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(7)『サカサマのパテマ』【おすすめアニメ感想】

アニメ作品『サカサマのパテマ』についての感想を記したいと思います。来訪いただけたら嬉しいです。

サカサマのパテマ (PATEMA INVERTED)

(2013) 原作・監督・脚本:吉浦康裕、製作:小野幹雄、稲垣亮祐、アニメーションキャラクターデザイン・作画監督:又賀大介、アニメーション制作:スタジオ・リッカ、(声)パテマ:藤井ゆきよ、エイジ:岡本信彦、イザムラ:土師孝也

Asmik Ace(公式)サカサマのパテマ 特報(Youtobe)(引用)
(現在、本作の上映は終了しています)

プレビュー
  広大な地底都市に暮らす人々、その首長(おさ)の娘 パテマは皆に慕われているが、度々いいつけを守らず禁じられた区域に足を運んでいた。彼女は「青空の広がる」まだ見ぬ世界への夢をみていた。
一方、地上の都市「アイガ」に住むエイジは亡き父親の夢に同調し、冒険心を秘めたまま抑圧的な学校生活に馴染めずにいた。
その二人はある事件をきっかけに出会うのだが、互いに世界が天地逆転していることに気付く。

本作はSFファンタジーのオリジナル作品で、かなり以前に視聴した映画でしたがとても記憶に残る作品でした。

  今改めて調べてみると、本作は次の受賞歴もあるようです。(引用元省略)
第17回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞受賞
年スコットランド・ラブズ・アニメ 観客賞及び審査員賞受賞

本作の特徴


  最近改めて視聴して、本作全体に仕掛けられた驚きに感じたことで思いついたものは「上下絵」でした。
「上下絵」とは、上の図(下手ですいません)のように、上下(天地)を逆にすると別の絵が現れるトリックアートの1種です。
(ただ、本作を上下逆にして視聴したらよいとゆうことでもありません。)

  あまりネタバレにならないよう苦しい説明になっているのです。少し違うかもですね。

ストーリーはシンプルなのですが、特に映画のように時間が限られている作品は込み入いった複雑なストーリーが難しいこともあるのかもです。

  なお、ほぼ同時期に公開された洋画「Upside Down」(邦題:「アップサイドダウン 重力の恋人」)は主要な設定が「サカサマのパテマ」に驚くほど似ています。
両方とも面白かったのですが「サカサマのパテマ」の方が深みのある作品のような気がします。

パテマとエイジの冒険
  一番思ったことは、パテマとエイジが特別ではない普通の少年少女である点が良かった気がします。あまり設定に不要な色がついていないところなど。(とはいえ普通の少年少女が主人公である冒険ファンタジー作品は定番であるのかもです)

そして、二人とも冒険心が行動の原理になっているところが好感を持てました。

  それとパテマとエイジのキャラクターにおいて、重力の逆転している設定が効果的に反映されているように思いました。

パテマにとっての落下はエイジの上昇となり、同じく片方の「錘(おもり)」はもう片方の「浮き」になるとゆう設定が最大限生かされていることです。

パテマとエイジは特別な能力を持ってはいないのですが、二人が手をつなぐことにより、通常ではない高さでジャンプできたり、ゆるやかに落下したり、飛翔することも可能であること。

それで、本作ではこの設定の成り行き上、とにかく二人は離れないように手をつないだり、互いに抱きしめるシーンが多く、そこが微笑ましいとゆうか、可愛らしい感じがしました。
  なんとゆうか、他の似たようなボイズミーツガールの作品と比べて、二人の仲がいいような印象がありました。

支配者の妄念
  エイジの住むアイガは抑圧的な社会に対して、パテマの住む地下都市は自由主義的な社会であることの対比が下地にあります。それでいて、面白いのは、特に2者は争っているわけではなく、基本は接していないとゆう点でした。

両者が互いに「不明な存在」であることが、本作の結末に良く結びついている気がしました。

冒頭、逆さまに描かれた人間のピクトグラムの表現やイザムラの「サカサマ人は罪人」や「空に落ちる」の言動の表現など本作の出だしとして印象強いものがありました。まあ、妄念に染まった支配者の姿といいますか。

体制を維持するために利用する観念が、やがて支配者の妄念になってゆく様とゆうか。

しかし、イザムラのゆうところの「サカサマ人」から見れば、アイガ人も相対的に「逆さまの人々」であることが、本作のキモといえる気がしました。

一部演出で思ったこと
  エイジがパテマを助ける理由として「父親との思い出を尊重した」旨のことを挙げていることは、少ししっくりこない感じがしました。

また、この他は重要なものではないのですが、一部、カメラワークで次のことを思いました。

たとえばエイジが地下都市を最初に訪れた場面では、エイジが逆さまに立っている場面は、逆に地下の住人を逆さまにして、エイジの始点によるカメラアングルにした方が良かったのではと思いました。

同様に、パテマが空に向かって落とされそうになった時、あるいは、塔の最上階に幽閉されたとき、同様にパテマの視線で背景を描いた場面を長回しにした方がパテマの恐怖心をよく表現できるのではと思いました。

不思議な感覚と美しい背景
  本作は上昇と下降の冒険譚で、縦方向の物語とゆう点で他にあまり類を見ない気がしました。
(メイドインアビスも縦方向の冒険ですが、それほど落下や上昇を繰り返したりしない)

子供のころ、草地に寝ころんだり、鉄棒で下から空を見上げると、空に向かって落ちてゆくような錯覚がありました。本作はそんな記憶を思い起こさせます。

パテマがエイジにかくまわれた倉庫のドアから外を覗くと、まさに、下方に空が広がる景色が望めるシーンなどのように。まあ、空中でぶら下がっている状態なんですよね。

その効果を十分に生かされているのはやはり背景画にあるように思いました。

地下都市や地上の建造物などの背景画においては、上下逆に人を配置しても、つまり天井に人を立たせたり、逆に上から見下ろすようなカメラアングルでも、矛盾がないように立体的な整合性に留意して描かれているように思いました。

また、そのような人工物に加え、空や大地、そしてその境界や日差しなど、端正に描かれており、そのことによって本作の物語に引き込みやすいのではと考えます。


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