2020年に聴いた音楽まとめ

毎年年末になると各所でベストアルバムが発表され、そのリストを眺めては片っ端から聴いていくスタイルが5年ほど続いている。その楽しみを広げるべく、今年僕が見つけた好きな音楽とよく聴いた14枚のアルバムを紹介します。

kitri「kitrist」

今年聴けてよかったベストワン、kitri。kitriに会えたことで、連弾とハーモニーの豊かさを知った。ふと見たYouTubeで「矛盾律」のMVを見たのがきっかけで、鳥肌が立った。曲は先の読めない映画みたいな展開。思わず涙してしまうほど...。2人で曲を作るときは空想の中のイメージを絵に描いて伝えることがあるらしく、一曲一曲にイマジナリーな雰囲気を纏っているのもそのようなプロセスからなのかも。網守将平さんがリミックスした「羅針鳥」も聴いたけど、シングルカットしてほしいくらい素晴らしかった。kitriは4月のライブチケットをとっていたんだけど、コロナで中止になってしまったね...。

角銅真実「oar」

いくつもの音があちこちから入ってきて、気持ちがいい森の中に佇んでいるような気持ちになる。風が吹いてきて音が鳴って風景を作るように、音の重なりから景色が立ち上がる。どんぐりがランダムに落ちていくみたいな気配を感じる。また歌声も美しく、これを耳に流すといつでも清閑な空気の中に入っていける。来年以降も携えておきたい一枚。

青葉市子「アダンの風」

青葉市子さんといえばギター弾き語りのイメージだけど、このアルバムではパーカッションやベース、ストリングスの音なども入っていて神秘的な雰囲気に包まれていて、とても好みだった。沖縄の島を渡り歩いて物語を作って曲作りをしたようで、聴いているとまるで空想の世界に入り込んだかのよう。青葉市子さんの「hermine」というサイトも素晴らしくて(デザインも綺麗)、適当に記事を開いては読んでいる。

Tomotsugu Nakamura 「Literature」

Twitterで音楽家の宮内優里さんが紹介されていて、聴いてみたらどっぷりはまってしまった(ちなみに僕が音楽を作るようになったのは、宮内さんのワークショップのおかげである)。スローなムードでお喋りするときのBGMにぴったり。こういう音楽ってどう作るんだろう。今年はアンビエント・エレクトロニカのジャンルも少しずつ聴いてみたけど、結局中村さんの作品に戻ってきてしまう自分がいる。

藤井風「HELP EVER HURT NEVER」

聴きたいものが見つからないときにいつも選ぶアルバムだった。Spotifyのまとめによると再生回数上位5曲のうち2曲が藤井風で、特に好きなのが最後の「帰ろう」。ラジオでふいに流れてきて聞き惚れてしまった。あらゆるところであらゆる音楽が流れている時代に「どうしてももう一回聴きたい」と思わせる。

阿部海太郎「Le plus beau livre du monde」

僕が普段聴いている音楽ではあまり馴染みがないオルガンやアコーディオン、バイオリンなど、中世の空気を感じさせてくれる阿部海太郎さんのアルバム。現実逃避したいときにノイズキャンセリングのヘッドホンなどで聴くと、時空間を旅することができる。

細野晴臣「花に水」

「TALKING」は昨年リリースされたVampire Weekendの曲中で使われていて知った曲。今年、再発売されたようだ。1984年に無印の店内BGMとして細野さんが作ったものだけど、裏でひたすらに繰り返す「ポーンポーン」と、心の中で勝手に作るメロディのようなシンセサイザーが妙に心地いいところに、音楽の妙があるように思う。

Dirty Projectors「5EPs」

今年は Dirty Projectors の空気感にハマったのである。午後の昼下がりにぴったりで、箱根に行ったときにいいスピーカーで流したらすごく気持ちよかった。予定調和的でない、不思議なメロディや音をリピートして使ったりしているのが面白くて、そのリズムは実家の裏庭で蝶が舞っているみたいな感じがする。

Adrianne Lenker 「songs」

まずジャケットがかわいい。このアルバム、すべてアナログ環境で録音されているとのことで、背景に鳥の声が入っていて楽しいし、歌っている場所の静けさまでもが聴こえてきそう。シンプルなギターと歌声だけだけど、とても豊か。昼間の散歩のお供にしたらすごくよかった。ぜひいい音響でレコードを聴いてみたい...。

Jónsi「Shiver」

ヨンシーさんアルバム出してくれた。シガー・ロスもそうだけど、無機と有機の組み合わさり方が絶妙だと思う。一見、近づきがたくて金属がどろどろしているような質感なんだけど、実はその中で生物が蠢いているような。綺麗なものだけが綺麗じゃないというヨンシーの音楽に、底知れぬ美しさを感じてしまう。

Taylor Swift 「folklore」

ジャケットのイメージ通り、人の気配がない白い空気が似合うアルバム。テイラー・スウィフトのイメージとは正反対の曲だからとかではなく、単純に曲が美しくて何度も聴いてしまった。つよい。

Blake Mills  「Mutable Set」

アルバム全体としてはダークな印象だけど、なんだかずっと流していられるアンビエント音楽としての側面がある。気付くとアルバム一枚聴き終わっていて、静寂の中に還っていくのがまるで自然かのよう。プロデューサーとしても活動しているらしく、Blake Mills のプロデュース作品も注目してみたい。

Phoebe Bridgers 「Punisher」

くぐもった低音と美しい歌声が合わさって、音楽としてすごく心地がいい。寒い朝にも、雨の昼間でも、さみしい夜でも、いつでもそばに寄り添ってくれそう。上述のBlake Millsもレコーディングに参加しているそう。

Tame Impara 「The Slow Rush」

こんな素晴らしいアルバムをリリースした年にヘッドライナーとしてフジロックに来てくれるはずが、なくなっちゃったね... 「Breathe Deeper」がどこまでも連れて行ってくれそう。来年待ってます。

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