2020/06/07 KP-154 夜の街クラスターの真実

※本記事はフィクションです。

【KP-154 2020/06/07 夜の街クラスターの真実】

夜の街が感染源なのだと誰もが信じていた。
確かに、新宿のK町には陽性者は突出して多かったし、同じホストクラブから複数のPCR陽性が見つかったりした。
都知事や大臣は名指しして目の敵にした。

こうやって、次第に皆が夜の街に疑惑の目を向けた。いつしか、誰もが夜の街を感染源だと決め込んで疑わなくなったのだ。

ホストの兄ちゃんたちも、そこに集うおばさまたちも、夜の蝶のお姉さんたちも、揃って白い目で見られた。
それでも、その街で青春の多くの時間を過ごし、生計を立てている若者にとって、営業や出勤の自粛は考えられなかった。
行政に再三要請されても、いや、要請されればされるほどに、頑なに「夜の街」を守っているようにも見えた。
悪循環によって街はさらに孤立し、世の中の敵愾の対象となって行ったのだ。

…しかし、真実は違ったのだ。

事実は小説より奇なり、とは言い得て妙だ。
あとで本当のことを知らされた人は驚いた。それこそ一人の例外もなく。

それが少しずつ明らかになったのは、いくつかの病院や介護施設からも特徴的なクラスターが発見されたからだ。

どうにも、「夜の街」だけのせいにするのは無理がある。
前提が間違っていたようです。

久々に開かれた専門家会議の記者会見。
H大のN教授が壇上に立った。
言葉少なに訂正の言葉を口にし、深々と頭を下げた。

いま調べていますが、「夜の街」を含むクラスターには別の共通した特徴があるようでした。もうすぐ論文化します…。

そう述べたきり、N教授は口を閉ざした。

何か引き出そうと、記者が続々と質問を浴びせかけるが、教授は一切答えなかった。会見場は重い雰囲気に包まれた。

翌週、1篇の論文がネット上のチョウ一流誌に掲載された。…夜の街だけに。

結論は世界の度肝を抜いた。完膚なきまでに。

夜の街でも好まれていたある菓子が、病院や介護施設の休憩室でも必ず置かれていた。後年の医学研究によると、その菓子の2つの素材の比率がある割合の場合に、ウイルスが増強されるのだった。これまでの医学の常識を覆す発見に、専門家は一様に驚きを表明した。
論文によると、重量比率6:4の場合に、2つの物質は極めて特殊な化学反応を起こしてウイルス活性が増加するのだという。
その証拠とでもいうべきか、春から配合と装いを変えて発売された菓子の新製品では特殊な化学反応は報告されていない。
夜の街では、業界として十分に菓子の備蓄があったために、以前のまずい比率が維持され、感染の制御が遅延化していたというのが、この事実の発見を極めて難しくしていた。

そう。賢明な諸兄諸姉はお気づきと思う。
感染源は、柿ピーであったのだ。

2020/06/07 Die革命KPグループ主宰・医師 奥 真也

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