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【ノクチル編】 嘘ライブ『曖昧な合間』ライブレポート & 新曲インタビュー(4,395字)

ライブレポート



 とある番組の生放送に出演した、デビュー間もない頃のノクチル。

歌唱中、自分たちの歌とは全く無関係の童謡を歌い出すという暴挙に出たことで、SNSやネットニュースで大きく話題となった。「反抗的だ」「舐めている」「むしろ肝が据わっている」など、賛否両論を受け、手痛い洗礼を受けていた彼女たちは、もういない。

 ノクチルは、幼なじみ4人で結成された奇跡のようなユニットだ。彼女たちの持ち味と言えば、その透明感と、揺らぎのなさである。はたから見ていて、やる気や向上心のようなものはまるで感じられない。が、裏を返せば、努力や友情、青春といった、ある種の意図的な姿勢や成長ストーリーを必要とせず、彼女たちはただ、ありていのままステージに立ち続けてきた。

 そんな彼女たちであったが、アイドル活動を通じ、そのスタンスが少しずつ変わってきているようにも思える。良い意味で力が抜けている点についてはこれまでと大差がないようだが、そんな中でも、以前とある番組において「私たちの活動を通じて、誰かが喜んでくれるなら、それはいいことだと思う」(※ 1 )と浅倉透が発言していたことがあった。

 この言葉が、ノクチルのメンバーのうち、他の誰でもなく、彼女の口から発せられたことが、非常に大きいのではないだろうか。浅倉は、ノクチルの中ではもちろんのこと、それがたとえどんな場所であっても、有無を言わさず中心人物となってしまうような存在感だ。大袈裟かもしれないが、彼女の言葉によってノクチルの舵取りが変わってしまうかもしれないほどに。

 あくまでも、これまで通り幼なじみ4人のままナチュラルに活動していくスタイルは保ちつつ、それでいて、ノクチルが進む方向が楽しい場所であるならば、同じ船に乗り込んだファンやスタッフ、関係者たちにも、同じ思いをさせたい。そんな気持ちが生まれてきたことの証左といっていいだろう。

 今回のライブにおいて披露された新曲『ラナウェイ!』は、過去のノクチルの楽曲『Catch the Breeze』に少し似て、風に吹かれながら進んでいこうといったメッセージを帯びているが、異なる側面として、ノクチル自身がみずから意思で走り出そうとするニュアンスが含まれている点があげられる。

 もちろん、楽曲が表現するメッセージのすべてが彼女たちの態度を表しているわけではないが、自分の足で歩みを進めていこうとする言葉が彼女たちの口から歌われることで、間接的こそすれ、ノクチルの意思表明にも思え、ファンとしては嬉しい限りだ。

 さて、ライブ演出についてだが、先述した『Catch the Breeze』の世界観に登場するような小さな方舟を模した舞台装置に乗って登場した彼女たちは、途中、自らの足で船を降り、ステージを縦横無尽に駆け巡る姿が披露された。

 それは、流されるままに楽しく進んでいた彼女たちが、あらゆる場所、様々な人たちのいる場所に、自らの足を使って走っていくことを表現しているように思われた。

 4人が自由に走り回る足元には、4人それぞれのカラーの照明が焚かれていた。自由に動き回る彼女たちに追随するように、彼女たちが照らされていったのだ。まるで、自分たちの進む道は自分たちで照らしていくとでも言わんばかりであった。

 彼女たちが進んでいくための原動力が、風なのか、波なのか、あるいは彼女たち自身の意思なのかはわからない。肩肘を張らないスタイルを保ちつつ、それでいて、自分たちの足で進んでいく覚悟を見せつけつけてくれたノクチル。その先がどんな場所であれ、あるいはどんな速度であれ、彼女たちが進んでいく方向に、私はついていきたい。

(※ 1  DBC系列『Vision!』10/21 放送)




インタビュー


─ ライブに向けての準備は、どのように始めていったんですか?

小糸:ふわっとしたところから始まって。そのままでお出しできるレベルではないような感じでした。私たちのライブは、いつもその時々で、いろんな思いついたことをみんなで出し合って、その意見を元に、プロデューサーさんがまとめてくださって、主催者さん達と話し合ってくれるということが多いんです。

雛菜:雛菜も、たくさん意見だしました!

透:ちゃんと見てくれている人には、ちゃんと見てもらいたいなって。


というと?

円香:私たちがどういう関係性で、これまでどういう活動をしてきたかということを把握している方たちにとっては、いつもの私たちと、そこから少しだけ成長した私たちが見えていて、 その差分が楽しめるようになっていたんじゃないでしょうか。


なるほど。みなさん自身で成長したと感じられる点はありますか?

小糸: はじめてのライブは、花火大会のイベント会場みたいなステージだったんですけれど、その時はやっぱり、ファンの方かなって思えるお客さんは全然いなくて。それが今では、私たちがステージに立つ時、目の前に私たちを応援してくれている人たちがちゃんといてくれるようになって。何のためにどこを向いてアイドルをしたらいいんだろうって思っていた時もあったんですけれど、今は目の前にいる皆さんに向かってステージに立てばいいんだなっていうことがわかるようになりました。


雛菜さんはいかがでしょうか。

雛菜:ライブって、自分が楽しいって思えることをやってよかったりするから、すごく好きなんですけど、最近は、雛菜たちのことを好きだな〜って思ってくれている人が、もっともっと楽しいなって思ってくれたら、雛菜たちも、もっともっともっと幸せかもって思うようになりました! もちろん、雛菜がやりたい事が全部叶えられたらすごく楽しいと思うから、それがみんなにも楽しいことだといいな〜って!


ありがとうございます。透さんはいかがですか?

透:ステージから見えるコンサートライト、青くて、遠くまで広がっていて、すごく綺麗なので、もっと遠くまで広げたいです。全部青にしたい。


今はまだ物足りないですか?

透:うーん。 そうじゃないんですけど、もっと濃くというか、密度?…海みたいにならないかなって。


お客さん全員がノクチルを見ている状況にしたい、と。

透:だいたいそんな感じです。

円香:私たちだけでなく、できることなら、水面のように、青くて綺麗な中に居られたらいいと思うものなのではないでしょうか。


─ 何も考えないでいいのなら、できるだけ、青いままでいたいということでしょうか。

円香:まさに「何も考えないでいいのなら」ですね。それについては私がどう、というより、誰しも心の中で、多かれ少なかれ思っていることなんではないかと。

雛菜:う〜ん。でも雛菜、黄色とかが好きだしなぁ〜。

円香:青の中にいる方が、黄色は目立つと思うけど。

雛菜:あ〜! 言えてるね。じゃあ、ステージが青いと、雛菜のこともよく見えるってことだね〜

透:いいね。雛菜の生誕祭みたいじゃん

雛菜:わ〜! それ、やりたいかも!




新曲について


01. ラナウェイ!

透:名前が好きですね。『ラナウェイ!』。ふふふ。

円香:意味、わかって言ってる?

透:え? ラン…。ラン、アウェイだから…。アウェイってなんだっけ。

円香:「あちら」とか「離れた場所」とか。ここではないどこか、とかのこと。

雛菜:「ラン」だから、「逃げろ〜!」みたいな?

円香:そんな感じ。

透:疾走感があって好きです。


小糸さんは、この曲についてどんな感情をお持ちですか?

小糸:まずは、ライブで何もお伝えしてないのに、サビの「ラナウェイ!」のところで、みなさんが自然と叫んでくれたのが驚きました。

会場が一体感に包まれていましたね。

小糸:なので、驚きはしたのですが、すごく嬉しかったです。それと、楽曲についてなんですけど、私はアイドルになってから、いつもみんなに追いつかなくちゃっていう気持ちでいて、ずっと焦っていたんです。『ラナウェイ!』を初めて聴かせていただいときに、私はただみんなを追いかけていたんじゃなくて、いつの間にか、みんなと一緒に走ってきていたんだな、と思えるようになりました。曲のタイトルの意味としては、もしかしたら「逃げる」とかってことになっちゃうかもしれないんですけど。でもそれは、これまで私が、勝手に「ここにいなくちゃいけない」とか、「こうしなくちゃいけない」とかって思ったりしていたものやことから、もうちょっとだけ自由に動いてみてもいいのかなっていうふうに、捉えられるのかもしれないなって思えるようになりました。


─「縛られるのも悪くない」という歌詞が、直後に「縛られなくても大丈夫」と言い切りに変わる部分からは、感情の揺れ動きが感じられました。

円香:やるべきことや避けられないことは、私たちだけでなく、皆さんにも日々振りかかってくるものだと思います。そして、そういったものに縛られていくと、知らぬ間に、誰かや何かに縛られていないと不安になってしまうことがありますよね。ときには、そういうしがらみのようなものから、自分自身を解き放ってみるのもいいんじゃないでしょうか。『ラナウェイ!』はそういった楽曲になっているかと。

雛菜:お〜!

透:すっご。百点。

ありがとうございます。的確でわかりやすかったです。




02. 澄み渡っていた

過去を振り返るような曲になっている印象があります。

円香:誰にでもそういう時期があると思いますが、私たちは青春と呼ばれる時期を過ごしています。そういった中で、かつては無垢、純粋で居られたものが、必ずしもそうでないものを見つけてしまったり、そうではない自分に気がついてしまったり、汚れたり、濁ったりする経験を積んでいる途中なのかと。ただ、それは決して悪いことではなく、これまで知らなくても平気でいられたことを知っていったり、受け入れていく勇気を持てたなら、私たちは新しい場所へ進めるのだろうと思いながら、日々を過ごしています。そんなところじゃないでしょうか?

小糸:・・・!

雛菜:円香先輩、もしかして、早く帰りたくなっちゃった?

円香:・・・。誰か喋ってくれるなら、私は黙るけど。小糸、続けて。

小糸:えっ!・・・えっと。円香ちゃんの言う通り、私たちは、きっと毎日少しずつ成長しているし、それは自分で思うよりも、応援してくれる人たちから見た方が、もしかしたら気づくことができるのかもしれないです。でも、そういう、変わっていくものを、自分たちでも、この曲を通して見つめ直していけると、これから先、自分が、ノクチルが、どんなふうになりたいのかっていうことが、よりわかってくるのかもしれないなって、思いました。

透:おー

小糸:うまく伝えられたかな…?


大丈夫ですよ。お気持ちがすごく伝わってきました。

小糸:よ、よかったです・・・!

雛菜:小糸ちゃんも百点だね〜!

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