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シカゴ・ジャズ・フェスティバル, 2023 1日目 Asian Improv, Francis Wong's "Legends and Legacies"
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アメリカでは、コロナ禍以降に発生したアジア系への差別や暴力に対して、Stop Asian Hateという運動が巻き起こりました。アジア系アメリカ人が社会運動へとコミットするいま、ジャズにおけるアジア系アメリカ人の立ち位置はどうなっているのか。
そんなことを考えているなか、シカゴ・ジャズ・フェスティバルで出会ったフランシス・ウォン(Francis Wong)のパフォーマンスがとても印象的でした。
フランシス・ウォンは、中国系アメリカ人のテナーサックス奏者で、スタンフォード大学でアジア系アメリカ人の権利獲得運動に携わった活動家でもあります。ウォンの活動拠点はサンフランシスコですが、シカゴとも縁が深い奏者です。ウォンは、シカゴ・アジアン・アメリカン・ジャズ・フェスティバルを設立したタツ・アオキ(ベースと三味線奏者)と共演し、シカゴ出身のテナーサックス奏者であるヴォン・フリーマンやフレッド・アンダーソンにも影響を受けています。
今回のステージでは、フランシス・ウォンに加え、AACMのメンバーでもあるというバリトンサックスのムワタ・ボウデン(Mwata Bowden)、サックスのエドワード・ウィルカーソン・ジュニア、ベース・三味線のタツ・アオキ、アオキの娘さんだというキヨト・アオキの太鼓も加わって演奏。スタイルとしては、集団即興を駆使したアバンギャルドジャズ、フリージャズです。
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三味線や太鼓の使用に加え、アジア系アメリカ人ならではのテーマも各楽曲に織り込まれています。アフリカ系アメリカ人作家ジェームス・ボールドウィンのエッセイ集『Fire Next Time』にインスピレーションを得た「The Fire This Time」は、アメリカにおけるアフリカ系、アジア系をはじめとする有色人種の連帯について。映画『オッペンハイマー』の時代において、核兵器の使用について改めて疑問提起したり、第二次世界大戦中の日系アメリカ人強制収容をめぐる楽曲も披露されました。
ジャズはアフリカ系アメリカ人の人々の文化遺産です。けれどもウォンは、差別社会へと異議申し立てをしてきたアフリカ系アメリカ人の音楽伝統ジャズのなかに、アジア系アメリカ人の歴史や遺産をも響かせようとしている。彼のサウンドには、アフリカ系アメリカ人奏者たちへの深い敬意と、コロナ禍以降の時代における有色人種の連帯というテーマが響いているように感じました。
日本に住んでいると、アメリカやイギリスなど西欧圏からやってくる海外ジャズ・アーティストにばかり目が向いてしまうのですが、アジア系アメリカ人のジャズ、そして、日本人をはじめとするアジア人の奏者によるジャズについて、もっと知りたいと思いました。どうして自分は日本人でありながら、西欧圏のジャズばかりを見ようとしてきたのか・・・。
アメリカにおいてアジア系アメリカ人であるとはどういうことなのか。その一端が聴こえてくるようなサウンドでした。
フランシス・ウォンの2022年のアルバム『Legends and Legacies II』(『伝説と遺産II』)はバンドキャンプでも視聴できます。
https://asianimprovsf.bandcamp.com/album/legends-and-legacies-ii
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