HAPPY　HALLOWEEN🎃(0：0：3)

(目安：10分)

ユウ：
ウィロー：
ウィスプ：

0：深夜２時　ぽつりぽつりと灯り

ユウ：はぁ、今日も終電。これで一週間連続か・・・。

ユウ：眠い、疲れた、休みたい。明日、仮病でも使って休もうかな。

ウィロー：お姉さん。

ユウ：いやだめだ、これ以上仕事を溜められない。

ユウ：もうやめようかな。

ウィスプ：お姉さん。

ユウ：いや、今やめると他の人に迷惑がかかる。

ユウ：頑張らなきゃ・・・頑張らなきゃ・・・。

ウィロー：(同時に)お姉さん！

ウィスプ：(同時に)お姉さん！

ユウ：わっ・・・！？

ウィロー：(同時に)こんばんわ！

ウィスプ：(同時に)こんばんわ！

：

0：(クスクスと笑う二人)

：

ユウ：(Ｍ)頭にかぼちゃをかぶった子供・・・？手にはランタン・・・。

ユウ：(Ｍ)そっか、日付が変わって今日はハロウィンか・・・。こんな時間に子供二人だけ、親は何をしているのかしら。

ユウ：こんばんわ、素敵なお洋服ね、それはなんの仮装？

ウィスプ：仮装？仮装って？

ウィロー：なんの役をやっているかってことさ！

ウィスプ：なるほど！

ウィロー：でも僕達

ウィスプ：これがいつも通りだよ！

ユウ：そ、そう。こんな時間だけど君たち二人だけ？ご両親は？

ウィスプ：ご両親？

ウィロー：お父さんとお母さんって意味だよ！ウィスプは何にも知らないんだね！

ウィスプ：ぼ、僕だって知ってたもん！

ウィロー：ふーん、どうだか。

ウィスプ：ほんとだもん！

ウィロー：あのね、今日は僕達お外をうろうろしても許される日なんだよ！

ウィスプ：いつもはうろうろできないの。

ウィロー：今日の僕達は

ウィスプ：とっても自由！

0：二人笑っている

ユウ：・・・。ねぇ、君たちもしよかったらお姉さんに名前を教えてくれない？

ウィロー：僕達の

ウィスプ：名前？

ウィロー：いいよ！僕の名前はウィロー！

ウィスプ：僕の名前はウィスプ。

ウィロー：僕達二人で一つの

ウィスプ：ウィルオウィスプ！

ユウ：・・・？ウィローくんとウィスプくんね。

ウィスプ：ねぇ、お姉さん。

ウィロー：お姉さんの名前は？

ユウ：私？私はユウよ。カシワギ　ユウ。

ウィロー：ユウ！とっても綺麗な名前！

ウィスプ：ユウ！とっても温かい名前！

ユウ：ありがとう。

ウィロー：ユウ、とっても疲れているね。大丈夫？

ウィスプ：ユウ、いっぱい疲れてるね。大丈夫？

ユウ：あれ、顔に出ちゃってる？

ユウ：・・・あと、年上にはさんをつけなさい。

ウィロー：僕達から見ればユウのほうが年下だよ。

ウィスプ：いっぱいいっぱい年下だよ？

ユウ：・・・あなたたちいくつなの？

ウィロー：僕達の

ウィスプ：年齢？

0：二人顔を見合わせてにやりと笑う

ウィロー：そんなこともう覚えてないや。

ウィスプ：僕達いっぱい生きてるからね。

ウィロー：誕生日は覚えてるよ！

ウィスプ：僕達の誕生日は今日なんだよ。

ウィロー：ハロウィンだね！

ウィスプ：ハロウィンだよ！誕生日おめでとうウィスプ！

ウィロー：誕生日おめでとうウィロー！

0：二人笑っている

ユウ：・・・。

ウィスプ：ねぇ、ユウの誕生日はいつ？

ユウ：・・・１０月２８日よ。

ウィロー：わー、じゃあ僕達と一緒だね！

ウィスプ：一緒じゃないよ、僕達よりも三日も前だよ。

ウィロー：それは細かな差だよ。

ウィスプ：生きている人間にとっては大きな差だよ。

ウィロー：人間はすぐに死んでしまうから。

ウィスプ：人間はあっという間に老いてしまうから。

ウィロー：ユウも死んじゃうの？

ウィスプ：あっという間に死んじゃうの？

ユウ：・・・ねぇ、君たち

ウィロー：(食い気味に)そうだユウ！僕達の仲間になりなよ！

ウィスプ：わぁ、それがいい！そうしようよ！

ユウ：君たち！！・・・一緒に交番に行こう。迷子でしょう？

ウィロー：だから、違うって。僕達に家はないんだよ！

ウィスプ：僕達はウィルオウィスプなんだから。

ユウ：わかった、あなたたち虐待されているのね。だから家に帰りたくないのね。

ユウ：おかしいと思った。子どもがこんな時間に外のいるなんて。大丈夫、守ってあげる、だから(一緒に交番に行こう。)

ウィロー：(だから、から食い気味に)お姉さん！

ウィスプ：僕達とずっと楽しく遊ぼう！

ユウ：私、帰る。あなたたちも早く家に帰りなさい。

ウィロー：ユウ帰っちゃうの？

ウィスプ：僕達と遊んでくれないの？

ユウ：じゃ

0：ユウ、足早にそこから去る

0：背後でふたりがケラケラと笑っている

　：

　：

　：

ユウ：一体なんだったの、なんだかとても気味の悪い・・・

ユウ：はぁ、とりあえず早く家に帰ろ。

　：

0：しばらく歩く

　：

ユウ：・・・。

　：

　：

　：

ユウ：・・・。

　：

　：

ユウ：ここさっき・・・

　：

ウィロー：やぁ、ユウ！

ウィスプ：僕達と遊んでくれる気になった？

ユウ：え・・・なんで・・・

ユウ：あなたたちついてきたの！？

ウィロー：違うよ！

ウィスプ：僕達はずっとここから動いてないよ。

ウィロー：僕達はずっとここにいたよ。

ユウ：・・・ッ！

0：ユウ走る

0：クスクス笑う声が夜の街に響く

ユウ：(M)なんなの！

ウィロー：やぁ、ユウ！

ユウ：(M)なんなのよ！

ウィスプ：さっきぶりだね、ユウ。

ユウ：(M)どうしておなじところに帰ってくるのよ！！！

0：二人ニコニコしている

ユウ：なんなの！あんたたちなんなのよ

ウィロー：なんなのって言われても、ねぇ。

ウィスプ：僕達の正体はとっくに言ったよ。

ウィロー：僕達はウィルオーウィスプ！

ウィロー：洗礼を受けられずに死んだ子どもの魂が寄り集まってできたのが僕達二人。

ウィスプ：拠りどころを求めて彷徨っている死者の魂。

ウィロー：天国にも地獄にも受け入れてもらえなくてずっと世界をさまよい続けるもの。

ウィスプ：悪魔さんがくれたこの炎で僕達はなんとか夜を歩いて行ける。

　：

　：

ウィロー：ダメだよ、ユウ。僕達がいくら子どもの姿をしているといっても名前と誕生日をそんなに簡単に教えちゃいけないよ。

ウィスプ：それだけあれば僕達はユウの魂を縛ることができる。

ウィスプ：あとは契約を結ぶだけ。今日しか使えない特殊な契約。

ユウ：・・・。

ウィロー：ねぇ、ユウ。今日はいいハロウィン日和だね！月があんなに大きく笑ってる！

ウィスプ：今日は楽しいハロウィンだね。今日は人ならざる者たちの祭日だよ！ハッピーハロウィン、ユウ。

ウィロー：トリックオアトリート！お菓子をくれなきゃいたずらするぞ！

ウィロー：ねぇ、ユウ、お菓子を頂戴！あまーいケーキが食べたいなぁ！

ウィスプ：僕は冷たいアイスクリームが食べたいなぁ！

ユウ：ケーキ？アイスクリーム？そんなの今持ってるわけ・・・

ウィロー：ないの？ユウ。

ウィスプ：ハロウィンの日はいろんなお菓子を持ち歩かなきゃ！

ウィロー：ないなら仕方ないね。

ウィスプ：僕達とずっと一緒に遊ぼうよ。

ユウ：いや・・・来ないで、やめて・・・！

ウィロー：(同時に)ハッピーハロウィン、ユウ！

ウィスプ：(同時に)ハッピーハロウィン、ユウ。

　：

　：

0：その場にユウの姿はなくなり、ランタンの炎は先程よりも赤く燃えている

ウィロー：あぁ、嬉しいなぁ、また新しいおもちゃが手に入った！

ウィロー：どうしようかな、そうだ！魂を一つ取り出してどれくらいで火が消えるか勝負しようか！

ウィスプ：もっと丁寧に扱ってねウィロー、全ての魂の炎が消えたら僕達だって存在できなくなってしまうんだから。

ウィロー：わかってるよ！ねぇ、ウィスプ今度はどんな風に遊ぼうか。

ウィスプ：・・・全然話を聞く気はないみたいだね。でもそうだね、どうやって遊ぼうか。

ウィロー：姿形を変えてお人形ごっこでもやってみる？

ウィスプ：大きなドラゴンと戦わせてみるのも楽しそう！

ウィロー：人間の魂は変質しやすいから粘土みたいで面白い！

ウィスプ：さ、ハロウィンはまだまだ始まったばかり。もっと魂を集めに行くよ、ウィロー！

ウィロー：わかってるよ、ウィスプ！

　：

　：

ウィロー：ハッピーハロウィン！！！

ウィスプ：ハッピーハロウィン！！！

0：笑いながら夜の闇に溶けていく