フェルマーの最終定理 ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで

数学者が織り成す350年に渡る挑戦の歴史

フェルマーの最終定理が証明されたのは私が高校2年の時の事だった。

立花隆の『文明の逆説』という著作で初めてその存在を知り、高校1年の時には数学の授業で「まだ証明されていない数学上の命題の1つ」として数学教師により紹介を受けていた。

この定理が証明されたことを知った日のことは今でも鮮明に覚えている。高校の友人達数人と週末遊びに出かけ、途中で入った喫茶店で手にした新聞上の記事を目にしたのであった。当時の私の友人は比較的マニアックな奴が多かったので(「趣味はマイナーになること」などとわけのわからんことを言ってた奴もいた)、その場でみんなで大騒ぎしたものである。その新聞記事はわずかなスペースでしかなかったが、その内容では「定理の証明には楕円方程式のなんたらが云々・・」と書いてあり、文系軍団だった我々はその記事の意味するところなど皆目理解できなかった(今でも全くしていない)が、よき思い出である。

さて、本作はこのフェルマーの最終定理が証明されるまでを紹介する、ドキュメンタリー的な書籍である。数学の本ではないと思っていい。
フェルマー自身からではなく、ピュタゴラスあたりから現代に至るまでの数学史を、各数学者の人生を軸に追っていくという内容で、読むために数学的な知識は全く必要ではない(あればなおのこと楽しめるのだろう。そういう人が羨ましい)。

結論から言う。めちゃくちゃ感動できる本である。

各数学者の生き様や苦悩・葛藤がサイモン・シンの類まれなるリアリティある表現力により描きあげられるため、私は多くの数学者に感涙してしまった。
特に私の場合は、かねてより敬愛していたガロアの激烈な生き様、谷山・志村の師弟関係、最終的に証明を完成させたワイルズの孤独とストレス・猜疑心などに心を打たれた。

魅力的な数学者は他にも沢山紹介されている。女性の数学者もいる。
どなたでもきっと好きになる数学者に巡り合える作品だと思う。

因みに、私が読んだのは単行本の初版であったが、現在は新潮文庫化されている

私は文系であったため高校までしか数学を学ばなかったが、数学が好きである。純粋に美しさを感じることさえある。
例えば、数学的帰納法による「1からnまでの自然数の和が1/2*n(n+1)であることの証明」を初めて学んだ時には、無限を一手に掴んだような気分になり、一晩恍惚に酔いしれた。
代数学と幾何学の不思議なシンクロにはいつも魅せられたものである。

本作で紹介される数学者は、数学的思考の極限に生きる人物達。私には想像も及ばない、それができる能力にただただ羨望と敬服を抱くしかない世界。一端に触れるだけで今でも興奮を覚える。

読了難易度:★★☆☆☆
知的興奮度:★★★★★
人間ドラマ感動度:★★★★★
トータルオススメ度:★★★★★

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