21世紀「永遠平和のために」       21Jahrhundert [Zum ewigen Frieden]

21世紀「永遠平和のために」                         2024.1.11 愚者の声
21Jahrhundert [Zum ewigen Frieden]
日本列島の大地が揺れ動いている。阪神・熊本・東日本・能登半島と、地震と津波になすすべを失っている人々がいる。そして、この列島の美しい土地に展開する自然を破壊しながら、富を追い求める愚かな者が、金と権力を握っている。
世界も人間の自制心は失われ、ウクライナやパレスチナでは、近代兵器を振りかざして人間を日々殺している人間がいる。地球世界の平和は、核戦争への欲求の前に破壊へと進んでいる。人類が絶滅に近づいているのかもしれない。
私が若いころに知恵の高みに見えていたカント先生の著名な書「永遠平和のために」の表紙帯には、「16歳からの平和論―この本から「国連」や「憲法第9条」の理念が生まれた」とある。戦争をすることが人間の本姓であるとする、本書のカントの洞察は鋭い。しかし、平和に到達できる筋道が示されているのであろうか? 17世紀末にカントは、法の支配・武力の一元化・国境線の画定の3大要素を持つ近代国家の確立を期待し、それを集めて国際紛争を調整する国際機関の確立を、永遠平和の基礎概念とした。カントは、近代国家を是としている。当時のヨーロッパの戦争や内乱の状況から、近代国家の成立は解決策だったのだろう。
近代国家の法の支配とは、選挙で選ぶ立法機関の創る政策方針とそれを執行する行政機関、それらをチェックする司法機関という三権分立である。さらに法の支配を貫徹するためには暴力=武力=軍隊等を中央政府が一元支配して、法の執行を国民に強制しなければ、成り立たない。
法の支配の及ぶ範囲を明確にするために、国境線の確定が必要であり、小さな島をめぐっても国境紛争が日常化するわけである。近代国家は、必ず国境線争いをするのである。
私の結論は、カント先生の結論では、21世紀の世界平和には到達できない、無理だろうということである。
アインシュタインとフロイトは、往復書簡で、「ひとはなぜ戦争をするのか」を論じている。
アインシュタインは、物理学では人間の心がわからないので、精神医学の研究者フロイトにこの質問を送った。フロイトは考えあぐねた挙句に、人間の心の中には悪魔がいるのだと答え、ただし私たち二人のように平和を希求する人間もいることは事実だと答えたという。
人間として少しでも希望を持ちたいという二人の気持ちはわかるが、人間の果てしなき欲望の土台の上に近代国家の枠組みがある限り、そのトップに永久平和を追求する人間が選ばれることは永久にないだろうと、私は思う。 トランプ、バイデン、プーチン、習近平、金正恩、岸田文雄、、、などの人物を見れば、それは一目瞭然であろう。彼らは皆、近代国家のリーダーに昇りつめたと自認しているが、21世紀の世界の崩壊を止める思考能力の持ち主ではない。
では、私たちは何をしたらよいのか? 人類絶滅を前にあきらめるか? 少しまじめに考え始めてみようか?

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