【チラズアート】『自撮』ストーリー解説と考察 キリスト教との関係とは?
チラズアート作品史上最も難解で意味不明な作品だったのではないでしょうか
今作は自撮というタイトルや日本家屋が舞台となっていることからジャパニーズホラーになっているかと思いきや、至る所にキリスト教の要素が散りばめられており、キリスト教の知識が無いとストーリーを理解することはできないという非常に不親切なゲームとなっています
こうやって記事を書いている私自身キリスト教について特別深い知識があるわけでもなく、このゲームをやってからネットで調べたキリスト教の情報をもとに考察しているに過ぎないのですが、ご容赦いただけると幸いです
※ゲームリリース当初のゲーム内スクショを載せているので、字幕テキストがバグってます
ビデオとキリスト教との繋がり
ビデオの後半で地下の様子が映し出されますがそこにはキリストの絵とマリア像などが置かれており、このビデオで起こっていた出来事とキリストが深く関わりあっていることが分かります。
ビデオに収められていた場面とキリスト教とのつながりを見ていきます
ビデオ1と2
一番最初の2人の遺体を前に泣いている老夫婦は、ビデオ2で台所に行ったときにいる老夫婦と同じなのでこれは祖父母で、祖父に関しては必死に十字架を持って祈っている様子が確認できます
また2人の遺体については、壁に立てかけてある遺影が若い男女で、この後のビデオに両親が一切出てこないので両親が亡くなったのだろうと推測できます
そしてここでキリスト教との繋がりを考えると、このビデオに映っている場面は聖書に書かれているキリストの復活と、使徒であるペテロが復活したキリストと再会する場面をなぞらえている可能性が非常に高いと感じました
以下抜粋です
雀を埋める際隣に置かれている大きい石は墓石を表していて、キリスト復活の「空の墓」を暗示しているのかもしれません
そう考えると墓を確認すると背後に何者かが横切るというのはキリストの復活を表しています
またペトロという名前はイエスがつけたあだ名で、石や岩という意味があります
復活したキリストとペトロが初めて会うシーンを抜粋しました
ビデオ2で撮影者は鯉を持ってくるよう指示され、庭の池で鯉を釣ります
つまりこのビデオにおいて
撮影者=使徒のペテロ、地下から指示をするもの=イエスキリストということになります
ビデオ2視聴後の主人公
ビデオ2を見た後物音がする奥の部屋の押し入れを開けると新たなビデオと咀嚼音を流し続けるラジカセを発見します。
そしてよく見るとラジカセの隣に何者かのつま先が見えます
この男が履いているスリッパが、後のシーンで主人公を追いかける赤い服を着た男の履いているスリッパと一致していたので、あの殺人鬼が押し入れに隠れているということになります
ビデオ3
ふすまの隙間から祖母が亡くなっているのを目撃する撮影者。横のふすまから覗くとカラスが祖母の遺体を突いており、しばらくして祖父が駆け寄りカラスを払いのけます
遺体の場所に戻ると祖父が十字架を持って祈っています
ビデオ3視聴後の主人公
家の中に散在している人形の頭を取っていって、最後に2階の鍵を入手します
この鍵ですが聖書にはイエスがペトロに天の国の鍵を授ける場面があり、この2階の鍵も考えすぎかもしれませんがこの天の国の鍵を表しているのかもしれません
ビデオ4
ビデオ4は撮影者が梯子を上って部屋に帰るシーンから始まりますが、撮影者は地下に出入りするほど地下から指示してくる何者かとかなり親密になってきていることが窺えます
風呂で死んでいるじいちゃんはなぜかサングラスをかけています
なぜここだけサングラスをかけてるのかは結構考えたのですが一切見当もつきませんでした
ビデオ4視聴後の主人公
風呂にビデオを撮りに行き部屋に戻るとビデオプレーヤーが無くなっており、地下へもぐるため奥の部屋へ向かいます
地下にはイエスの肖像画とマリア像などが置かれていましたがしばらくするとそれらすべてにモザイクがかけられます
ビデオ5
撮影者は地下で家の十字架を逆さにするよう命じられます
この逆さ十字架はペトロの処刑が起源となっています
ビデオ5視聴後の主人公
主人公は梯子を上り、地面へ脱出しようとしますが見知らぬ男が追いかけてきます
車でトンネルの中に逃げますが捕まってしまい、風呂場で男に殺され、ごみ袋に遺体を詰め込まれ、地下に放り込まれました
地下に遺体を放り込むときも地下から聞こえてくる指示に従っていることが分かるので、あのビデオを撮っていた撮影者が大人になり、家に来た主人公を殺したということが分かります
エンドクレジット後
エンドクレジット後、今までの映像全て映像会社の社員たちが見ていたビデオ映像だったことが明かされます。
上司はフェイク映像だと軽く捉えますが、部下がトイレのため部屋を出るとしばらくして外から物音がし、外に出ると部下が床に倒れており、近づいたところロッカーから主人公を殺した男が飛び出してきます
この家で何が起こっていたのか
悪魔
ここまでキリストとペトロの関係になぞらえて考察してきましたが先ほどの逆さ十字架は悪魔崇拝の象徴でもあるのでこの一家は悪魔に囚われており、殺人鬼は悪魔崇拝者である可能性が高いです(後ほど悪魔に囚われていたと断言できる証拠も紹介します)
悪魔の存在を仮定すると以下のような説明ができます
キリストの絵やマリア像にモザイクがかけられていたのは、このビデオを編集したあの殺人鬼がキリストを否定する悪魔崇拝者であったことを示している
ビデオ5を浴槽で入手した後、地下へもぐるため奥の部屋へ向かう途中、いくつかリンゴが落ちていますが、りんごはアダムとイブのお話で有名な禁断の果実で、アダムとイブにリンゴを食べるよう仕向けたのは悪魔なので、このりんごは悪魔崇拝者である殺人鬼が主人公をリンゴで地下へ誘導していることを表している
殺人鬼に指示をしている男について
殺人鬼の幼少期から指示を送り続ける人物の正体は明かされることなくゲームは終わってしまうのですがこの男の正体について3つほど考察してみました
①悪魔説
十字架を逆さにしていくと家中に複数羽カラスが現れますが、悪魔の中にはカラスの姿をしたマルファスという悪魔がいます
人と話すときはしゃがれた声で話すという特徴も一致しています
作中雀の死骸が至るところに登場したと思いますが、雀は悪魔を表しているカラスの対になる存在で、雀を殺す=キリストを否定することを表しています
また主人公がビデオ2を取りに行くために外に出ると、あの倉庫から何者かがこちらを覗いています
明らかに人間ではないので少年を地下から指示していたのは悪魔だったと考えられます
家族の死についてですが、ビデオ1で両親が亡くなった時には雀の死骸がある部屋の壁に十字架がかかっていないのに、ビデオ2ではかかっていたので、祖父は両親が亡くなってから十字架を家のあらゆるところにかけていたことが分かります。
祖父が彼らの遺体を前に十字架を掲げて必死に祈っていたこと、彼らの死後十字架を家の至る所に掛けていたことから、祖父は彼らが悪魔のせいで亡くなったことに気づいていて、これ以上家族が悪魔に脅かされないようにしていた可能性が高いです
ビデオ1で少年の背後を走り去ったのは両親に取り憑いていた悪魔で、両親が死んだことにより両親の肉体から離脱して地下に住み着いたということでしょうか
ビデオ3で祖母の遺体をカラスがつついていましたが、あのカラスもこのマルファスのことを表していて、祖母の死もマルファスが関与していたのでしょう
その後祖父が十字架を持って遺体の元へ駆けつけ、カラスを追い払っていたのも、悪魔をこれ以上家族に関わらせないように追い払おうとしていたということだと思います
マルファスの目的としては、少年に動物の死骸や家族の身体のパーツを持ってくるよう指示し、十字架を逆さにさせることで少年を完全な悪魔崇拝者に変貌させ、継続的に人間の遺体を生贄として持ってこさせたかった
もしくはキリストを信仰しているこの家族を破滅させることで、悪魔の優位性を示すのが目的だったとも考えられます
②父親説
先程祖父は少年の両親の死が悪魔によるものだと気づいていたと書きましたが、そもそも人が死んですぐに、その人が悪魔のせいで死んだと確信出来るのは不自然なように思いますし、あまりにも特に祖父の祈り方が必死過ぎるような感じがしました
なので少年の両親は元々悪魔崇拝者で、祖父たちも生前彼らを危険視しており、彼らの遺体を前に十字架を持って祈ることで、悪魔崇拝に冒された魂を浄化させようとしていたのではないかという考察です
このように考えるとビデオ1で雀を埋葬した後背後を何者かが走り去っていったのは、キリストの復活のようにあの場面で死んだ父親が復活し、使徒であるペテロにキリストが指示を送っていたように、息子に対して地下から指示を送りだしたとも考えられます。
なぜ父親がそんなことをするのかということなのですが、映画『ヘレディタリー』のように父親が息子を操って悪魔を召喚させ息子に憑依させようとしていたと考えてみました
祖母の髪の毛や祖父の爪を持ってくるよう指示していたのも悪魔を召喚させるためで、最後家の十字架を逆さにさせることでカラスの悪魔マルファスを召喚することに成功した
鯉の首だけを切り落とさせたりするのも映画『ヘレディタリー』と共通しているので、このゲームの作者もこの映画を参考にしている可能性は非常に高いです
ここからは完全にただの妄想の話になるのですが、この父親が悪魔崇拝者であったと仮定すると以下のようになります
元々父親は悪魔崇拝者で何らかの異常行動をしており、祖父母はそれに気づいていた(雀を押し入れで殺していたのは少年ではなく父親だった?)
耐えかねた祖父はキリスト教に傾倒していく
祖父母は悪魔崇拝者である主人公の両親を殺害してしまう(両親の遺影にモザイクがかかっていたのは悪魔崇拝者であったことの暗示?)
しかし父親はキリストのように復活して、祖父母を殺害し、息子にも悪魔を憑依させる
このように仮定すると、祖父が少年の両親が亡くなってから十字架を家のあらゆるところにかけていたというのは、悪魔崇拝者の家族を殺してしまったことで、その仕返しとして彼らの霊、あるいは悪魔が自分たちを攻撃してくるのを恐れていて、十字架を掛けることで家を守ろうとしていたということになります
またビデオ5では、地下のキリストの絵の前に二つの棺桶が置かれています
これが少年の両親の遺体だと仮定すると、殺してしまった両親からの仕返しを恐れた祖父が、キリストの絵の前や十字架の隣に遺体を置くことで、彼らからの攻撃を防ごうとしていたということなのではないでしょうか
③殺人鬼の妄想説
全て殺人鬼の妄想で、幼少期の殺人鬼がただ家族を惨殺していただけとも考えられます
ただそうすると、一連のビデオテープの映像をどうやってこの殺人鬼は作ったのかという疑問は残ります
殺人鬼の風貌について
プレイされた方の8割くらいは殺人鬼が麻原彰晃そっくりなことに気づいたのではないかと思いますが、これは恐らく製作者も意識していると思います
麻原彰晃もこのゲームの殺人鬼も宗教を利用して殺人を繰り返してます。
また両者ともイエスになり替わろうとしていてイエスのように髭を蓄えていった結果あのような見た目になってしまったということだと思います
実績解除の謎の数字
ゲームを進めていくと右下に実績解除をしたお知らせが出ますが、それら全て謎の数字の羅列となっています
この数字実は2進数バイナリ文字列と呼ばれるもので、これを下のサイトで文字変換すると悪魔という意味の英単語「サタン」Satanになり、この一家が悪魔に囚われていたのはこれで確定します
キリストとペトロ
キリストとペトロはキリストが処刑される前に出会っています
漁師であったペトロが漁をしているところにキリストが現れ、キリストが指示した通りに漁をすると大量に捕獲できたことをきっかけにペトロはキリストについていくようになったというお話が聖書に書かれていて、これが二人の最初の出会いであったとされています。
このイエスの「人間を捕るようになる」というのは本当に人間を捕まえるわけではなく、キリストの教えを後世の人々に伝道していくことの比喩として使われているのですが、このゲームの殺人鬼は文字通り人間を捕るようになりました
まとめると少年が謎の地下からの声に操られて悪魔崇拝者に堕ちていく過程をキリストとペトロとの関係性になぞらえて表現したかったのではというのが私の考察です
チラズアートのスタッフについて
今年一年でチラズアートは5個ゲームを発売していて、明らかに制作スピードが上がっています
Wikipediaによると元々兄弟二人で作っていたところに今年から3人目のスタッフが入って来たらしいです
『夜間警備』はこの新しく加入したスタッフによって作られたという話をどこかで見たのですが、今作もビデオテープを見て過去に起こった出来事を追っていくという表現手法が共通しており、どちらもセリフや説明がほとんどなく、パワハラ上司と部下が登場することから恐らく今作『自撮』も『夜間警備』と同じ新人が作っているのではないかと思われます
元々チラズアートはかなり難解な作品が多かったですがこの二作品は突出して難解な作品になっており、この新人さんはかなり尖ったゲームつくりをされる方なんだなと思いました。これからのチラズアート作品も楽しみです
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