本屋大賞は成瀬に 2024年問題 書店の未来
成瀬が天下を取りました。元来は天邪鬼なんで本屋大賞本は実際にはあまり読んでません。ノミネート前にたまたま作品の舞台が最近よく行く大津市かつ登場人物が子供の年齢に近く、時代がコロナ禍設定だと知り、面白かったら教えてやろうと思って手にしました。結局うちの子供は未だに全く関心を示さず。そりゃ親なんかに薦められた本なんて素直に読むわけもありません。この作品に出会った奇跡がもったいないのでnoteで紹介させて頂いた次第です。
はっきり言ってただただ楽しいだけで、結構シリアスになりがちな大賞作や直木賞、芥川賞路線では全くありません。唯一明るすぎて大賞逃すかもと思ってたくらいレアな作品。あえて定義するなら恋愛要素薄めのカラッとした青春小説です。政治問題や物価上昇など日々いろいろと考えさせられることもありますが、一旦忘れて成瀬の変な生き方に笑ったら明日もまた頑張れる、そんな物語です。
それにしても単行本デビュー作で大賞って凄いと思ってしまいますが、3月のビブリオバトルでの作者・宮島未奈氏の講演などを聞いているとデビューまでが結構挫折しそうになったこともあったようです。ようやく花開いたと思ったらとんでもない大輪になったみたいな感じでしょうか。
ノミネート前から既に評判にはなっていたようですが、今回の受賞でおそらく今年のベストセラーになると思います。物語の中では来年成瀬は敦賀にやってくるので何かコラボしてほしいところです。ただ観光課に気づいている人はおそらくいないでしょう。映画化やアニメ化もあると思います。小説では珍しく成瀬は表紙や挿絵のイメージが定着しているのでアニメにはしやすいかもしれません。※既に漫画化は始動してました。
今年の4月から変わったことといえば2024年問題です。働き方改革法案によりトラックドライバーの労働時間に上限が課されることになりました。そのことによってトラックの移動距離の限界や担い手不足が懸念されます。
それが運賃や配達日時にも影響し、どの業界も他人事ではない問題となっています。
弊社のレンタル商品でも運送、物流に関連する商品は多く取り扱いがございます。テーブルリフトやハンドパレット等少しでも物流の手間を軽減するお手伝いが出来ると幸いです。
先日運送会社様にコンテナを納入させて頂きました。荷物の保管場所の確保にご利用頂いております。タマムラでは海上コンテナの販売、レンタルも行っておりますのでお気軽にご相談ください。
本屋大賞の受賞の発表の前から大津市ではいろんな企画をしています。成瀬ゆかりの地を巡るスタンプラリー、膳所駅の巨大成瀬ディスプレイ、成瀬がバイトしている設定の平和堂では等身大パネルなど、アニメやドラマでもなく小説界隈でこれが成り立つところがこの作品の凄さです。おそらく全く関知していない人は漫画かアニメのキャラだと思っているはず。
とはいえ老若男女が読みやすい文章であるため、逆に意外と刺さらない人も多いだろうと思います。成瀬のキャラの強さやワードチョイスの上手さなど一度読み始めるとやめられない中毒性こそが大賞となった最大の理由だと思いますが、おそらく成瀬以外の特に毎話変わる一人称キャラの視点と言い回し、漫才で言えば大ボケの成瀬に対して次々出てくるツッコミ巧者たちの力こそが「成瀬は天下をとりにいく」の面白さの核と言えます。
たとえば以下の幼なじみ島﨑視点での文章
「わたしがサングラスをかけると成瀬はうれしそうに「みうらじゅんみたいだな」と言ったが、みうらじゅんが何者なのかわたしにはわからない。服装は無難なTシャツとデニムパンツで、成瀬の添え物であるよう心がけた。」
目立ちたくない島﨑と年齢不詳の知識をみせる成瀬との関係性をうまく表現しています。文脈なしでこの一文が心地いいと思えた人はおそらく全編通して面白いと思います。ただし逆だとただの軽い読み応えの少ない作品で終わるかもしれません。
他にも作者と待ち合わせをする設定のエッセイでの成瀬を「ストIIのベガを思わせる風格で、腕組みをして仁王立ちしている。」とか、分かりやすいところでは成瀬が「母親がコーンフレークらしきものの名前を忘れる漫才だ」に島﨑が「ほなミルクボーイやないか」など。成瀬を誕生させた作者こそが年齢や性別を超えた知識と感性の人なんだと思います。SNSなどでちょいちょい挟んでくるSASUKEの山田勝己愛もまた笑わせてきます。
コロナを理由に鬱屈とした生活を送るのではなく、人が想像出来ないような目標を立てて淡々とこなしていく成瀬にやる気をもらえる作品であることは全国の書店員が証明しています。
本屋大賞のニュースの中でちょっと悲しかったのが授賞式あとの新潮社の方の話。とても話が上手い方で自虐も交えつつ本屋大賞創立の経緯などを面白おかしくスピーチ。今年は過去最高の書店参加数だったが、辞退数も過去最高だったらしいです。
理由は書店経営をやめるため。2000年から2023年を比較すると全国にある書店は2万店舗から1万店舗へ半減しています。アマゾンや電子書籍、出版不況にそもそもの読書時間の減少。現物書籍を流通させる取次や書店には何一つ恩恵はなく、本屋大賞の企画も正直なところ焼け石に水といった状況。
今村翔吾氏が神保町に新型書店をオープンさせて世間の荒波と未だ戦っています。ご本人もおっしゃられていますが勝ち負けの問題ではなく書籍文化のバトンを次世代へ渡すためとのこと。負け戦なのは覚悟の上。
私の母方の祖父が小説好きで書店や図書館に足繫く通っていました。やんわりと憧れていた老後の世界はこのスピードだと便利と引き換えに全く異なる風景になりそうなのが少し寂しいところです。
追記 2024春ドラマで既に始まったものでは、やはり手堅い日曜劇場
「アンチヒーロー」がいいです。大河では常に正義漢の光秀だった長谷川博己の変わりっぷりが素晴らしいです。と見せかけての正義の人なんだと思いますが。あとは今日開始の「アンメット」が気になります。今年は読む時間も増やしたいので春はこの2作に賭けます。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?