生糸

浮かんだ事を載せています。 明るくはないです。 どうぞ宜しくお願い致します。

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  • わたしについて

    私について書いたこととかいろいろ。

記事一覧

目盛り

おや? ちょっとあなた。 ええ、そこのあなた。 身体にいくつか筋がついていますよ。 ええ、そこに。そっちじゃなくて、ほら、ここ。 気づいていなかったのですね。 まぁ、…

生糸
4時間前
10

日常のありふれた何か

例えば、街中を歩いていて何気に見上げたら、街路樹の枝葉の隙間や建物の谷間などから、夕陽や薄っすらと恥ずかし気に顔を覗かせている三日月が見えたり、夜になって開けて…

生糸
7日前
30

証明

もし、私が誰であるのかを示す物を何ら持たずに、いきなり知らないどこかに放り込まれたとして、そして周りにいる人に「あなたは誰だ」と問われた時、一体どのようにして私…

生糸
2週間前
43

雨が降れば泣けるのに
雨に紛れて泣けるのに

泣くのを我慢して
今日も空を見上げる
どこかで空が鳴いているのに
どこかで雨は降っているのに
わたしのところに雨はこない

降らない雨を待ちわびて
私は空を見上げている

いつか私は泣けるのだろうか

生糸
2週間前
37

7月の花

生糸
3週間前
46

打ち上げ花火もより手持ち花火が好きで
それも明るく咲くのじゃなくて
控えめな線香花火
友人とふたり
小さな音をたてながら
紅葉のように飛ぶ火花をみているが
それはすぐにぽとりと落ちた

辺りが暗くなる

隣で友人が何か叫んでいる
落ちたのは線香花火じゃなかった
蠟燭の焔が揺らぐ

生糸
1か月前
39

ポケットに入れたままの自由を
茹だるような暑さの下に放つ

遠くで陽炎が楽しげに踊りながら
手招きしている

空っぽになったポケットからは
寂しげな音が聴こえてきた
きっと自由は吸い込まれたんだ

目の前が白くなったのは
茹だるような暑さのせい
夏は悪戯に夢をみせる

生糸
1か月前
39

誰がいないのか

皆いなくなれと願ったのは何年前だったか。もう随分と長い間同じことを願っている。 そんなある日。 目覚めると私の他は誰も居なくなっていた。居なくなっているけれど、な…

生糸
1か月前
37

放置したブルーベリー

生糸
1か月前
39
+3

オニユリ

生糸
1か月前
39

咀嚼と吐き戻し

吐き出せずに飲み込んだ言葉がたくさんある。あまりにも飲み込みすぎて、いっぱいいっぱいになって、何の前触れもなく突然吐き戻す。 吐き戻された中には、一部分が溶けた…

生糸
2か月前
36
+3

アガパンサス

生糸
2か月前
53

僕は、やっぱり君が好きなんだ。
今夜、月明かりで照らされたあの港で待ってるから逢いに来てよ。
それで、二人して帆船に乗って揺られてどこまでも行こう。
ね。いい考えだと思わない?

君は僕をどう思っているのかはわからないけど、僕は君と一緒にいると落ち着くんだ。
だから逢おうよ、ね。

生糸
2か月前
37
+1

あじさいとアガパンサス

生糸
2か月前
34
+3

6月の花

生糸
2か月前
53

お話【通気工法】

しゃがみこんで庭の草取りをしていると、 「やあ、ご精がでますね。そしてまた今日は特に風が強いですね」 と背後から声を掛けられた。 風なんて吹いていたかと、声のする…

生糸
2か月前
28
目盛り

目盛り

おや?
ちょっとあなた。
ええ、そこのあなた。
身体にいくつか筋がついていますよ。
ええ、そこに。そっちじゃなくて、ほら、ここ。
気づいていなかったのですね。
まぁ、そんなもんですよ。

え?
私にもついてる?どこに?
あら。あらいやだ。
でもなぜ?いつの間に。
今朝姿見で見た時にはなかったのに。

えっと。これは目盛りですね。きっと。
だって計量カップの目盛りと似ていますから。
ほほう。ccです

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日常のありふれた何か

日常のありふれた何か

例えば、街中を歩いていて何気に見上げたら、街路樹の枝葉の隙間や建物の谷間などから、夕陽や薄っすらと恥ずかし気に顔を覗かせている三日月が見えたり、夜になって開けていた窓を閉めようとして近づいたら綺麗に輝く満月が視界に入って思わず見惚れたり、そんな事が誰にでも一日に一度や二度、もしかするとそれ以上あるかも知れないと思っている。
どうして空を見るのか。「よし、見てやろう」と意気込んでいる訳ではないけれど

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証明

証明

もし、私が誰であるのかを示す物を何ら持たずに、いきなり知らないどこかに放り込まれたとして、そして周りにいる人に「あなたは誰だ」と問われた時、一体どのようにして私が「私」であると証明すればよいのだろうか。
先に書いてある通り、私が誰であるかと言う物は何一つ持っていない。
私が自分の名前や住所などを告げた所で、それらを証明できるものがない以上、それを信用してくれそうにもないし、万が一、誰かが私の身分証

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雨が降れば泣けるのに
雨に紛れて泣けるのに

泣くのを我慢して
今日も空を見上げる
どこかで空が鳴いているのに
どこかで雨は降っているのに
わたしのところに雨はこない

降らない雨を待ちわびて
私は空を見上げている

いつか私は泣けるのだろうか

打ち上げ花火もより手持ち花火が好きで
それも明るく咲くのじゃなくて
控えめな線香花火
友人とふたり
小さな音をたてながら
紅葉のように飛ぶ火花をみているが
それはすぐにぽとりと落ちた

辺りが暗くなる

隣で友人が何か叫んでいる
落ちたのは線香花火じゃなかった
蠟燭の焔が揺らぐ

ポケットに入れたままの自由を
茹だるような暑さの下に放つ

遠くで陽炎が楽しげに踊りながら
手招きしている

空っぽになったポケットからは
寂しげな音が聴こえてきた
きっと自由は吸い込まれたんだ

目の前が白くなったのは
茹だるような暑さのせい
夏は悪戯に夢をみせる

誰がいないのか

誰がいないのか

皆いなくなれと願ったのは何年前だったか。もう随分と長い間同じことを願っている。
そんなある日。
目覚めると私の他は誰も居なくなっていた。居なくなっているけれど、なんとなく誰かがいる“気配”はしている。だけど見えない。
やっと願いが叶ったと、これで嫌な目に遭うこともないと、清々しい気持ちになったのを覚えている。

Aはいつも人を見下した言い方をする。
今日もそんな物言いをされた。ならば自分ですればい

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咀嚼と吐き戻し

咀嚼と吐き戻し

吐き出せずに飲み込んだ言葉がたくさんある。あまりにも飲み込みすぎて、いっぱいいっぱいになって、何の前触れもなく突然吐き戻す。

吐き戻された中には、一部分が溶けた言葉や、かなり消化されて判別できない、止めや跳ねだけになった言葉もある。そしてこれは最近のものだろう、まだはっきりと読める言葉が残っていたりもする。
その言葉を目にした時、ああ、まだ私はそれらをちゃんと消化できていなかったんだと気づく。

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僕は、やっぱり君が好きなんだ。
今夜、月明かりで照らされたあの港で待ってるから逢いに来てよ。
それで、二人して帆船に乗って揺られてどこまでも行こう。
ね。いい考えだと思わない?

君は僕をどう思っているのかはわからないけど、僕は君と一緒にいると落ち着くんだ。
だから逢おうよ、ね。

お話【通気工法】

お話【通気工法】

しゃがみこんで庭の草取りをしていると、
「やあ、ご精がでますね。そしてまた今日は特に風が強いですね」
と背後から声を掛けられた。
風なんて吹いていたかと、声のする方に向き直ると、燕尾服姿の男が立っていた。手には山高帽を持っている。
燕尾服も今どき珍しいが、何よりもだ、その、いったいどうしたらそうなるんだろう。目線の高さより少し上に燕尾服の男の腹が見えるのだが…。

腹に穴があいている!

例えるな

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