山行記録3―岩手山―

 秋に東北の山を歩くのが最高であると、この時期がくるたびに思う。東北の山々は奥深く、美しい森林がある。そして人が少ないため、静かな山が楽しめる。そうしたことで、この前の4連休に仙台で働いている大学の後輩を誘って、八幡平・岩手山周辺の登山を企画した。当初、2泊3日の八幡平~秋田駒ケ岳の縦走を計画していたが、後輩の都合で1泊2日で岩手山を登ることにした。

1日目

 始発の新幹線で盛岡まで移動して、ローカル線とタクシーを乗り継いで、馬返し登山口に到着したのは、9時30分だった。曇り空で、ひんやりとしていて、暑くてばてることはなさそうねと会話した。恰好を整えて、登り始める。整備された登山道は歩きやすく、ちょうど良い傾斜もあって、さくさくと登れた。

 どんどん登るにつれて、木の背丈が低くなってくるのが分かる。森林限界を抜けると視界がぐっと広がるはずであったが、ガスにまみれていた。しかし、ときどき雲の切れ間から盛岡市街が見えてとても近かった。思い立ったら気軽に岩手山を登れる盛岡市民をうらやましく思う。

 八合目から先は、常に強い風が吹いていて身体が持っていかれそうになった。頂上までの道は砂礫で覆われた急斜面であり、天候もあってかなりしんどい。やっとのことで山頂についた時、一瞬だけ晴れた。写真に収めることができなかったが、良いものを拝むことができた。

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 頂上から下って、八合目避難小屋まで戻り、ここに投宿した。まだ日没まで時間があったので、ゆっくり本を読んだりして過ごした。この時間がたまらないから、避難小屋が好きだ。ただ20時過ぎまで、隣の団体が酒盛りをしていてうるさかった。消灯後のいびきも爆音であった。いびきのおかげで何度も目覚めた。

2日目

 夜が明けても、風も強くて、寒かった。それでも歩きはじめれば暖かくなるから、出だしだけが辛いだけである。今日は、岩手山の西方に伸びる稜線、鬼ヶ城コースを歩いていく。荒々しく切り立った岩をすり抜け、霧に包まれた道先へ進むのは、異空間を旅しているようであった。

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 岩稜地帯を抜けると、笹が生い茂っていてなだらかである稜線を歩いた。きっと晴れていたら、素晴らしい景色だろうなあと思うが、ずっと曇りだった。せめてものと思い、道中のリンドウや、水量豊かな湧水に癒されながら登山道を進んでゆく。このままどんよりとした天気なのかと気分が沈んでいたら、突然雲がなくなって美しい湿原が現れた。この瞬間を待ち望んでいたのだ!

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 湿原の分岐点から山を下ることにして、無事に下山口に到着した。温泉に入り疲れを癒す。そして、新幹線駅まで戻って、名物を食べる。そして、名残惜しみながら関東までの旅路を往く。山も良いが、これらもたまらない。

 なかなか、他人と日程を調整して登山するのは骨が折れる部分があるものの、それ以上に人と歩く山は楽しい。改めて実感した次第である。

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