公に晒されている不思議/コンプラ問題②

あってはいけない業界あるある


官公需の問題点

官公庁からのお仕事を官公需と呼ぶ、ということで私の勤めていた会社には官公需の課がありました。国立病院系もここの担当でした。
今の会社には、そのような部署はありません。しかし、およそ業界を見渡してみると、傍目には天下りに見えてしまう欠点はありますが、多くのNPOや社会福祉法人が再任用を終えた年齢の自治体職員を受け入れていますので、官公需やその他申請の助けに必須な人材となっています。
ほかにも理由はあると思うのですが、官公需という言葉もしかり、調達とか行政用語や要綱等を読み解く力を必要とすることもあってのニーズと考えられます。意外と体制に対するアンチカウンターとなるのもポイントで結構、古巣の弱点を突いた攻撃が得意であったり、ありがたいような、敵を作ってしまいそうな感じもあったりします。
問題点というのは、その行政用語の煩雑さであったり、前回を含む首題に関する弱さが一番かな、と思います。

例示

今回は探してきた例から行きます。
著作人格権の侵害と思しき世田谷区史編纂事業でtogetterにもまとめられています。古くは、コロナ禍前から言及されていたのですが、なぜか、2/27日のyahooニュースで、弁護士.jpさんからの出稿記事ですが、まだ続いていたことを知りびっくりです。
問題となっているのは著作人格権の不行使特約で、一方的に結ばされそうになった、という話です。

うちの自治体の場合

私の自治体でも、不行使特約はあります。会社が請け負える事業者として登録した時点で、この不行使特約を受け入れたようなことになっています。
入札できる状態の登録に、契約課が関わっており、契約は取り交わしていなくても、一件でも契約を取って受注すれば、ホームぺージにも記載のある約款が適用されますので、その著作物について著作人格権の不行使特約が適用されてしまう訳です。これは悪い側面だけではなく、計画外の増刷や、訂正や法令の変更時の改定などに著作者の許可を細かにとっていては、その年度中の文書として間に合わなくなったり、を防ぐためと言えます。

とはいえ、一件ごとに丁寧に契約書面を起こさないこと、本来は包括的ではなく個別に対応した方が安全な案件でさえも、行政側のリスクファクターになり得るのに、もったいないことです。
例えば、行政の発注する粗大ごみの出し方手順を記載した『生活のてびき』なるものがあったとしましょう。この中で大量の業務著作があったとします。課員が一生懸命、クリップアートを作成したとします。携帯コンシューマーゲームの捨て方で、Switchの外観やVitaを書くと角が立ちますから、オリジナルの携帯ゲーム機を考えて書いたとします。それらのものを集成して、さまざまなゴミのオリジナルカットを使用し、デザインまで行った著作物リーフレットができあがります。
印刷デザインのルールとしては、この著作物の所有権と著作権はデザイン会社に帰属しますが、この約款の前では、譲渡できる権利は譲渡、一身専属とされる人格権も不行使を約束されることになります。譲渡、所有権の移転を原価に転嫁しようにも、なんと約款に無償で譲渡と記載されています。
そして、総務省や経産省、文化庁などの提言を無視し、実際に下請けに対しての不当な廉売の強要にあたるため法令違反となるのですが、どう言いつくろってもコンプラ違反になりそうなんですけれど、約款でそれを公に予告するのはどうなんだろうか。

そしてさらに…

次年度になって、同じデザインで表紙色違いを発注されたりするわけですが、複製と改変を作った人にお願いしてくるという。そして例年のデザインなので安くしろと言われるのコンボ。
よく考えてほしいのは
一年前 — 
民間:無償で譲渡させられた
官公庁:うちに諸々の権利がある

次年 —
官公庁:うちの文書、不行使になっている著作人格権に基づき、うちが複製改変するから、あなたたちが改造した上で納品して。改変された内容も印刷のデータもいつも通り無償譲渡の上、付帯する諸々の権利は使わないでね♡
となる訳です。

そういえばこんなことも

こんど作る冊子のデザインをお願いしたい、との話で打ち合わせに行き、こんな感じで作れます?にサンプルを持っていったら、他の会社でデータ化して印刷までされるパターン。
印刷までの約束でデータを作ったら、ラクスルで印刷されたパターン。

そのようなこともあって、世田谷区の件は、普通に起こりうるし、契約の方式がおかしいかどうかの検証はされないまま、たぶん前回を踏襲したものと考えられるのです。

ちなみ私の場合、白鷺祭りの日と知らず、松崎慊堂先生のこととか調べに世田谷に行ったのですが、石井至穀著作集と宇津木家文書など彦根藩資料(彦根藩世田谷代官領)が販売されており、非常によい資料館を持っているな、というのが世田谷区に対する感想です。資料を大人買いしました。

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