離人症のような

I can't remember a passcord for my private Google account

青松輝

現実感というのを感じたことがない。
自分の身に起こることに現実感がなく、いつも他人事のように感じる。

預かり期限が過ぎた財布、試験当日に買う鉛筆と消しゴム、当日まで何も準備しなかった共通試験の出願、怒り、人から向けられる眼差し、恋。

まるで現実感がない。
それは現実からの逃避なのかと聞かれたらそれはそうなのかもしれない。
しかし、こんなのはおおよそ物心ついた頃からずっと続いていてそれが心地よく感じることもしばしばある。


私は、ビジネスホテルが好きだ。最低限のものしか置かれていない空間に、大きめの薄型壁掛けテレビ。その極めてシンプルな空間のイメージが自分に対する自分のイメージなのだ。


この詩のもつ感じはそれに非常に近い。
あらゆる表現はイメージとニュアンスをもっていて、ある人の手に届いた時にそれが言葉で説明されるよりも現実感という質のあるものになる。
短歌の場合は普通に言葉で表すよりそのイメージが、ある人にとってイメージではなく現実感そのものとして届ける力を持っている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?