スピンをかけて

「ああ やっと私をだしてくれた」

長い間積み本をしていた本を取り出し

分厚いクリーム色のページを開くと

艶やかな紫色をした栞紐しおりひもが大あくびをしてぐねぐね起き上がってきた

「まったくまったく 待ちくたびれたわ 私は蛇ではないのに こんなにも冬眠させるなんて ふああああ」

まだ新しいページに栞紐のあとをほんのり残したまま

彼女はしゅるしゅると回転しながら龍となって

天へ上って行ってしまった

ほのかにまだページの新しい匂いがする

さてはて、妖艶な栞紐を無くしてしまったこの本はいったいどうしようか

ぱらぱらと春風にのって、美しい栞紐を失った本は寂しげにページを自らめくるしかなかった


※スピン…本の背表紙についています栞紐やスケートなどでよく見るジャンプ回転の意味をかけて書いてみました。

遅ればせながら、新年明けましておめでとうございます。
今年も優しい一年になりますように

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