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(4)『灰羽連盟』【おすすめアニメ感想】

おはようございます。noteは始めたばかりで、不手際ありましたならどうぞご容赦ください。本誌に来訪いただいた方、ありがとうございます!
アニメ作品『灰羽連盟』についての感想を記します。

灰羽連盟

(2002) 原作・脚本:安倍吉俊、監督:ところともかず、キャラクターデザイン:高田晃、音楽:大谷幸、アニメーション制作:RADIX、製作:光輪密造工房/フジテレビ、(声)ラッカ:広橋涼、レキ:野田順子、クウ:矢島晶子、カナ:宮島依里、ヒカリ:折笠富美子、ネム:村井かずさ、クラモリ:久川綾、話師:大木民夫

灰羽連盟 ホームページ(公式)https://www.nbcuni.co.jp/rondorobe/anime/haibane/


プレビュー
  少女ラッカは空から落ちてゆく。しかし、彼女はどこか安らいでいる。彼女を安ずるように一羽のカラスが寄り添う。そんな夢から目覚めると、彼女は巨大な繭≪まゆ≫の中にいて、まさに灰羽≪はいばね≫と呼ばれる者として誕生するところであった。
  一方、オールドホーム(灰羽たちの住居)において、年長組の灰羽レキはラッカの繭を発見する。やがて灰羽(少女)たちの前で、ラッカは少女の姿(着衣)のまま新生の灰羽として誕生する。かくして、ラッカは灰羽としての生活を始める。

灰羽連盟について
『灰羽連盟』は本当にすばらしい最高レベルの作品です。

  本作は『灰羽』と呼ばれる少女たちの穏やかで、少し不思議な日々の暮らしを淡々と描いた物語です。基本は主人公のラッカとレキを中心としたそれぞれの灰羽たちのエピソードで進行します。
白や黒でもなく「灰羽」と呼ぶところが意味深です(絵的には白い羽)。

  『灰羽』は頭上に光輪、そして背に翼を携え、外観は天使の姿そのものです。この2点以外はごく普通の少年少女として描かれ、特に天使として設定されてはいません。

  街の一般住人は灰羽についてはよく理解しているものの、特に崇めたりせず、あるいは忌避することもなく、単に「灰羽と呼ばれる」だけのただの少年少女として受け入れている。
  彼らの街は田園や森林を含めて巨大で広大な外壁に囲まれており、灰羽たちや一般の住人も外界を知らないのです。
また、彼女ら灰羽は、ある日、ひっそりと森の中で消えてゆきます。

  「灰羽」とは何者なのか、何故街は巨大な塀により閉じ込められているのか、彼らはどこに消えるのか、「灰羽連盟」とは何であるのか、この不思議な設定がまず興味ひかれます。

本作アニメーションの特徴
  本作は全体的に彩度を抑えた中間色のパステルカラーですべて彩色されています。これらの色調は穏やかなストーリーによく馴染んでいます。
そして、特に不穏なシーンや森の中、曇天の下などの場面では、やや薄暗く、暗色の色合いが混ぜられています。

  安倍吉俊の画集「祝祭の街:暗」(※注釈1)を見ますと、彩度が抑えられて、薄暗さを全体に帯びた傾向がみられるので、『灰羽連盟』には作家さんの個性が反映されているものと思いました。

美術と音楽について
  また、本作では特に美術と音楽がすばらしいです。
(ネットには本作の音楽(BGMなど)が挙げられているので、是非とも聴いていただきたい!)。
  本ストーリーに対して、南ヨーロッパ風の背景やBGMなどは統一感があり、動画の質を高めていると思いました。わたしは癒し系の動画としても楽しんでいるふしもあります。

  背景画(美術)では、たとえば、レキ愛用のオイルライターや室内の窓枠、テーブル上に飾られた鉢植え、彼女らの衣類、調度品や家具、または用具類など、単なる背景の記号的な素材としてではなく、画面の端から端までの一つ一つが個々にデザインされているのです。それらの器物の一つ一つが実際にそこに暮らす灰羽たち使用しているであろうことを想起させるものになっています。(実際に実物があるものもあるのだと思います)。

  また、街やオールドホームのある田園などの背景について、たとえば土地の起伏や曲がりくねった道、囲いのために打ち付けられた木製の杭など、やはり実物のような存在感があります。まるで、実際に灰羽たちの街やオールドホームを訪れてロケーションしてきたかのようです。

  そして、背景と登場人物(灰羽たち)が完全に画面上で一体化しており、場面によっては、まるでヨーロッパ映画のような重厚さがあり、特に灰羽の外観は「天使」の姿であるためか、時には宗教画のような美しさがあります。

灰羽たちの暮らし
  彼女たちはすべてリユース・古いもの(たとえば古着など)しか使えない。また、金銭は直接扱えないが、「灰羽手帳」に購入した品目を記入して手渡す、など、知らない国を旅してその土地の風習をみているような気にさせます。
  街の外(壁外)からやって来る交易の集団(トーガ)、「鈴の実」とゆう民芸品、話師の使う手話、森や壁にまつわる禁忌、言葉を発してならない場面の決まりなど、様々な要素がこの物語を彩ります。
  灰羽連盟の者たちに対して誰も声を発してはいけないため、灰羽たちは翼に鈴を取り付けてもらって、それを鳴らして応答しますが、そのしぐさには可愛いさがあります。

個人的に好きなエピソード
  勝手にランクを着けると、1位:レキの「罪付き」の一連のエピソード、2位:ラッカの「罪付き」の一連のエピソード、3位:ネムの「世界の始まり」の順で好きなのだが、その他のエピソードも良いです。

  ネムが中心となるエピソードでは、ネムとラッカが同じ図書館に勤める産休の職員へ、自作の創作童話「世界の始まり」の手作りの本をプレゼントするのですが、ラストシーンに作中劇として「世界の始まり」が朗読されます。それは、子供っぽい絵が妙に神々しく感動してしまうのです。

「罪付き」について
  本作後半はラッカやレキの「罪付き」の話が中心となってゆきます。
ラッカの「罪付き」のエピソードは「罪を知る者に罪はなし」とする話師の言葉が象徴的で、わたしにとっては難解でした。
  「罪付き」とは何か、彼女らは何かの罪を背負っているのか、様々な要素によって暗示されますが(繭の夢、鳥(カラス)、羽の黒い染み、「本当の名前」など)、
  明瞭な解答は作中示されません。でも、そこがとても面白い部分ではあります。

*とはいえ、本作の考察がネットの所々にあるので、これをアップ後はそれをみてみようかと思います。

死のイメージ
  本作を何回か視聴すると、作全体を通して、うっすらとした死のイメージが一層重なっているようにみえます。しかし、その死のイメージには、どこかほっとできるような、安らぎのあるような印象もありました。

「前世」や「転生」、「自死」あるいは「幼くして死す者」などのワードが自然と連想されるのですが、「これはこうだ」とする解説や解答はどうにも思いつかないし、思いついたとたん陳腐なものになるのは否めないのです。
故に、あえて、あまり解答そのものを望まず、本作を視たまま楽しむとゆうのがわたしのスタンスです。

(注釈)
※1. 『祝祭の街 暗 -Darkness- 安倍吉俊デビュー20周年記念自選画集』安倍 吉俊(著) (2015) 株式会社星海社(刊)


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