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あの輝きを君がまた思い出せるように

be there 福岡公演day1


はじめに

 2023年2月18日。僕が願い続けていた夢はようやく叶った。be thereツアー福岡公演1日目。僕にとって人生初となるライブは、遠く離れた土地でのライブになった。あの日から約2週間。時がたった今でも、彼らの曲を聴けば魔法のような時間はすぐそこに思い出せる。それでも、人は忘れてしまう生き物だ。今だって全てを覚えている訳じゃあない。信じられないが、いつか思い出そうとしても思い出せなくなる日が来るかもしれない。そんな日の君のために、今日の君がここにその記憶を残しておく。

君がいることを君に伝えたい

 開演前から気持ちは落ち着かなかった。ツアートラックを見たときから込み上げてくる思いがあったし、会場に入り、自分の席へと着いたときには胸は高鳴っていた。そんなワクワクした気持ちの中、とうとう会場が暗くなった。そして、アカシアのイントロが流れ始める。
 その瞬間、僕は泣き始めた。号泣だった。頭での理解が追いつくより先に心が動いていた。まだメンバーは出てきていないのに泣いていた。音楽が流れて、ようやく自分がライブに来た実感がしてきたという事なのだろう。泣きながらもステージから視線は離さず、メンバーが出てくるのを待った。お決まりの順で、ヒデちゃんが最初に現れたが、次の瞬間、予想外のことが起きた。メインステージ中央まで行ったヒデちゃんが突如右に曲がり、こちらに向かって歩いてきた。思いもしなかった。ライブの最初から出っ張るなど、誰が予想できただろうか。メンバー4人が揃い、イントロに、4人の奏でる音も加わる。スタンド席ではあったが、一列目の中央真正面。距離はあるはずなのに、歌はすぐ側にいたように感じた。

ついに辿り着くその時 夢の正体に触れるとき
必ず(近くで)1番側で君の目に映る景色にいたい

アカシア

時間が経って冷静になり、気付いたことがある。アカシアは他の曲同様、BUMP4人と、聴いている自分の事を歌った曲なんだと。ポケモンの25周年記念の映像に起用された曲でもあるためか、歌詞に出てくる「君」は、旅のパートナーのような、近くにいる、大切な誰かを思い浮かべる意図で書かれたものなのだと思いがちだった。でも、目の前で歌を聴いて、ようやく分かった。今までと同じなんだ。この曲だって、奏でる4人と、それを聴く自分のことを歌ってくれていたんだ。それをきっと、あの時の僕は、頭より先に、心で感じ取って涙を流していたんだろう。時間はかかったが、やっと意味が分かった。

 その後に続いたグングニルは、午前中会ったBUMPerさんに聴きたい曲を聞かれたときに、自分が口にした曲の一つだった。天体観測だってそうだ。あの掛け合いをどれほど夢に見ていただろうか。出てくる感情全てを書き留めておきたい気持ちはあるが、上手く纏められる気がしないので辞めておく。

僕のためのラララ

 メインステージに戻り、ライブは続く。
『なないろ』では曲の途中で声を出す機会は無いものの、右腕につけたPIXMOBが光り、会場は七色に輝いていた。会場全体を見れる席だった分、場の一体感、そして、その七色に輝く光のうちの1つになれていることが嬉しかった。
 『なないろ』が終わったあと、BUMPの曲の中でも特に好きな曲が始まった。『才悩人応援歌』
決して優しい言葉ではない。でも、きっと多くの人が悩む「才能と自分」というテーマを歌ってくれている。初めて聴いたときの衝撃はBUMPの曲の中でもトップレベルだった。そんな曲を生で聴けただけでなく、BUMPのライブ恒例の歌詞変えも小さいながらあった。

得意なことがあったでしょう
大切な夢があったでしょう

才悩人応援歌


語尾が変わった。文字にすればたったそれだけ。しかし、「ライブという空間は、聴いている人も、その空間を創り上げる重要なピースなのだ」という事を実感するにはこの小さな変化だけで十分だった。ほんの小さな変化でも、こちらに語りかけられているような気がした。
「自分のために歌われた唄などない」と彼は歌ったが、あの場においてはそうではなかった。少なくとも僕は、彼の唄が、あの場にいた僕の、そして、いつの日か悩む僕の耳を目的地にしていると感じた。

 ライブという空間の素晴らしさは、自分に向かって歌われているという意識を持てることだと思う。あの場所、あの瞬間でしか感じることのできない、藤くんの声に込められた熱があった。

Flareでも語尾が少しだけ変わったように聴こえた。

どこにいるんだよ ここにいたんでしょう
ちゃんとずっと

Flare

時々思う。
「自分は別に、特別不幸でもない。でも、何かやりたいことがあるかと聞かれたら自信を持って答えられるものがないし、人に何かを与えることが出来ているかと聞かれても、ポジティブな答えは出てこない。死にたいほど辛い思いをしてるわけじゃないんだ。でも、別に自分が今ここで急に居なくなったって、何か変わるわけじゃない。じゃあ自分がいる意味って何なんだ?」
 高2の夏に水泳を辞めてから、自分には打ち込めるものが無くなった。夢もない。いや、もしかしたら既にあったのかもしれない。でも、見えなかった。こんな思いをしてるもんだから、自分が居るのか居ないのか分からなくなることがあった。そんな僕に、藤くんは言ってくれた。
「ここにいたんでしょう」
空っぽでもそこに居た僕を、見つけてくれたのがFlareだった。これから先も、きっと同じことで悩む日があるだろう。でも、そんないつかの僕に、これだけは覚えていてほしい。君はあの日、自分のために歌ったんだ。自分で気付いてなくても、見つけてくれた人がずっと居たんだと。

その喉から溢れ出したラララ
とても愛しい距離
その耳だけ 目指す唄ラララ

才悩人応援歌


be there

 アカシア、才悩人応援歌、Flareの3曲を特に振り返ってみたが、勿論他に書きたいことはいっぱいあった。MCのときのメンバーがPONTSUKAの時の雰囲気そのままだったこと。ヒロお手上げ🤷
擬音の多いチャマの食レポ。ヒデちゃんの「近くに来れて嬉しいです、ありがとー!」が「フサフサ嬉しいですフサフサー!」に聞こえてしまう藤くん。ライブで気付けたクロノスタシスのベースの格好良さ。
新世界の終わり際、藤くんが渋すぎる声で放った「ベイビーアイラブユーだぜ」
本当に雪が降っているような演出だった『スノースマイル』
全員で声を出した『fire sign』『虹を待つ人』
挙げ始めたら終わらない程の思い出を作れた。

藤くんが、最初のMCで語っていた。楽しい時間はあっという間だと。ありきたりな言葉だけど、本当にその通りだった。

 文字に起こせない感情もあれば、思い出せないほど一瞬の間に込み上げた感情もあっただろう。
でも、あのライブで一番強く感じた思いは
「紛れもなく、今自分がここにいる」という気持ちだった。

 ずっと夢見ていた場所にいた。みんなで出した声が、右腕で光るPIXMOBが、藤くんの歌声が、自分がそこに居た事を証明してくれていた。セトリの曲の歌詞を改めて見ても、聴いている僕たちのことを思っている曲が多かったように思う。
そして、最後に藤くんが語ってくれた言葉が、今までの、そしてこれからの僕の存在を肯定してくれる。

曲作るのって結構大変でさ、全然書けなくなるときだってあるんだぜ。ここどんな歌詞にしよう、何歌おうか。コードはどうしよう、どんなメロディにしよう。沢山悩みます。
そんな曲作りの中、聴いてくれる君の存在が、最後のひと彫りをする力をくれます。

また、曲作ります。また聴いてください。

ものすごくものすごく曖昧な記憶を元に再現したライブ最後のMC


スタンドA-1-60
セットリスト

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