世見-KANKA

「…..ん。、、、?!」
気がつくと彼の腕は真っ赤な血に染まっており一人の美しき少女を抱えていた。必死に唇を噛み締める彼女の頬には、幾度となく冷たい涙が弧を描いていた。
レン:!!「大丈夫か!おい!!!」
彼は必死になって、彼女を揺さぶりながら震える声で問い詰めた。
知らない少女:「どう…して…..?静かに…して….。」
レン:ハッ!…..。
上を見上げるとそこには、信じられないくらい大きく殺気立った怪物が覆いかぶさるようにして居た。
レン:「あぁ、、、。あぁ、、、。ああぁ、、、。」
絶望に満ちた彼は醜く声を震わせながらその場にひざまずいた。
そんな赤子のように泣きわめき頼りのない彼に、少女は苦し紛れに優しく囁いた。
少女:「ありがとう。…..レンがいなかったら私はここにいることはできなかった。」
彼女の描くせんりつが彼を温め雪をも溶かしていた。
レン:「あぁ、、、。
この世の奈落に終止符をうつ彼の叫びだけがただ延々とさまよい、ついにその時が来た。怪物はゆっくりと起き上がり彼の魂の叫びと少女をかき消し……………………………………..。

ハッ!!
「…..ん。、、、?なんだ、夢か。朝からなんだよ。ったく。…ふぅ~。安心したわ。よいしょっと。」
重い腰を何事もなかったかのように上げ、それから寝室のカーテンを開けた。咄嗟に殻に引っ込むカタツムリ。空から一筋の光が差し込む。ベランダから外の景色を眺める颯爽とした彼の姿は、これから起こる出来事には全くと言っていいほど似つかわしくなかった。


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