ss 「星の男」
星の男
それは美しい男だった。この世すべての星屑を集めて光っているような人間は、街の広告になっている。
都会の人混みの中、笑みを浮かべてそれを眺める男がいた。
「どうだ、自分の顔が見下ろしている気分は」
隣の男に語りかける。猫背になったその青年は、広告の美しい男と同じ顔をしていた。
「……でも、つくりものだ」
「ばか。いまはこれがおまえの顔だよ」
美しい男の腿を蹴る。彼はよろめいて、うなだれた。
「どんな顔になっても、おまえはおまえだ。それでも思えないなら、おまえの本当の顔は、俺が知ってる」
「……うん」
唇を微かに動かして、彼は何度もうなずいた。
隣の男は、広告をまぶしそうに見上げる。つくりものの美しい顔。彼の仮面。生きていくために醜い、嫌った顔を覆う別人。
それでいいと思った。
怯える彼は、偽の星に納めておく。俺だけが知っている。その弱く、苦しむ彼の歪む泣き出しそうな顔が。
隣の男は目を細める。過去一切の面影のない美しい男は、唯一変わらない瞳を見た。気弱で、媚びる弱者の瞳。
だから、おまえは美しいんだ。
「本当のおまえは、俺が知ってる」
男はまぶしく微笑んだ。
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