記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

なんかいろいろと惜しいぞ『超探偵事件簿 レインコード』【ゲーム記録:001】

読書ほどではないけれど、たま~にゲームもやっているのでそのレビューでも。

Nintendo Switchで細々とやっていましたが、最近やっとクリアできました。
つか、ダラダラとプレイしている間に、PC・PS5・Xbox Series向けにパワーアップ版が出たぞ!!
有料DLCが最初から収録されていたり、無印Verの問題点だったロード時間が改善されていたり、細かいところで進化しているとのこと。気になる人は要チェックです。


さてさて、ここからが本題。

実際に遊んでいる最中から、それはもういろいろと思うところがありまくりました。プレイ中に取ったメモを見ながら思い出しつつ、つらつらと綴っていこうと思います。
(これ以降はあくまで個人の感想になりますので悪しからず!)

ちなみに、ダンガンロンパシリーズはすべてプレイ済み。
別IPではあるけど、そもそもゲームのプロモーションに「ダンガンロンパ」の名前使ってるし、触れても問題ないかなと勝手に解釈します。

※以下、『超探偵事件簿 レインコード』のネタバレを含みます。ご留意ください。











結論から言いましょう。
このゲーム、めちゃくちゃ人を選ぶと思います。

純粋に練りこまれたビジュアルや世界観は素晴らしいと思います。が、ゲームとしてプレイするにあたり、どうしても超えないといけない障壁がいくつか存在しています。
他のレビューなどでよく問題点として言われている「ロード時間」については一旦置いておいて(プラスの方で解消されてますしね)、ここではゲームの構成について着目していきます。


障壁①「死に神ちゃんに耐えれるか」

かなりざっくりとまとめてしまいますと、このゲームは主人公のバディ?である『死に神ちゃん』が好きか嫌いかで全てが決まります。

そもそも彼女のキャラ設定自体どうなんでしょう?
奇天烈で、お下劣で、傍若無人。普段はヘンテコな見た目のマスコットだけど、本気を出せば超絶美人に大変身。生意気だけどキュートで、本当はご主人様が大好きで、頼り甲斐のあるお姉さん的存在。
うーん、人によってはめっちゃ刺さるんだろうけど…。ぶっちゃけ、「こういう女、お前ら好きやろ?」という狙いが見え透いていて、ちょっと胸焼けしそう…。
記憶喪失の悩める主人公を、狂ったテンションの高さとナンセンスさで引っ搔き回す掛け合いについては、世間的には高評価を受けている部分ではあります。フィールドの世界観やストーリーが重めな為、緩和剤としてのコメディリリーフだったのかなーとは思いますが、逆にそのダークな世界を堪能したい人にとっては、若干ノイズになってしまっています。
ある意味、ダンガンロンパより直接的な「死の裁き」を行う本作において、この明るさに救われたプレイヤーも多いかもしれません。(それが彼女の本当の役割だとも思う。)ただ、それ以外のシーンでも四六時中付きまとう彼女のトーンに不快感を感じないか。もし感じてしまったら、このゲームが終わるまで割と苦行です。

ちょっといろいろと狙い過ぎ?

更に言うなら、彼女の能力について。
言っちゃあなんですが、あまり使えない能力じゃね?というのが正直な感想。
物語の舞台設定の根幹に当たる能力な訳なのですが、記憶を無くすほどのメリットが果たしてあるのか?迷宮を彷徨わなくちゃいけないし、怪人と剣劇バトルする必要あるし、ミスったら普通に死ぬし。
能力使った瞬間即謎解決、くらいじゃないとプロコンのバランスが取れなくないですかねこれ。つかこの能力で命を賭けるレベルなら、フブキの時間操作能力は使っても疲れるだけというぶっ壊れスキルになりますが…。
契約についてもルールがあやふやだし(契約者本人に言っちゃいけない理由がよく分からなかったり)、もう少しうまい使い方ができたんじゃないかなって思う点です。

そして最後に、彼女がいることによるストーリーへの悪影響について。
彼女の言動に振り回されて下手な遠回りをさせられたり、納得度の低い理由で気になる箇所をすっ飛ばされたりします。彼女がいることにより中々物語の核心に迫ることができない為、人によってはかなりヘイトが溜まる設計だと思います。(正直、死に神ちゃん以外の部分でも感じることですが。)
テンポ感を大事にしているプレイヤーもここで苦汁を飲まされます。

といった具合に、要所要所で死に神ちゃんに対するモヤモヤポイントがあります。
勿論、可愛くないかと言えば噓になるし、『ダンガンロンパ』に通ずる性格ぶっ飛びキャラとしてとても魅力的ではあります。が、魅力の広げ方に一癖も二癖もあり、ただでさえ心理的に辛く感じる世界観とのアンマッチさに余計なカロリーを感じてしまったのは事実です。
プレイ中、仮にも彼女の能力によって人が死んでいる訳なのに、「オレ様ちゃんは最高のパートナー!頼って頼って!!!」とか言われても、心の整理がつかず普通に困惑しちゃいました。(プレイヤーの罪悪感を消せていない時点で、死に神ちゃんとしての存在価値が…。)

以上、まず第一障壁についてになります。

障壁②「謎・設定の杜撰さ」

『レインコード』は、言うなれば「探偵モノ」のゲームです。
探偵である主人公が事件の真相を解き、真犯人を突き詰めていくというストーリー。勿論、多種多様な「謎」が主人公を襲ってきます。そしてその謎を、このゲームならではの「特殊設定」(探偵特殊能力など)で解決へと導く、という訳ですね。
ただですね、この「謎」や「設定」というのが結構突っ込みどころ満載でして…。

意外なトリックや仕掛けに驚かされることもありましたし、特に第0章のインパクトなんてとてつもない!ミステリーホラーよろしく衝撃的な幕開けで、これこそ『ダンガンロンパ』を作ったチームならではの演出だ!と感動しました。
ただストーリーを追っていく毎に、細かいところで、「これってどうなの?」「なんでこうなってるの?」といった理解に苦しむ現象が割と頻発します。それも一部の設定だけではなく割と満遍なく。
以下、覚えている限りですが、心で唱えたツッコミ箇所について箇条書きで挙げていこうと思います。

(勿論ネタバレ注意!)

・状況からして確実にカナイ区外に出ていたアマテラス急行の犯人。普通に考えたら日光を浴びて暴走して終わるのでは?

・まず寝ている間に全員殺せよ…。結局真相を隠蔽するならユーマを残す意味がなくない?

・ヨミーの側近であるジルチがカナイ区外に出て殺人を犯す→世界探偵機構(ひいては統一政府)にばれるとカナイ区自体が終わり(ホムンクルスの収容が生き残る条件の為。)→マコトがヨミーを危険視していた、というストーリーだったらもう少し筋が通ったかも。ヨミー周りの話もう少し広げられるし。

・クギ男、隙間から鍵を投げて狙ったところに落とす超探偵能力が必要…。

・クギの利用意図とかをもう少し深堀りできたら、もっと重厚なミステリーになるポテンシャルがあった。ただの異常者で片付けちゃったの勿体ない…。密室の意義が薄れちゃう。

・学校は毒薬を戸棚に置いておくカスセキュリティ。

・そもそも舞台上で殺す理由が弱いと思う。舞台で輝いている瞬間に殺したい程の恨みだったのか?説明あったっけ?

・第3章、国家テロレベルのことしてやることのしょうもなさは最大のツッコミどころ。もはや個人的にはこのはっちゃけ具合が一番良かった気までする。拝金主義のハララが霞むレベルの行動力バケモンダイバー。

・「排水溝に普通に飛び込んだ」とか言われても、これまた超探偵能力か何か使わないと無理でしょ…。

・第0章と違って、逆にシャチを殺す動機が物凄く弱くない?あそこで撃つメリットって何?

・フブキという探偵が、最初から第4章のとあるトリックに使われる前提のキャラだったいうこと。パズルやらQTEじゃなくてもっと上手い使い方あったよ…。

・全体的に言えるけど、可能性を絞る動機がかなり弱い。状況からして○○だった、と断定することがあるが、本当に断定していいの?例えば、3カ月前から博士と同じ空間に犯人がいた場合、などは考慮した?(元ネタの小説みたいな?)似たような感じでアプローチ上の穴が多数あるような気がする。

・ウエスカ博士はホムンクルス実験について認識があった。万が一、自身がホムンクルスと認識してしまった場合はどうするの?正直、3カ月も引きこもってるなら、自身の血の色の異変に勘付くことはあり得るのでは?

・「歳を取らない」ホムンクルスは、子供も成長しない。数年前から雨は降っているのに、誰も成長に気づかない?

・食われた探偵たちの血の色がピンク色だった狙いがよく分からない。ホムンクルス同士で食い合っていたのなら、外部から人肉を入れる必要がない。ただただユーマを騙すためにそこまでやったの?

・そもそも記憶喪失の設定がガバ過ぎる。都合が良いことだけ覚えているのはちょっと萎えちゃう。

・超探偵、こんなに要らなかった説。(フブキの件も含め、正直ストーリーの厚みを増すことには一切繋がらず、ただのお助け道具にしかなっていない。キャラの無駄遣い。)

・死に神ちゃんの能力は確実に人を殺すもの。カナイ区の全員を救おうとしたNo.1の信念と契約内容が矛盾してない?

・意味があるかないかじゃない。真実を見つけるのが探偵だ!→探偵像としていいのかそれ…。

・保安部は?ヨミーは?ジルチは?マジで出番あれだけなの?0章はいいとしても、仲間の探偵含めキャラの活用マジでどうなってるの?

・何も解決していない終わり方。そんな丸投げで正義を語っていいの?街は?政府は?ゾンビ化の問題は?全員が全員今の状態に満足したの?死にたくても死ねない絶望が一番問題なのでは?

・おそらく全体的なテーマは「託す」。ただ、↑の根本がすっきりしないから託すわ!みたいな無責任さも若干感じてしまいそう。

今現在思い出せるのはこんなところです。お目汚し失礼しました。
もうね、穴だらけで推理どころではないです。気になっちゃってストーリーがすんなり入ってこない。

総じてこのゲームは、細かいことは置いといて、インパクトの一点突破で突き進む作品なのかな、といった印象です。第0章の構成然り、最終章のホムンクルス関連然り、とにかくファーストインプレッションの衝撃に全振りしているイメージ。(狙いの読めるゲームは果たして面白いのか…。)
大味でも十分楽しめる方は全く問題はありませんが、細かな矛盾点がどうしても気になってしまう方は要注意です。

パンチのある設定だけど、粗が目立つ。

障壁③「荒削り過ぎるシステム」

最後に、システム面について。
これはよく言われていますが、要は『謎迷宮』に対する不満点ですね。

私の場合ですが、『謎迷宮』と聞いてパッと想像するのは、
・複雑めいた迷路を多彩なアクションで攻略
・出題される問題を解いて先に進む
・途中に宝箱やレアアイテムがあって主人公が強化
・体力ゲージなどのステータス管理が必要
・階層が上がる毎にどんどん難易度が上がっていく

といったようなダンジョンメイズです。想像するだけでワクワクしますね。

では、実際にこの謎迷宮は実際どうだったのか。








えー、めちゃくちゃ一本道でした。

迷路要素、ほぼありません。宝箱や強化アイテム、存在しません。
ただただ、まっすぐ、歩くだけ。
いや、どうにかできなかったんかこれ。

ど派手な演出なのに、ただの真っすぐな一本道…。

途中途中に問題が出されて、それを解くパートもあるっちゃあるんですが、過度な演出とミスマッチしたあまりに優しい難易度設定で、大してカタルシスを得ることができません。

この謎迷宮という箱庭へのゲーム制作陣の熱量はとても感じます。ただ、それはスピード感や謎を解く爽快感にではなく、ビジュアルの奇怪さやどぎつさに対するものが強いです。胃もたれするような甘ったるいこってりさ、とでも言うんでしょうか。
大規模で挑戦的な演出を取り入れていて、テンポ感度外視で「ラーメンとカレーと唐揚げとピザとパフェぶち込みました!!!」みたいなことをしているんです。ただ如何せん、その表現に謎の難易度がついていっていません。ただただ過剰でギラギラして、心理的に辛く感じてしまいました。

あとは、もうこれは根本的な話になってしまうのですが、『謎迷宮』というシステムを取り入れている以上、『ダンガンロンパ』のような議論の飛び交うハラハラ感が全くなくなってしまったのは自分的にはかなりのマイナスポイントでした。
『ダンガンロンパ』の場合、キャラの見た目で印象が左右されるからこそ面白かったり、議論を深めていけばいくほど、当たり前が当たり前じゃなくなる瞬間があり、背筋がぞわりと来る恐怖を感じることができたりしていました。
しかし『レインコード』では、『謎迷宮』に入る時点でもう殆どの謎が分かった状態だし、人殺しが級友の中にいるというえぐみもなく、特に思い入れのない人物が犯人として処刑されていく様を見ても特に何の感情も湧かず…。総じて、ゲームを進めたい欲があまりないまま惰性で続けることが多々ありました。
せめて、敵味方含めキャラクターにより愛情を注ぐことができるエピソード等があれば良かったですが、ゲームボリューム的な観点から難しかったのでしょうかね。(それでもDLCは絶対通常版に収録するべきだったと思う。プラスでは最初から収録されていて良かったです。)

ビジュアルのキャラ立ち具合でいうと、ギンギラの保安部が一番良かったぜ。

そして、これも散々言われております、「QTE」についてもひとこと言わせてください。
マジで、何年前のゲームですか???
(ていうか、ミニゲーム系はダンガンロンパからずっと変わらずこのクオリティなのなんで?)
正直、QTEでゲームとしての面白さが増すか?と言われればそんなことは一切なく、単にストーリーへの集中力を切らす悪手だと思います。こればっかりは擁護できません。
このミニゲーム然り、うっすく引き延ばしたサイドミッション然り、予算ギリギリなのかな…どうにかしてゲームボリュームを増やしたかったのかな…とかいらん想像をしてしまう原因になりました。次回作を作るなら絶対入れないでほしい!

おわりに

長々と語ってきてしまいました。
冒頭で挙げた通り、完全に個人の感想になりますが、本当に人を選ぶゲームだと思います。
全くの駄作というつもりはありません。非常に刺激的なビジュアルが多数あったり、ダンガンロンパを遊んでいるからこその意外性のあるトリックが出てきたりと、面白いと感じる点はたくさんあります。が、同時に、「さすがにこれは無理があるよな…」と、いまいちスッキリできないところも多々ありました。

挑戦的な雨の描写。ゲーム負荷凄そうなのによくこの設定にしたなと思う。

正直、制作側も『ダンガンロンパV3』の後で、悪趣味で下世話なえぐみあるストーリー展開が難しくなっていたと思います。
その中で、探偵としての倫理、苦悩、矜持を丁寧に示しつつ、常に雨降る街という心理的閉塞感と、謎迷宮のド派手な表現をミックスさせた新しい刺激を提供いただきました。
本当に魅力的なシナリオや設定がある中で、もっともっと多方面に深掘りしていけばゲームとしてもとんでもなく面白いものになると思います。
是非、次回作に期待したいところです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?