スタートアップにおいてCOOとCTOを兼任するということ

はじめに

トリニティ・テクノロジー株式会社 取締役COO兼CTOの大谷真史です。
先ほど発表させて頂きましたとおり、2022年5月にCOOに就任しました(これまで通りCTOも継続します)。

就任にあたって社内外のステークホルダーに何度か経緯等の説明をさせて頂く機会がありましたが、COOとCTOを兼任するということは一般に知られた前例も多くないようで(実は国内外の上場企業でも同様の兼任事例はある)説明コストが少し高く、また参考になる記事等もなかなか見つからなかったため、ここに経緯を簡潔にまとめようと思い久しぶりにnoteを書いています。

自己紹介

大谷真史
東京大学大学院工学研究科修了。
株式会社FiNC、株式会社BuySell Technologies 取締役CTO、株式会社fundbook 取締役CTOを経て独立。大手企業からスタートアップまで幅広い企業にて社外CTO・技術顧問・受託開発など。
2020年よりトリニティ・テクノロジー株式会社に業務委託として参画、2021年より取締役CTO、2022年より取締役COO兼CTO。

エンジニア出身で、CTO歴は6年目になります。
1社目からしばらくスタートアップ企業に身を置いた後、独立して自身の会社で大手企業からスタートアップまで幅広く社外CTOや受託開発などを行ってきました。
現職のトリニティ・テクノロジーには、創業直後の2020年に業務委託として参画しました。
トリニティ・テクノロジーは昨年に創業1周年で約6.1億円の資金調達を行ったアーリーフェーズのスタートアップで、主にスマート家族信託というサービスを展開しています。

人事はオーナーシップを明確にするために

弊社では、ほかの経営陣がそれぞれの専門性を創業時から発揮し役割分担が明確化されていたため、必然的に私は入社当初から本業であるプロダクト開発以外の領域にも多くの時間を割いていました。

マーケティング・全社的な採用・オフィス設計・KPI管理など他の経営陣が対応できない落ちているボールを拾い続けた結果「なんでもやってくれるCTO」として社内に認識されるようになりました。

しかし、「なんでもやってくれる」プレイヤーには結果責任を要求しづらくなるという欠点があります。
「無理してやってくれているから」「メインの仕事ではないから」などの組織の言い訳になりうるものだと考えています。

特に私の場合、兼任していたチームがマーケティングや採用など事業計画の達成において「強」依存しがちな指標を持つチームであったこともあり、そのような重要な指標を追うチームがオーナーシップを十分に発揮しない危険な(KPIツリーの最上部から崩れ兼ねない)構図が出来上がりつつあることを危惧し、手を打つために人事を行う必要があると感じていました。
(自分で課題を見つけ、結果的に自分を課題にアサインする人事をしたので、やや自作自演で寂しい感じはします)。

「なんでもやってくれるCTO」から「CEOがやらないことを全部やることが仕事(の一つである)COO」にジョブチェンジをし、オーナーシップを明確化することが本件の1つ目の目的でありました。
当社は「オーナーシップを尽くすこと」をバリューにも掲げていることもあり、バリュー体現のためにも必要な人事であったと考えています。

経営の役割分担

もう1つの目的は、CEOが短期的な数字管理より解放され、より中長期的な施策にリソースを使えるようにすることです。

非常に幸運なことに、当社CEOの磨と私の得意領域は明確に異なります。
磨は司法書士有資格者で、当社が事業展開するドメイン(家族信託を中心とした幅広い実務)における長年の経営経験・ドメイン知識を有しています。
また、セールス・ファイナンス・バリューの醸成・中長期的戦略etcを得意としており、これらは私が苦手としているところでもあります。

逆に予実・プロダクト・開発・Webマーケティング・採用などを自分が強みとしており、これらは磨がこれまで深くは関わってこなかった領域になります。
またアート的な経営戦略を持つ磨と、サイエンス的な思考の私、とパーソナリティも正反対です。
入社してみたところ、たまたま示し合わせたように得意領域が見事に異なっていました。

後付けではありますが、創業期から2人の間でしっかりと得意領域が分かれていたことは、オーナーシップを高める意味でも、また互いにプロフェッショナルとしてリスペクトを高める意味でも重要であったと考えます。

グロースにオールインしている現在フェーズではCEOがCEOしかできないこと・得意なことに全集中して、それを経営メンバーが支えるという構図が今は最適な体制なのかな、と考えています。

守備範囲を広く保つために

特に社外のステークホルダーへの説明の中で、オーナーシップを広げすぎることに心配の声もいただきました。
忙しすぎることで、クオリティが落ちるのではということです。
そのような状況に陥っていない理由、またこれから陥らないように心がけていることを最後にいくつか挙げてみようと思います。

リファラル採用で開発組織を立ち上げることで早くから開発を安定軌道に

当社はエンジニア・デザイナー合わせて10名弱のチーム編成になっていますが、立ち上げメンバーは全員、リファラル採用で参画頂きました。
みなさんが互いに数年間は一緒に働いたことのあるメンバーばかりで、大小ありますが阿吽の呼吸が通じ、採用コスト・コミュニケーションコストを非常に低く抑えられています。
もし立ち上げ時に採用のツテがなく、イチから採用活動をしていた場合には今のような安定性は出なかったと考えます。

イネーブルメント→オーナーシップ移譲の繰り返し

社内に経験者がいない領域・シニアメンバーが採用できない領域では、ひたすらにイネーブルメント(主にOJTで伴走)し、パフォーマンスが安定したらオーナーシップを渡す、を繰り返してきました。
新卒の方でも古くから会社にいる方でも、その領域において当事者意識を持てる方を見つけては伴走し、小さなオーナーシップを渡し続けることを意識しています。

現時点では特定のスキルがなくとも、アーリーフェーズのスタートアップで求められるレベルのスキルは、大抵は経験者が伴奏すればキャッチアップできるものだと考えています。
オーナーシップを移譲したい領域において未経験の対象者には、およそ3ヶ月間に渡って毎日30分程度、共同作業のスロットを確保するなどしてひたすらにOJTを行うなどしています。
エンジニアでいうペアプロを行うイメージで、イネーブルメントに取り組んでいます。

ちなみにCOOとCTOの兼任が始まってから、以下のような大なり小なり嬉しいメリットを享受し始めています。
・Opsの設計がスムーズになった(事業上必要な環境の手配や見通しが良くなりスムーズになった)
・予実をより作りやすくなった(見通しが立てづらいプロダクト開発などの見通しも自分で微調整できる)
・事業計画から逆算したCRM設計がしやすくなった(入力するだけのCRMからの脱却)

そのほかFAQ

Q:今後COOやCTOは採用しないの?ずっと1人で兼任していくつもり?
A:不可能だと考えています。いずれかを採用して託し、私は今後も他の経営陣が得意ではないが会社としてやるべきであるポイントを担っていきたいと思います。

Q:兼任はアーリーフェーズだからできていることでは?フェーズが変わると当てはまらなくない?
A:これは会社や理念等によると思います。例えば調べたところ超大企業でも同様の兼任はありました。組織における最適解はないのだなと感じました(局所最適はあると思います)。

Q:COOってもっと中長期の”戦略”を見ていくべきでは?
A:こちらはフェーズによるのかな、と思います。当社ではひとつの事業をみんなで役割分担して立ち上げている、0→1ではなくとも1→10のアーリーフェーズ(1か2くらい)にいます。少なくとも私は、今期・来期の達成に向けて現在と未来の大きなギャップをひたすらに埋めていくなど、やや短期的なイテレーションを少しの間は頑張っていこうと思います。

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