びんばっちゃまと妖精ちゃん17

海岸沿いには黒い山がいくつも並んでいます
ここに住んでいる人達は黒い山を ボタ山 と呼んでいます
オム川を渡る橋のこっち側に三つ編みの女の子がコマチちゃんと立っています
コマチちゃんは少し大きくなった男の子の手をひいて、一人息子を待っていました
「おばちゃん おじさんは いつ来らすと?」
コマチちゃんをおばちゃんと呼ぶ女の子はコマチちゃんのお兄さんの娘でナビちゃん
ナビちゃんは初めて会うおじさんに興味津々

「あ 来らしたよ」
際立つ目鼻立ち、とても葉っぱ島から出て来たとは思えない身綺麗な長身の男の人がこちらに歩いて来ました
(え?! あん背の高か人がおじさんね? 
いや  ありえんばい こんおばちゃんの旦那さんがあげん格好のよかはずなかたい)

格好のいい一人息子はまったくウダツの上がらない人でした
なんとか、職につき4丁目に部屋を借りて新しい生活を始めました

秋も終わりの頃、女の赤ちゃんが産まれました
お兄ちゃんになったカミ君やナビちゃんも大喜びでしたが、生活はますます苦しくなりました

一人息子は黒い山のある場所で働き始めました
朝昼晩と交代で働きます
コマチちゃんは一人息子が無事に帰って来ますようにと毎日祈っていました

コマチちゃんは赤ちゃんを預けて働きました
それでも暮らしは楽になりません
コマチちゃんは自転車に乗るのが好きでした
自転車をこぎながら歌をうたうと、流れる涙を風が吹き飛ばしてくれるから

ある秋の日、一人息子は帰って来ませんでした
空にはヘリコプター、町にはサイレンが鳴り響き、人々は走り回っていました
コマチちゃんの大切なカミ君と女の子は駄菓子屋どっさんの前で空を見上げていました

女の子は大人の人たちの笑い声と泣き声が入り混じった普通じゃない様子が怖くて
コタツに潜りました

一人息子は怪我をして帰って来ました
みんな泣いていました
カミ君も泣いていました
女の子はコタツの奥の方に潜って眠りました
知らない女の人がお祝い グジンプー を踊りました
よくわからない
ナビちゃんは思いました(この踊りはウチの方が上手たい)
女の子は思いました(お母さんがお父さんにやさしゅうなったごた)

コマチちゃん家族は5町目に引越しました
少しだけ部屋が広くなりました

ある冬の終わりに男の赤ちゃんが生まれました
肌が白くて茶色いクリンクリンの髪をしています
女の子はクリンクリンが羨ましくて引っ張りました
(ウチげん家は、幸せになったごとあるね〜)

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