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マスクを外すとそこは5月だった

散歩やお昼休憩で外に出る機会がある。
外に出る機会という言葉もおかしいが、基本家で仕事をしているので機会がないと外に出ないのだ。自粛生活で外に出ることも少なくなり季節を感じるタイミングも少なくなったためか、今年は季節が進むのが早く感じる。長袖では暑いときもあるし、何よりもマスクがそれを助長させる。口周りだけがじんわりと汗ばんでいる。温室育ちの髭。早く伸びたりするのだろうか。

こないだ散歩の帰りに、家の近くで人気がないのを確認してマスクを外してみた。するととたんに水を含んだ土や地面の匂いがする。5月だ、と思った。作物がぐんぐんと背を伸ばし、雑草に追われる季節。梅雨前の紫陽花も見るたびに育っている。

畑で野菜を育てていたときは、かぶやほうれん草やちんげんさいが次々に育っていた。毎日食べても追いつかないくらい。日光の強さと相まって、街の匂いはそれをより強く思い出させた。どんな感情も代わりにならない気持ちよさを感じた。

僕は風が好きだ。風を浴びると自分にまとわりつく嫌なものがするするっと飛び出していくような気がする。実態はないのだけど。風を浴びたり水を飲んだりと、めぐりめぐることが人間にとってよいことなのだと、実践するたび身体が教えてくれる。

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最近はというと、社会との接点をなんとか保ちながら毎日を過ごしている。インターネット回線を通して社会を感じる。「必要」だけが社会との接点なのが少し気にかかるけど。あちらこちらから飛んでくる言葉やイメージはときに回線を超えて、画面を越えて、心に飛び込んでくる。目の前にないものに感情を揺さぶられるくらいなら、目の前の風に、日々に、心を揺さぶられたい。そのために毎日窓を開け風を感じている。

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