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失恋してゲストハウスに泊まった話


今年の夏、好きな人に振られた。

昨年末にマッチングアプリで会った人で、6回ほど遊び、半年後の6月に電話で告白したが、

「まだお互いのことよく知らないから、ごめん。
でも、友達としては全然良いから、私は今後も会うので良いけど、どうしたい?」

と言われる。

悩んだ末、
「振り向いてもらうために努力するから、見てほしい。
 でも今後恋愛対象になることはないな、と思ったら辛いから連絡先は消して、2度と会わないようにしよう」

と話し合って、電話は終了。

その後2回ほど遊び、しばらくしてからLINEで、

「恋愛対象として好きになることはないと思う、ごめんね」

と言われた。

毎晩自分を責め続けた。
仕事中に涙が出る日も少なくなかった。


・・・


たまたま3連休の日が来た。

1人で家にいると正気でいられなかったため、旅行に行こうと決めた。
とりあえず新幹線に乗り、京都で降りた。
頭が働かないまま、予約した宿に向かう。

値段が安く、綺麗そうだったため、「ゲストハウス糸屋」に泊まる。

チェックインを済ませたら、とにかく酔いたい気分だったため、居酒屋を探す。
すると、宿から徒歩10分くらいの、良さげな店を発見。

好きだった人との思い出を振り返りながらビールを飲んでいると、気付いたらビールジョッキ3杯と日本酒を飲み干していた。

「馳走食堂 おおの」
おいしい

仕事明けなのもあり、かなり酔ってしまった。

今までほろ酔いくらいまでしか飲んだことがなく、今回が初めて「あ、酔った」と感じるほど飲んだ。

3700円くらい(結構飲んだ)を支払い、店を出る。
帰る途中、人生で初めて吐き気を覚える。

何とか宿の前に着いたが、もう限界だ。宿の前のベンチに座り込む。

その時同い年くらいの男性が宿から出てきて
「ベンチ片しても良いですか?」
と聞いてきた。

様子がおかしいのに気付いたのか、「あれ、大丈夫ですか?」と心配してくれた。

かなり酔ってる旨を伝えると、水を持ってきてくれた。
水を飲みながら、東京から1人で来たこと、失恋が辛くて飲みすぎたことなどを話した。

 初対面なのに彼の人柄のおかげか、それとも今までの思いが募ったからか、言葉が溢れ出てきた。

すると彼は、
「近くのコンビニに薬を買いに行きましょう」
と言って、一緒にコンビニへ向かった。

これに頼る日が来るとは…

薬を飲んで、落ち着いた。
そこから宿に戻り、彼と話をした。

彼は韓国人で、バイトとしてゲストハウスで働いているらしかった。

彼は「女は他の女で忘れるしかないです」
と繰り返し言ってくれた。
片言で言ってるのが面白くて、少し気が楽になった。


酔いも治ってきて、話が盛り上がった。

なぜ日本に来たのかという定番の話から、韓国で兵役はどんな様子かなどまで話してくれた。

興味深くて覚えてるのは、彼の日本への興味のきっかけが、「庭」だったことだ。

「日本の庭には日本人の思想が詰まっています。韓国や西洋のものとは違います。」

これは龍雲寺

日本の庭、特にお寺の庭は、仏教の思想などを反映していて、それが興味深いと力説してくれた。

庭の話を真剣に話す彼を見て、失恋のことを考えないひと時を過ごせた。



今まで安いという理由でゲストハウスを選んでいたが、このような出会いがあるのがゲストハウスの魅力だと気付いた。

彼は10月にはバイトを辞めるらしく、もう会うことはないだろう。

しかし、京都に忘れることのない場所が1つできた。

ベンチは無いけど、彼と出会った場所
酔った勢いで撮ったやつ
ありがとう。

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