『VELOTAXI JAPAN 代表 森田さんとの出会い』世界一周物語20話”番外編”
ベロタクシーとの出会い
ガテン系の仕事を辞め、
他にいいアルバイトないかな〜と探していると、
京産の同級生の竹村が『VELOTAXI』
と言う面白いアルバイトがあるから、やってみたら?
と声をかけてくれた。
接に京都烏丸御池にある新風館(現在のエースホテルだ)へ。
ここの代表は森田さんって言う方で、面接というより、
新風館のカフェでご飯を食べたのを覚えている。
では、明日から始めましょうかと言う事で、
velotaxiのシゴトがスタートする。
ベロタクシーはドイツ生まれの電気自転車のタクシーである。
ここの代表の森田さんはベロタクシーの存在を雑誌で知り、
かっこいいなと思い、日本で走らせたいと思ったそう。
そして、ベロタクシーの会社のあるドイツまで直接行き、
日本でベロタクシーを運行できる契約を結んで帰ってきたそう。
その時の話を飄々と語る森田さんに憧れの念を抱いた。
ベロタクシーはお客さんを乗せて利益を得るのはもちろんだが、
このタクシーの車体に広告を載せて、
企業広告としての利益を得るシステムになっている。
お客さんを乗せて、頂いたお金は自分の給与という形になっていた。
だから、誰もお客さんを乗せることができなかったら、
10時間働こうが、給料はもらえない。
けれど、1時間働いただけでも、
お客さんをたくさん乗せることができればたくさんの給料を頂ける。
この歩合性の給与システムは自分には合っていたな~って思う。
頑張ることが、お給料に直結していた。
お給料がたくさんもらえて、たくさん貯金できることが自分の夢に近づいているように思えた。
そして、ここの代表の森田さんは、自分が世界一周に向けて、資金集めの為に働いているというと、凄く応援してくれた。
お昼ご飯は森田さんが京都いる時は必ず連れて行ってくれた。
新風館にあるオシャレなカフェのテラス席で汚い格好で
大盛りのご飯をいつもがっついていた。
渋い顔に髭でめちゃくちゃダンディーな方だった。
たまに、夜ご飯も連れて行って頂き、これまた大学生の自分では払えないようなお店によく連れて行ってもらった。
よく、森田さんは僕に対して、
『小崎くん、将来何をしたいの?』ってよく聞いてくれていた。
『幸せな家庭を築きたいですね〜』って答えていた。
そして、今でもちょくちょくお会いさせてもらうのだが、
一緒の質問をされた。
そしたら、やっぱり一緒の答えで、
森田さんは小崎君は10年前と一緒の事言うてたでと。
人間、本当にやりたいことは、
ずーと変わらずにあるんだな〜と。
しみじみ。
ベロタクシーの後ろのお客さんの乗る所に
「世界一周の為の募金箱」みたいな物を作ってくれた。
なんぼ入ったか今では思い出せないが、
作ってもらって、応援してもらったのが嬉しいかったのを
今でも覚えている。
当時、世界一周の旅行へ行くと言うと、応援されることはそんなに多くなかった。
留学へ行った方がいいのでは?
行って何をするの?
行って意味あるの?
お金の無駄じゃない?
ちゃんと学校行ったら?
云々、言われることが多かった。
この言葉をかけられる度に、
自分自身がやりたい世界一周の意味について考えてしまっていた。
本当に行く意味はあるのか?
人間そこまで強くない。
そのような言葉を弾き飛ばせることなく、悩むことも多かった。
しかし、森田さんは、なぜ行きたい?
とか、行って何の意味があるの?
みたいな質問をすることはなかった。
ただ、ただ自分のやりたいことを肯定して応援してくれた。
まだ世界一周へ行ってない自分に対して、
いつも小崎くんはすごいな〜と言ってくれていた。
僕はまだ世界一周へ行ってないから何も凄くないですよ、
と答えると、森田さんは、
『行くと決めて行動している時点で、もう行っている』
と言ってくれて、僕はこの言葉に心が救われた。
何かに挑戦してきた人は、
他人の背中をそっと押してくれるのかな〜と少年は思った。
自分を応援してくれた人の心が
救われた経験をしてきた人なのだろう。
やる段階では、なぜやりたいとか、
やる意味なんて分からない事がほどんどなのかもしれない。
そして、『〜〜な理由で、〜〜をしたい』
みたいなものがあるのなら、
それはやりたいことではなく、
やった方がいいと言われている場合が多いのかもしれない。
世界一周へ行く理由なんて、正直な所、よく分からなかった。
しかし、行きたいと言う気持ちだけはあった。
何かよく分からないけど、やりたい。
そんなものが本当にやりたいことなのかもしれないな〜と。
10年前に帰っても、一緒の道を歩んでいたと思う。
そして、10年前の自分があるから今があるんだな〜と。
少年は現在32歳。
森田さんが少年に出会った時と同じぐらいの歳になった。
森田さんみたいに立派な大人にはなれていないけれど、
他人の夢や目標を否定することだけはしたくない。
憧れる先輩は、自分の話をしっかり聞いてくれる。
歳が下だから、と言う理由で、アドバイスをしたり、
自分の経験に照らし合わせてのアドバイスをしたり、
そういうことをしない人が好きだ。
ただ、ただ、話を聞くと言うことはなかなか難しいことだと思う。
しかし、自分が好きだな〜って言う人は総じて、
自分の話を否定せずに、ただただ肯定して聞いてくれる。
そして、必ず、人に対してのリスペクトがある。
森田さんはそう言う人だ。
僕もそう言う人になりたいと思った。
次章に続く。
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