(2)『天気の子』【おすすめアニメ感想】
アニメ作品『天気の子』についての感想を記します。おすすめです。
天気の子
(2019) 原作・脚本・監督:新海誠、製作:市川南・川口典孝、森嶋 帆高(もりしま ほだか):醍醐虎汰朗、天野 陽菜(あまの ひな):森七菜、須賀 圭介(すが けいすけ):小栗旬
映画『天気の子』公式サイト
https://tenkinoko.com/
新海誠の初期作品について
わたしは『ほしのこえ』、『秒速5センチメートル』、『雲のむこう、約束の場所』も視たことがあるのですが、どちらかといえばあまり好まない作品でした。
これらの作品の主人公(少年)は、それほど行動せず、自発的ではなく、傍観しているか、脇に徹します。対してヒロイン(少女)は能力があったり、活発であったりして、そして行動します。自立した少女を少年が傍観しているとゆう絵図です。
「少年からヒロインに対する淡い思い」だけが作品のなかで唯一存在感を示すのですが、上記のように少年主人公に魅力を感じることができないし、共感できないのです。
それ故、少年の切々とした一人語りの進行や美しいBGM・背景画像が逆にしらじらしい気もして、あまり楽しめるものではなかったのです。
『君の名は』はストーリーも練り込まれているし、初期作品と比較してより一般視聴者に広く好まれる作りになっていると思いました。前述の作品に比べれば、少年主人公(瀧君)はそれなりに行動しているようにみえます。
しかし、やはりヒロイン(三葉)の方が活発的であり、潜在的には能力を持ち、周囲の人物と友好な関係を築いているようにみえます。
ラストのクライマックスシーンでまさに隕石から街を救うために走っているのも三葉でした。
『天気の子』について
そこでゆうと、これまでの新海誠の作品では『天気の子』は一番良かったと思います。
まず、画面がどれをとっても美しいこと。特に陽菜たちが天空(空にある異世界?)にいる場面や天候や雲の表現など、映画的なエンターテイメントの度合いは高いものと思いましたし、素朴に視聴が楽しい(その点は『君の名は』も同様ですが)。
『君の名は』ではよりポピュラーな作品にするため、製作側の考えが影響しているようにみえましたが、『天気の子』ではどちらかといえば新海誠の思想がより強く反映されているように思いました。
しかし、一方で初期作品にみられる「一人語り」のような青臭い感性からは数段進化して、広範囲の視聴者にも楽しめる作品になっているとも思いました。
『天気の子』のラストシーンでは、ヒロイン(陽菜)ではなく、少年主人公(帆高)が走っている点だけでも大きな違いがあるように思います。
晴天を販売するビジネス
本作前半では、帆高たち少年少女が「晴天を販売する」ビジネスを立ち上げ、実行するまでが描かれており、この部分は視ていて面白く、本作の主題に当たる部分であるように思えました。
陽菜たちのビジネスが最高潮に達し、曇天が切り開かれて陽光が差し込み、空が輝くシーンは当作者の作画や映像の真骨頂といえます。
また、帆高が陽菜のアパートを訪れ食事をするシーンはそれなりに細かい演出がなされて丁寧に作られていると思いました(作者らしいといえるかもです)。
なお、前作『君の名は』の登場人物たち、成人後の滝君や三葉が特別出演している(ようにみえる)のも面白いです。
魅力あふれる陽菜
ビルの上において、陽菜が晴天を呼び込む能力を帆高に示し、「晴れるよ」と告げるシーンは陽菜の魅力の象徴のように思います。(たぶん元は母子家庭なのだと思われる)母親を亡くし、姉弟だけで生活していくところなど、つらい背景があるにも関わらず、「こんなに大変」「不幸だ」とする押しつけがましい演出が一切ないことが、陽菜たち登場人物やこの物語について好感のもてるものにしていると思いました。
「実は年下だった」とする設定は、陽菜が年齢を詐称して働くためとする理由のみならず、陽菜と帆高の関係性をコミカルにし、そして、終盤、それは本当は悲しい出来事としてストーリーに盛り込まれる点で秀逸と思いました。
「俺が一番年上じゃないか」(帆高)
本作ではそれでなくとも陽菜たちの境遇が伝わってくるのです。
だからこそ、後半、「陽菜にまた会いたい」とする帆高の心情に強く共感されるのではないかなと思いました。
あなたが戻ってくるなら
「青空よりも俺は陽菜がいい! 天気なんてくるったままでいいんだ!」
ラストクライマックスシーンで穂高が陽菜に対して告げる言葉です。そして「自分のために祈れ」と。
わたしは、上記の言葉が本作の結論であると思いました。前述の環境問題に関する批判者からすれば、けしからんことかもしれませんな。これは、ただ一人の少女を贄(にえ)にして、日差し溢れる日常を大多数の者が得られる世界を選ぶべきかの選択問題です。
わたしは、もし、この物語で晴天を取り戻した世界が選ばれるとする結末であったとしたならば、この作品は最低のものに終わっていただろうなと、思いました。
新海誠について
なんだか文句の方が多くなってしまいすみません(誰にあやまっているのだろう?)。
わたしは、新海誠監督は映像・動画のクオリティの高い点や、すべての作品がオリジナルであること(つまり、既存の原作に頼らないこと)、作品を作り上げる力量(量的・時間的)などですばらしい作家と思っています。
なにより、破壊や殺○のあるアニメ動画が人気作品となる場合が多いなかで、新海誠の作品中には殺伐としたシーンが一度もないことは、本当に評価されるべき作家さんと考えています。
などゆうことを抜きにしても、作品に『新海誠』とゆう名詞が必ず付属して視聴される点では稀有な作家さんであることには間違いないのです。
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