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ルータ vs L3スイッチ:真価はどこで発揮されるのか!?を解明する

「L3スイッチがあれば、ルータっていらないんじゃないの?」

はい、こんにちは!松井真也です。シリーズ「基礎から分かる!ルーティング大全」第3回でございます。

前回は、「規模や用途に応じたルータの種類」についてお話ししました!通信事業者から見ても、加入者から見ても、境界面にあるルータは「エッジルータ」と呼ぶことがあるのでしたね…。かように、IT用語はややこしい事情を含んでいますが、そこが面白いところでもあります。

エッジルータと呼ばれるものが2か所あります

さて、今回のテーマは、「ルータ」と「L3スイッチ」の違いについてです!L3スイッチは、簡単にいうと、第2層(データリンク層)の機器としてのスイッチに、第3層の機器としてのルーティング機能が追加されたものです。

となると、「ああ、それならルータをなくして全部L3スイッチでいいんじゃない!ほら、穴(ポート)もたくさんあるしさ!」という声が聞こえてきそうです。それで本当にいいのかな…?なんだか違和感があるし、モヤモヤしてきましたね。

ちょっとモヤモヤしてしまった方は、1分ほど続きを読んでそのモヤモヤを解消しておきましょう!

「ルータ」の役割と特徴

まず、ルータの特徴を今一度振り返りましょう。

ルータは、ネットワーク間の橋渡しをする、特にWAN(広域ネットワーク)やインターネットへの接続を得意としています。

ですから、この役割に関連する機能を付属していることが多いです。

例えば、VPN(仮想プライベートネットワーク)や、NAT/NAPT(グローバルIPアドレスとプライベートIPアドレスの変換)など、ネットワーク間でセキュリティや効率的な通信を支援する機能を備えています。

また、ルータはソフトウェア制御されるため、ネットワーカ間の接続管理がしやすいのが特徴です。

このような特徴があるので、通常、ルータはWANやインターネットとの「境界」に置かれることが多いんですね。

「L3スイッチ」の役割と特徴

他方、L3スイッチは、スイッチとしての基本機能(MACアドレステーブルの学習やMACフレームの転送)に加え、IPパケット処理を行うルーティング機能も持っています。

また、FPGA(Field Programmable Gate Array)や、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの転送処理が得意なハードウェアを用いて高速に処理します。

これを背景に、大量のデータを素早く処理し、多くのポートを持つことが可能になるんです。

自社内のネットワークを接続するために使われることが一般的です。

ルータとL3スイッチの機能的な違い

ルータとL3スイッチの違いがすでに何となく違いが見えてきましたが、少しまとめてみましょう。

ルータは、主にインターネットやWAN接続に焦点を当て、ソフトウェアベースで制御し、機能追加や修正が容易です。一方、L3スイッチは、LAN内の通信制御を得意とし、ハードウェアベースでの高速処理が可能です。

となれば、一つのひな形としてネットワーク機器の構成はこうなります!だんだんスッキリしてきましたよ!

ルータとL3スイッチの役割分担

解決!ルータはいらないのだろうか?

最後に冒頭の疑問について考えてみましょうか。

「L3スイッチさえあればルータはいらない」という意見は一見すると理にかなっているように思えますよね。

が、実際には、上記のとおり、ルータとL3スイッチの両方が持つ独自の機能、性能、役割があり、それぞれが重要な役割を果たしています。

以下に、機能・性能、役割、セキュリティ、コストという観点から、なぜルータがまだ必要なのか掘り下げてみましょう!一部記述が重複しますがお許しください。

1 機能と性能の違い

L3スイッチは確かにIPパケットの処理が可能で、ルーティング機能も備えていますが、これは主にLAN内での効率的なデータ転送に特化しています。一方で、ルータはWAN接続やインターネット接続に特化しており、より広範なネットワーク間の転送と通信を管理する機能を持っています。また、ルータはより複雑なルーティングプロトコルやポリシーに基づくトラフィックの管理が得意です。

2 役割の違い

ルータはネットワークの境界に位置し、異なるネットワーク間でのデータ転送とセキュリティのゲートウェイとしての役割を果たします。

これに対して、L3スイッチは主にLAN内のトラフィックを効率的に扱うために設計されています。ルータなしでL3スイッチだけを使用すると、異なるネットワーク間の接続や複雑なルーティングのニーズに対応できなくなる可能性があります。

3 セキュリティ面の考慮

ルータは通常、ファイアウォールやVPNなどのセキュリティ機能を備えており、ネットワークの外部からの脅威から保護する重要な役割を担っています。L3スイッチも一定のセキュリティ機能を持っていますが、ルータほど包括的ではないことが多いです。

4 コストと投資の最適化

コスト面では、L3スイッチとルータを適切に組み合わせることで、ネットワークの効率とパフォーマンスを最大化しつつ、コストを最適化することが可能です。


結局のところ、それぞれの機器(や製品)が持つ独自の強みを理解し、ネットワークの要件に応じて適切に組み合わせることで、効率的で安全なネットワーク環境を構築できるというわけです。

加えて、L3スイッチの最近のハイエンドモデルには、ルータのようなWANポートを備えるものもあり、ルータとの違いもあいまいになってきています。

「ル―タがいる?いらない?」という議論はあまり本質的ではないようですね…。


はい、本日はここまで!



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