので、皆さんもぜひ解いてみてください。

https://koushien.jst.go.jp/koushien/pastexam/2023/files/1-1.pdf

ホテルに着いて気づいたことは、自分の生活力のなさです。Aを探してBも必要だったと思い出し、見かけた気がするCも探そうとすると、さっきあったはずのDが見当たらない。充電器を忘れたのではないかという疑いが浮上したときは、冗談抜きで全身から血の気が引いていくのを感じました(10分ほど大騒ぎしたあと無事見つかりました)。部屋で片付けやら明日の準備やらをしているうちに気づけば23時も近く、自力ではどうすることもできない時の流れに唇を噛みながら優雅にYoutube。お風呂には早めに入っておかないと後で面倒だろうと思ったので、一応24時を回るまでには入っていたと思います。本当は徹夜して親の目がない自由な生活を謳歌しようとしたかったのですが、何しろ頭を使わなければならない競技なので大抵さっさと寝ました。

Day2~競技のクライマックス~

とうとう今日は競技のクライマックス、実技競技!今年は地学実験と化学実験、そして事前公開競技の「つくばバルーンフェスタ」がありました。競技の内容を知りたい方は、リンクが多くて貼るのが面倒になってきたので、上のまとめリンクから飛んでください。

まず始まったのが地学実験「アッピン地質ワールド」です。地学はマイナー科目ですから、チームにきちんと勉強している人がいるだけで結構なアドバンテージになるはずです。競技内容は、岩石の特定、地層の観察・記録・模型作りなどでした。模型作り、楽しそうでしたね!

次は化学実験「手のひらの金属鉱山」です。これは、入れ物に小分けにされた14種類の水溶液と6種類の金属板を、観察したり混ぜ合わせたりすることで、どれが何なのか特定するというパズルゲームのような競技でした。色だけで一発で見抜けるものもあれば、なかなかわからないものも。むやみやたらに全て混ぜたら日が暮れるので、作戦会議が大切です。

最後にして天王山の実験競技、「つくばバルーンフェスタ」。アルミ蒸着シート(キャンプなどで使う銀色のビニールのようなアレ)で制限時間内に気球を作り、飛ばし、飛行時間を競います。長く飛べばよいというものではなく、当日発表される指定飛行時間に近づくことが一番の目的です。心配性の私はこのとき最も緊張していました。というのも、この競技は先の2つの実験競技に比べ「運要素」が大きいからです。極端なことを言えば、気球が爆裂したら終わります。実際、今回はヒートガン(気球の中に熱い空気を入れる道具)を接続するコードの電圧が場所によって違うという事態になり、残念ながらやり直しはありませんでした。つまり、いくら事前に頑張って対策しても失敗しうるということなのです。

全体で47チームもあるので、まずは予選を行い、各予選ブロックの上位が決勝に進みます。そこで改めて上位決戦を行うといったところでしょうか。予選で、明らかに決勝進出チーム数より多くのチームが喜んでおり、終わったと思いました。本気で優勝を狙いに来ていたので、ここで予選落ちするとかなりまずいのです。この気持ちをどうしようか、と落ちた前提で鬱鬱としていましたが、なんと決勝進出できました!決勝進出が決まった時に友達と大騒ぎしすぎて、決勝で魂が抜けていました。ごめんなさい。結果は少し惜しかったですが、先述した電圧云々の問題によるものだと考えられます。運も実力のうちだなんて、強運の人の台詞ですね。

ところで「アッピン」についての説明をしなければなりませんね。アッピンは科学の甲子園のマスコットキャラクターです。日によって色が黄色だったり蛍光緑だったりしますが、恐らく黄色を想定されています。E学園の皆さんはアッピン教というものを作って信仰しているそうです。彼らが強いのは、彼らの実力もさることながら、アッピン様のご加護もでありましょう。

後編予告

https://note.com/shioaji_shio/n/n045066e0d091

ミニコーナー
Day3~結果発表と交流会~
Day4~別れの日~
まとめ

他にも、ご飯・ご飯・ご飯・女子比率・ご飯について書いてあります。上記リンクからどうぞ!


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