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【ゴジラ−1.0】〜マイナスの意味

【ゴジラ-1.0】のゴジラは、とても苦しそうで、哀しそうだった。
ゴジラが、核実験の影響で生まれた設定なのであれば、ゴジラもまた被害者であり、身体に放射能を受けている。
あまりにも有名で、歴史のある、あのゴジラの吠え声。「マイナスワン」のゴジラの声は、人間への攻撃ではなく、身体に受けたダメージに苦しむ咆哮に聞こえた。苦しみの叫びのようだった。
身体が発光し、空を仰いだあと、渾身の力で全身を折り曲げて、口から吐き出すゴジラの光線は、事物を破壊するための光線ではなく、苦しみのあまり体内の放射能を排出しようと発した光線に見えた。
ゴジラの姿は、戦争の死者が生者を追いかけてきたような、何かを伝えようとしにきた姿のように思えた。
そんなゴジラに、戦争を生き抜いた人々は、決死の戦いを仕掛ける。
なんで生きて帰ってきた、と罵られた人々が、生きていてもいいんだ、という再生をとげるためには、ゴジラを葬ることが必要なのである。
何作も、人々の恐怖の象徴として描かれてきたゴジラは「マイナスワン」でもまた、人々の恐怖の象徴だ。ただその恐怖は、とても深いところ、人々の心に沈んだ、潜在意識下にある恐怖のようだ。
目を背けていた潜在意識に隠れていた恐怖が、ゴジラとして、人々の前に現れる。
潜在意識は、海に浮かぶ氷山の海の下に隠れている部分に例えられたりする。(水面上に見えている氷山の表面積・体積より遙かに水面下のほうが巨大)
タイトルについた「マイナス」は、物理的にマイナスになった戦争直後の日本の状態というよりも。
目に見えない、水面からマイナスの位置に沈んだ潜在意識下の恐怖を、見事に言い表している、と思った。
ケレン味に溢れた【シン・ゴジラ】のあとで、70周年目に、ゴジラという存在の、深く純粋な原形を、蘇らせ提示して見せてくれた一時代の〆にふさわしい作品だった。

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