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【アンティーカ編】 嘘ライブ『曖昧な合間』ライブレポート & 新曲インタビュー(4,781字)



ライブレポート


 アンティーカがライブを通して表現していることの根底にあるのは "ウタ" そのものである。彼女たちの歌声は、単なるメロディを越えた深い感動を呼び起こさせ、その繊細かつ力強いハーモニーは、楽曲の一つ一つに鮮やかな色を添える。

 それは、聴衆の心の奥深くに響き渡り、心に深く語りかける力を持っている。彼女たちが身に纏う、エレガントでありながらユニークなゴシック調のドレスは、細部に至るまで凝ったデザインが施され、個性を際立たせている。ステージで歌い舞う彼女たちは、複数ある283プロダクションのユニットのなかでも中核を担っている。

 バラエティ番組において、お茶目な一面を見せるセンターの月岡恋鐘や、ネットラジオで注目を集める三峰結華・幽谷霧子・田中摩美々のトリオ。そして、ファンによって次々と後援会が立ち上げられているともっぱら噂されている白瀬咲耶。
 普段の彼女たちの印象は「活発で明朗な女性たち」といったものだろう。しかし、いざステージに立つと、彼女たちは新たな世界の中心となり、その力強いステージパフォーマンスで観客を魅了する。パワフルな歌声とともに、観客を新たな次元へと引き込んでいく。

 ステージ上の彼女たちは、画面越しに見るのとはまるで異なる存在へと変貌し、強い印象を残す。ダイナミックなダンスや情熱的な表情からは、彼女たちの内面の強さを感じ取ることができる。
 『アンティーカ』という存在そのものが、ステージを特別な場所へと変えてしまうほどに。まるで「全身全霊」という言葉が彼女たちのためにあるかのように思えるほどだ。

 5人のパフォーマンスは、『アンティーカ』が表現する世界の物語を私たちにありありと伝えてくれる。あるいは、その物語そのものが、彼女たち自身の生き様なのかもしれない。

 アンティーカのライブは通例、ユニットコンセプトに合わせて照明が少し暗めに当てられるが、今回は、『曖昧な合間』というライブタイトルにちなんで、通常とは異なる、明るく活気ある照明が用いられた。
 具体的には、ステージを照らす強烈な白光が、その場の雰囲気を一変させ、幻想的な世界へと導くような効果をもたらした。この光により、ステージと客席の間の境界線が曖昧になり、まるで観客もステージの一部になったかのような一体感が生まれた。
 それはまるでアンティーカが創造した別世界に足を踏み入れたかのような感覚であり、私たちはその瞬間を共有していたのだ。

 曲の最後のサビを終えると、これまで力強く立ち誇っていたはずの5人から、ふっと魂が抜けたかのように脱力し、それまでの物語が、実は童話世界の人形劇だったのではないかと思わされた。

 彼女たちが示すライブは幻想なのか、真実なのか。これがアンティーカなりの『曖昧な合間』なのであった。



インタビュー


─ 『曖昧な合間』というライブタイトルについて、アンティーカとしてはどう解釈されましたか?

霧子:
私たちは、ゴシックをベースに、ミステリアスだったり、幻想的だったり、ファンタジーだったりするような世界観を表現することが多いので、タイトルを聞いた時も、表現する事を大きく変えるつもりはないのかなって、あまり気にしていませんでした。ただある時、ふと摩美々ちゃんが「『曖昧な合間』っていうのはどういう意味なんだろう」って言ってくれて。そこから、私たちはライブタイトルと向き合うようになりました。とはいっても、当初、5人の間で、この言葉の解釈はバラバラで。

結華:それこそ最初は、私たちのこの言葉への解釈自体が、文字通り曖昧だったと言うのもあります。

霧子:たとえば、恋鐘ちゃんは、「曖昧なままでも、ライブを通じてアンティーカがすごいってことを見せつける」って言い切ってくれたり、摩美々ちゃんは「曖昧なものは曖昧なままで、無理にいじくり回す事はないんじゃないかな」って言ってくれたり。


─ 恋鐘さん、摩美々さん、いかがでしょうか。

恋鐘:「曖昧」ってタイトルの意味を考えてみたけど、よくわからなくて。でも、今回のライブは事務所のみんなも一緒で、もちろんどのユニットもすごかユニットやけど、それでも、見に来てくれたみんなにはアンティーカがいちばんすごかったって思わせたいっていうのは、これまでの他のイベントやフェスでもずっと思ってきたことやし、さっき霧子も言ってくれたけど、どんなライブのコンセプトであっても、うちらがうちらのパフォーマンスを変えること自体は必要ないと思っていたんです。

摩美々:恋鐘が言ったみたいに、自分たちのパフォーマンスをするってことについては同意しましたけど、だからといって、283プロのいろんなユニットがいるライブで私たちが1番でないといけない、というような意識はあまりありませんでした。と言うよりも、1番とか2番とか、そういう感じで何かを好きになったりすることがあまりないので。それよりかは、ライブを観に来てくれた人たちが、なんとなくいいよねって思うくらいでちょうどいいんじゃないかっていうのが、私としての考えだったので。もちろんライブをする以上、楽しんでもらえたら嬉しいですけど。


─ ありがとうございます。言葉の解釈ひとつをとっても、お互いに意見を言い合えるのは素敵ですね。

三峰:まぁ、いろいろありましたからね(笑)。アンティーカのデビューから活動が広がっていくまでの過程は、私が思い描いていたよりも少しスムーズなところがあったのですが、実はそこでお互いに気を使いすぎていた結果、我慢だったり、ちょっとしたブレが生じていたんだなということに気づけたきっかけがあって。思ってる事はちゃんと言い合わないと、活動を続けていけないなってことになったんです。


─ なるほど。ちなみに、結華さんは「曖昧な合間」についてどう解釈されましたか?

結華:私は『曖昧』という言葉よりも、その後に続く『合間』という言葉が気になっていて。合間というのは、つまり距離感のことだと思ったんですね。それは、ユニット内・メンバー間にある合間なのか、あるいは、今回は合同ライブということで、283プロダクション内の他のユニットとの関係性のことなのか。さらには、ファンのみなさんと私たちとの間にある距離感のことなのか。そのどれかのことなんじゃないかなって思いました。ただ、いずれにしても、このタイトルがどういった「合間」について言及しているのだとしても、恋鐘みたいに白黒させていこうとするのか、まみみんみたいに曖昧なままにしておくか、どちらの態度をとるのか、ということについては、いずれにせよ、いつか向き合うべきことなんだろうなとは思いました。あとになって聞いたんですけど、イルミネーションスターズの八宮めぐるちゃんが、私たちとの合同練習の時に、メンバー間での距離感が解けていくように感じていたらしく、それをもとに、このタイトルがつけられたということで、実際には、このライブでは、そういった「誰かと誰かの関係性や距離感を曖昧なまま受け入れていったり、乗り越えていこう」というポジティブな意味だったんだろうなと思いますが(笑)。



新曲について


01.Turbidity Echoes

咲耶:アンティーカの曲を歌う時は・・・そうだなぁ、うん。「憑依」しているとでも言えばいいのかな。特にライブのパフォーマンスの際、なんですけど、アンティーカが示す世界観の中の存在、あるいは住人なんだと思い込むと言いますか、役に入り込むことで、これまではパフォーマンスをしていたのだけれど。この曲では少し表現方法を変えました。というのも、新曲『Turbidity Echoes』で表現されていることが、私自身の心情に近いものがあったので、いつものように、自分ではない、別の世界の住人としての役になりきるよりかは、元々の自分のままで歌い上げたほうが、表現としては適切なんじゃないか、と思ったんです。ただ、これまで自分自身をさらけ出すような方法で歌おうとすることがあまりなかったので、苦労したのは間違いないですが。

─ 具体的には?

咲耶:人前に立たせてもらう仕事をしていながら、いや、もしかすると人前に立たせていただいているからこそなのもしれませんが、素の自分自身のまま何かを表現するために体を使うという感覚が、なかなか難しくて。『白瀬咲耶』というアイドルとして歌ったり踊ったりすることは、これまでたくさんしてきましたが、いざ、アイドルとしてではなく、ありのままの白瀬咲耶として何かを表現しようとすると、照れ臭いのでしょうか。自分でも、まだあまりわかっていないのですが。あるいは、今まで向き合って来なかったからなのかもしれませんが、思うように体をコントロールできず、苦戦していました。ただ、結局はアイドルの『白瀬咲耶』自体、私自身が持つある側面であって、根底のところでは同じ存在なんだ、と考えられるようになってからは、歌えるようになりましたね。


─ 結華さんはいかがですか?


結華:曲名を直訳すると、「混濁した反響」…みたいな感じだと思うんですけど、私の中では「混濁」した場所では反響は起きないような気がしていて。たとえば、「混濁」と聞いて、湿って重苦しい沼地のような場所を想像してみると、あんまり反響って感じじゃないのかなって。ただ、何回か聴いていくうちに、この曲が示している「混濁」とした場所って、自分自身の内面世界のことなのかも?って思うようになったんです。心の中って、いろんなことを思ったり考えたりしていく過程で、混濁としていくことがあると思うんですけど、そういうとき、自分自身の内なる声は、全然外に出てこないまま、ずっと内側で反響し続けているかもしれないなって。そういうことだったら、私にも、歌えるかもって思えました。


02. 幽境エフェメラ

霧子:もし、私たちがアイドルをやっていなかったり、アイドルをやっていたとして、誰にも見つけてもらえなかったとしたら。そんな風なことを考えずにはいられない曲でした。曲の中では、人里離れた場所で暮らしていた主人公が、生きていた記録を、誰のためでもなく残し続けていて。曲はただそのことを告げると、そのまま終わっていってしまうんですけど。主人公は、寂しいとか、悲しいとか、そういう次元じゃないところで、ただ誰かに、生きていたっていうことだけは、伝えたかったのかなって。それで、もし私がアイドルになっていなかったら、今みたいに誰かに注目してもらったりすることはなかったのかなって思っていて。もし、そうだったとしても、小鳥さんや、お花さんと生活していただろうから、きっと寂しくはなかったのかもしれないけど、私がそうやって暮らしていたっていうことは、何かの形に残しておきたかったかもしれないなって思いました。それは、アイドルみたいに、誰かに見てもらえるものじゃなかったとしても、記しておきたくなってしまうものなんじゃないかなって。


─ 摩美々さんは、この曲についていかがでしょうか。

摩美々:「摩美々らしい」とか、「摩美々らしさ」とか、本当によく言われるんですけど、その「らしさ」にこだわると、それはそれで自分らしくなくなると思います。そういう「らしさ」って、誰にも見えてない、自分自身でもわかっていないように勝手に出てきちゃうものだと思うので。だから、もしこの曲の主人公みたいに誰からも観測されない場所で暮らしていたら、そういう「らしさ」とかについて、考えることがなかったんだろうなって思います。別に、誰かに勝手なイメージをつくられることのすべてが悪いとかっては思いませんが。ただ、「らしさ」って思われているものは、誰かによって見てもらえていることなんだな〜とは、思いました。


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