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別世界では別職種だった件 ホンダ編 第9話

第9話 ジャマー
「ホンダおはよう」
「おはよう」
 今日も清々しいミレンの挨拶を聞いて、ホンダもできる限り爽やかに返事をした。朝の挨拶を気持ち良く出来ると、一日気分が良いものである。
「そういえばハンディルが、ホンダを待ってる感じだったわよ。何か頼み事があるみたい」
「そうなんだ、何だろう。ちょっと行ってみる」
そう言ってハンディルがいつもいる所長室に向かう。どうやら部屋の中にいるようだ。
「ホンダです」
「おー入っていいぞ」
 中から聞こえて来た言葉を聞いて、扉を開けて中に入る。すると中にはハンディルと一緒にリンドも椅子に座って待っている。
「ホンダおはよう」
 満面の笑顔でリンドは微笑んで、挨拶をする。それに軽く右手を挙げることで返事を返す。
「早速だが、話を始めてもいいかな」
 テーブルの上で両手を組んだ体勢でハンディルが話を始める。それに対して軽く頷く事で了承の意を表した。
「1ヶ月ほど出張に行って欲しいんだ」
 出張?この世界にも出張という概念があることに多少驚く。ただその疑問は大した事でもないので、軽くスルーすることにする。
「出張先はグリス連邦にあるエスパーギルドだ。そこのジャマー研究所で治験に協力して欲しい」
 ジャマー研究所。エスパーにとって天敵アイテムであるジャマーに対抗して、反ジャマー装置を開発している機関だ。ホンダにとってもジャマーは非常にやっかいなアイテムなので、協力する事はやぶさかではない。そう考えながらリンドを見つめると、リンドはこの出張には賛成のような雰囲気である。
「わかりました。ちょっと土地勘が良く分からないのですが、私に依頼したということはその点は大丈夫だと判断して受けようと思います」
 そう答えたので、リンドは軽く安心した表情を浮かべている。ハンディルも満足した様子で右手を出して来たので握手を交わした。
「それでは準備もあるので失礼します」
 そう言って部屋を出ると、リンドも後を付いてくる。そのまま、普段リンドが作業を行っている部屋へ移動し、椅子に腰掛けることにする。するとリンドがコーヒーを淹れて来てくれた。
「ホンダ。ありがとう仕事受けてくれて」
 コーヒーカップを目の前におきながらそのように声をかけられてたので、軽く頷くことで返事を返す。そもそもリンドがあの場所にいる時点でおそらく受けないといけない仕事だろうとは予想していたのだ。
「ところで、移動手段は」
 疑問に思っていることを尋ねると、目の前に地図を広げられる。
「移動はホンダのテレポートになるんだけど、直接グリス連邦に入ることは出来ないの。だから、連邦の外壁の外側にあるタカソ村のエスパーギルドに移動してからそこからは歩きとなります」
 ある程度移動手段は自分のテレポートだとは思っていたので、特にこの提案に文句があるわけではない。ただ、タカソ村から歩くのは面倒だなという考えが浮かぶ。
「了解。じゃあ取り敢えず明日移動することにして、今日は夜飲み会だからそこでみんなには話すことにしよう」
 そう言ってホンダは一旦鍛錬場へと足を運ぶ。そこでしばらく鍛錬を行った後、再度リンドの作業場に戻り、一緒にランチを食べに行くことにする。ランチから戻った後はホンダは特にすることがなかったので、リンドと別れ一旦家に戻る。そして夕方の時間になって、ギルドにリンドを迎えに行き、いつもの酒場へと向かった。そこにはすでにいつものメンバーが揃っており、すでにどんちゃんが始まっているようだ。
「おー本田遅かったな」
 店に入った瞬間に気づいたハラダが大声で叫ぶ声が聞こえる。それに対して軽く頭を下げた後、みんながいるいつもの席に向かう。
「遅くなりました。皆さんすでに出来上がっているようですね」
 こう言いながらリンドと並んで席に座り、一息つく。すると準備がしたあったかの如く、すぐに飲み物がやってきたのである。
「では本田も来たことだし改めてカンパーイ」
 かなり出来上がっているハラダの乾杯の音頭にクラタ、トミタ、メイ、サクヤも乾杯と叫び、ホンダとリンドのジョッキに自分のジョッキをぶつけ合った。この後はしばらく特に重要でもな話をしながらアルコールを消費し、しばらくしたタイミングでホンダが口を開く。
「実は報告がありまして」
 何やら真剣な表情を浮かべているので、全員でホンダに注目する。
「ちょっと出張に行くことになったんですよ。なのでしばらく留守にします」
 この言葉を聞いて、まずハラダが口をひらく。
「どこ行くのー?」
「グリス連邦に行ってきます」
 出張場所の質問に、簡潔に回答する。これを聞いて、次はトミタが質問する。
「どれくらいいないの?」
 借金返済のために一緒にこなす仕事を日々探しているトミタにとって、ホンダがいなくなるのはかなり致命的だ。
「すいません。しばらくかかると思います。その間は富田さん1人で頑張ってください」
 これを聞いてトミタは大きくため息をつき、メイから頭をよしよしされている。出張の話が終わった後はまた何でもない話題に戻り、飲みに飲んで食べに食べた後、今日の飲み会もお開きということになり、各自家時につくことになったのである。

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