見出し画像

20240713





もう少しで
触れることが
できるかもしれない

そんな風にかんじたのは
あのときがはじめてでした

ガードレールをはさんで
隣り合わせの

それは
若い牡鹿でした






長く
終わりの見えない
当時の生活に

終止符を打ちたくて

いつものパンプスを履いて
自転車で向かった先は

駅ではなく
まだ行ったことのない
山でした







誰かの
歩いたはずの道を
たどりながら

岩肌をなで

鎖場を越え

傾きかけた陽射しの中

モミの木の林を
足早にぬけると

林道に出る頃には
足が痛くて

仕方なく
履いていたパンプスを
脱いで

そこからは
裸足で







ひたひたと
足の裏にアスファルトを
かんじながら

前方に
鹿を見つけたとき

そのまま
近づいていったとき

それから
隣あったとき

鹿がわたしに
気づいたとき







それらを

一コマ 一コマ

スローモーションみたいに
思い出しては

あと少しだったのになって

なんだか
悔しいというのとも
ちがうのだけど

そんな気持ちになって






もしかしたら
あのときみたいに

一つ 一つ

身につけたものを
外していけたら

また会えるのかもしれないな
って

今でも思ってます




















































この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?