「朝日新聞政治部」鮫島浩

 原発事故時、福島第一原発から東電職員が所長命令に反して退避したことを報じたいわゆる「吉田調書」問題の責任を問われ、左遷された末に辞めた元朝日新聞記者による回顧録。


 確かに2014年あたりは朝日新聞あたりがゴタゴタしてるな〜とは思っていたし、世間ではそれなりに騒いでいたと思うけど、当時の自分はほとんど関心なかった笑。「え!?慰安婦報道って嘘なの!?やばいじゃん。今までのはなんだったの?」ぐらいは思った記憶。ちなみに、これは「吉田証言」問題らしく、筆者がお辞めになるきっかけとなった「吉田調書」問題とは別らしい…そりゃぼーっと生きてたら訳分からんとなるわ笑


 さらに、「池上コラム」問題というのと3つ合わせて、2014年以降の朝日新聞の凋落のきっかけと言われているらしい。池上彰さんが朝日新聞のコラムで吉田証言にかかわる過去の記事の取消しは遅すぎたと批判するコラムを載せようとしたら、朝日新聞社長が激怒してコラム掲載拒否した問題。これは朝日社内からも相当の批判があったらしく、確かに自分の知っている記者もこのときをきっかけに会社に対する不信感が芽生えたとかおっしゃってたな〜


 いずれにしろ、この回顧録は一連の騒動(読むまでほとんど知らなかったくせに、「一連の」とか言っちゃいますが汗)について良い勉強&復習になる。さすが記者さんだけあって、文章も読みやすく、表題の重々しさは良い意味で裏切られてサクサク読めた。ただ、当事者のひとりの視点から書いてあるだけなので、騒動について、本書だけをもとに評価を下すのは拙速だろうし、筆者の望むところでもないでしょう。


 本書は、筆者が「吉田調書」問題で転落していくのが後半の白眉なら、前半は書面どおり政治部記者が何を考え、どんな仕事をしているのか知れるのが面白い。
 政局は政治部、政策は経済部(だから政局報道が一定量存在し続けるのね〜)という区分け。
 ある時期まで朝日新聞社長は、政治部出身者と経済部のたすきがけだった(社内の力関係が分かるな〜)。
 政治部記者は、担当の政治家に食い込む働き方をするから、時に政治家の擁護者になってしまったり、あるいは政治家の情報戦に利用されてしまうこと。

 その他、政治部記者時代に筆者が見た政治家の横顔も書いてある(竹中平蔵、菅直人、古賀誠…)けど、悪口と評価が上手くまざった、読みやすい文章でした笑

 新聞記者とかかっこいいなー!と思った時期もあったけど、自分の実名さらして記事書くのはかなり抵抗あるかも。筆者の鮫島さんも、記事を書くことは少なからず自身の内面の吐露だと本書でおっしゃってるしね。恥ずかしくてそんなことできないわ😅

 それと、こういう重大な問題が起こると、「報道は人の命にかかわる仕事」というのがよく分かるわ。昔「ニュースキャスター」ってドラマで主演の天海祐希が劇中でそういうセリフを言っていて、その時は「医者とかと違うじゃん」と思ってました意味不明だったけど今なら分かる気がする。

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