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信頼できる最北のFM:稚内の地域メディアFMわっぴー

(稚内北星学園大学の授業で、学生が書いた記事。)

「コミュニティFM」。都道府県単位で放送を行う県域のFM局やAM局とは異なり、市区町村を基盤とするローカルコミュティのためのFM局のことだ。
コミュニティFMは、地元で開催されるイベントの情報や、地域のピンポイントな天気予報など、より地域に密着した情報を発信している。


最北端の街稚内で、FMわっぴ〜の存在感は大きい。コミュニティFMが稚内市でどのような役割を担っているのだろうか。2020年8月、稚内市富岡にあるFMわっぴ〜をたずねて、パーソナリティで局長でもある、杉谷賢俊さんにお話をうかがった。

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地域を盛り上げるためのメディアを作りたかった
FMわっぴ〜は、北海道で7番目、1996年に開局した。道内の中では比較的早い開局である。当時、コミュニティFMは阪神淡路大震災などの災害を機に、注目されるようになっていたが、稚内市民にとっての意味はそれだけではなかった。稚内には、札幌発のメディアではなく、市民のためのメディアが求められていた。コミュニティFMには、地域活性の可能性が期待され、地域の人々の支援・支持のもとに、FMわっぴ〜が開局された。

「生放送」で地域の情報を届ける

杉谷さんは、わっぴ〜の特徴として、生放送の時間の長さを挙げた。ほかのコミュニティFMと比べても平均して1時間以上長い放送時間となっている。天気予報や、交通情報はもちろん、地元で行われているイベントに足を運び中継を繋いでインタビューをするなどの活動により、豊富な地域情報を市民に届けている。リアルタイムで情報を伝えることに重きを置いているからこそ、生放送にこだわる必要があるのだと、杉谷さんは語った。

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「最北端」のラジオには、市外リスナーも多い

もう一つ、大きな特徴として、ラジオの番組あてに送られてくるメッセージの半数以上が、市外からくるということも話題にのぼった。以前稚内に転勤で住んでいた人、稚内に旅行に来たことがある人など、稚内になじみのあるリスナーたちが多くいるということのようだ。また、「最北端」というキーワードから、稚内に興味を持ち、サイマル放送のリストの中からわっぴ〜に興味を持つ人もいて、ラジオ放送をきっかけに稚内に足を運ぶ人もいるという。また余談ではあるが、パーソナリティが番組の中で、「○○を食べたことがない」という話題を出すと、後日、リスナーからラジオ局あてに、その品が送られてきた、ということもあるらしい。コミュニティFMらしいエピソードだが、最北端という特徴ゆえの出来事といえるかもしれない。

稚内の防災ネットワークを支える:生活情報を伝えている「いつもの声」の役割

防災とコミュニティFMについても、詳しいご説明をうかがった。災害時に必要となる情報は、炊き出しなど衣食住に関わる情報、交通情報など、それぞれの地域に固有の生活に関連するものばかりだ。しかし、テレビは、災害の状況を地元以外の人々に伝えていて、被災した地元の人の欲しい情報とのギャップは大きい。こうした情報を伝えられるコミュニティFMならではの特徴だということになる。
単に情報の内容だけでなく、しゃべり手の存在感も大事になるという。普段地元でしゃべっているパーソナリティだからこそ、地元の人に必要な情報を的確に伝えることができ、その「いつもの声」が、被災した人たちに安心感や信頼感を与えられるのではないか。また、普段から、地元の警察や消防、気象台との連携もとれているため、緊急時でも焦ることなく正確な情報を伝えられることができると、杉谷さんは語る。
近年、災害時のメディアのとして、コミュニティFMの役割がますます注目されるようになってきている。道内でも現在27局が開局、さらに新たな開局の動きがある。ただ、コミュニティFMは、そこにあるだけでは信頼され、災害時に役立つラジオになるわけではない。日頃の放送の中で、地域の人とのコミュニケーションを大切に、積み重ねていくことができてはじめて、災害時にも役立つメディアになることができる。

感想


ラジオというメディアへの関心があまり無かった自分だったが、今回お話を伺い、興味を持つことができた。また、災害時にコミュニティFMがどれだけ自分たちのためになるのか、また、その信頼度がどれだけ高いのかということを知ることができた。もし万が一、この街で災害が起きても、FMわっぴ〜の情報があるということがわかっていれば焦ることなく、何をすれば良いのか、的確な判断ができると思う。(豊田)


今回、FMわっぴーを訪問し、番組を聞いてみて、私の中でのコミュニティFMの印象が大きく変わった。以前は、正直なところ、県域放送があれば十分だと思っていたが、コミュニティFMだからこそできる災害時の的確な情報提供、ラジオを通じて広がる市民との交流や関係性づくりが市民の心のよりどころになっていることがわかった。しかしその一方で、若者のリスナー層が少ないという問題点もあるようだ。若者世代に向けた番組を増やすなどすれば、若い層も含めてコミュニティFMの良さを理解する人が増えるのではないか。少しでも多くの人に、コミュニティFMのことを知ってほしいと思う。(土門)

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