新刊『夜更けより静かな場所』が出ます
10月23日に幻冬舎から、単行本『夜更けより静かな場所』が刊行されます。例によって、発売日は公式発表のものであり、地域によっては書店店頭に並ぶ日が前後します。
このところ、立て続けに新刊の案内をしております。今までもそれなりに本を出してきたんですけれど、2ヶ月連続で新作の単行本を出す、というのは初めてでして、双方が盛り上がるような形になればいいなと思っています。
この本のテーマは「読書会」です。ある古書店で、深夜0時から開かれる読書会が主な舞台となっております。連作短編集でして、それぞれの短編は語り手が交代しながら進んでいきます。この読書会に参加するのは年齢も立場も違う6人の男女で、この6人がそれぞれの人生でどのように本と出会っていくのかを描いています。
目次を見ていただくと「真昼の子」とか「いちばんやさしいけもの」という章題になっているんですけれど、これが各章における読書会の課題図書のタイトルなんですね。そして実は、すべて著者である私が作った架空の書名です。作中には、課題図書の引用という形で本の中の文章が紹介されるんですけれど、それらも全て私が創作したものになっています。
一方で、実在する本のタイトルや書き手の名前も多数出てきます。それらを見分けながら読み進めるのも、一つの面白さになるかもしれません。
もともと、この小説を書こうと話していたのは2021年頃で、当時はコロナ禍対策真っ盛りでした。小説を含むエンタメは不要不急のレッテルを貼られ、「生きるために必要がないもの」として扱われていました。その現状に対する異議申し立てをしたい、という気持ちがありました。
また、その頃はオンラインの読書会が盛り上がりはじめた時期でもありました。僕自身も読書会にはすごく興味があったし、それを小説のテーマとして取り上げたものはまだないんじゃないかということで、小説幻冬で隔月連載をさせてもらいました。
その後、大幅な修正を経て2024年10月に刊行することになったんですけれど、なんと先月、朝倉かすみさんの『よむよむかたる』という読書会をテーマにした小説が文藝春秋から刊行されまして、「読書会」というニッチなテーマで、しかも1ヶ月違いで小説が出るという偶然の一致に運命めいたものを感じています。
僕はこれを決して後ろ向きにはとらえてなくて、むしろポジティブなことだと思っています。すごく近い時期に読書会をテーマにした小説が出ることで、読書会というもの自体への注目も集まりやすくなるんじゃないかなと思いますし、僕自身盛り上げていきたいと思っています。
ゲラを読んでくださった書店員の皆さんの感想を拝読しているんですが、これが本当にどれも熱くて、感激しています。刊行前のコメントにはいつも背中を押してもらうんですが、今回は本がテーマということもあってか、いつにも増して皆さん自身のエピソードにあふれた、体温を感じるコメントが多いように感じます。本当にありがとうございます!
作品の紹介ページにも書いてあるんですが、僕はこの小説を「読書へのラブレター」のつもりで書きました。本を読むのが好きな方も、そうでないという方も、よろしければ手に取っていただければと思います。
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