稚内市に見る「市民と考える」市政広報の在り方

(稚内北星学園大学の授業で、学生が書いた記事。)

市町村の広報では、市民生活にかかわるさまざまな手続、周知事項などが掲載・情報提供されるのが一般的だが、昨今はそれだけでなく、それぞれの自治体の政策課題について、市民に対する問題提起をする動きがみられる。

稚内市の広報部門でも、独自資料などを用いて、「広報わっかない」やラジオ放送・テレビ番組等で日々稚内の情報を届けているが、市政の課題について、わかりやすく解説し、市民の議論をうながす動きはみられるのか。稚内市の取り組みについて考えてみた(石尾)。
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今回石尾をはじめとする学生5名は、2017年8月23日に稚内市役所を訪問、まちづくり政策部・秘書政策課長の山谷知孝さんとまちづくり政策部秘書政策課広報グループ・主任市川美紀さんに、稚内の広報に関して、お話を伺った。このときうかがったお話をもとに、稚内市の広報について考えてみる。

稚内市の広報部門が持つ情報提供手段は、広報誌「広報わっかない」、稚内市のウェブ、ラジオ番組(FMわっぴー)、テレビ番組「稚内市民ニュース」などがある。

広報誌ではイベント情報、健康・介護情報などの告知のほか、稚内市にとって大きな政策課題となっているトピックの紹介を行っている。また、テレビやラジオの番組では市内で行われるイベントなどの最新情報、開催レポートや採用情報のテロップなどで構成された番組を制作している。

特にFMわっぴーでは、多くの番組を制作しており、以下のような番組が高頻度で放送されている。
 ・ハートフルわっかない
  平日:8時22分~・12時42分~・17時40分~
  土日:8時22分~・11時30分~
 ・元気はつらつ稚内
  毎週金曜日 14時~
 ・市政ふれあい通信
  毎月第1月曜日 14時~
  毎月第3金曜日 18時~(再放送)
 ・防災・災害ひと口メモ
  平日:12時55分~
  土日: 8時55分~

稚内市の広報グループの直接の広報活動で大きな比重を占めているのは、紙媒体の広報誌「広報わっかない」である。これは稚内市内で全戸配布されているほか、北海道の電子書籍はHokkaido ebooks でも提供されており、スマートフォンで閲覧可能である。

hokkaido ebooks | 北海道電子書籍ポータルサイト | 北海道の電子書籍ならホッカイドウイーブックス! https://www.hokkaido-ebooks.jp/

重要政策課題についての特集もあり、最近では“公共交通機関について”や“空港の民間委託”の特集が組まれている。

「皆さん公共交通を利用していますか?」広報わっかない, No.784, 2017.8

「稚内空港のさらなる発展に向けて」広報わっかない, No.782, 2017.6 

これらは稚内市にとっての大きな政策課題について、市民の理解を得て、議論をうながすための取り組みと思われる。果たして議論は促されているのだろうか。最近の特集内容を確認してみた。

2017年8月の特集“公共交通機関について”では、バスやJRが使われなくなりつつある現状を分析した上で、稚内市の公共交通機関を存続させるために、市民に積極的に利用してほしいという呼びかけが行われている。たしかに一般論としては納得できる内容だが、多くの市民はそう簡単に利便性を犠牲にはしないだろう。「利用してほしい」という「精神論」以上のことが書かれているかどうかが重要になると思われる。「月に1度乗ってほしい」という呼びかけが行われているが、それで公共交通機関を維持できると考える根拠を示すことはできないだろうか。また、市の施策によりどのように利便性が確保されているのかも重要で、乗り合いタクシー、スクールバス混乗などの記述はあるが、市民にとっての利便性を維持するための取り組みについても、もっと幅広く利用者目線にたった解説がほしいように思った。実際にはバス事業者の「努力」を表示することにあり、稚内の広報では抱えきれない問題があるのかもしれない。

様々な制約を越え、市政の情報など市民の知りたい情報の提供し、主体的に市政について考える市民の活動を促していくようになればいいのではないかと思った。

取材者の感想
 広報グループの仕事として、稚内の情報を周知することや情報を伝えることが主な仕事なのだとは分かったが、観光情報などは他の課に任せている現状であることを知った。「広報わっかない」やラジオ・テレビの取り組みとしても、全道レベルで考えると稚内のことを認知している人は少ないのではないだろうか。メディアやSNSなどをもっと生かし、稚内に足を運んでもらえるような情報提供が、広報部門からも必要なのではないかと思った。

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