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初夏のしまなみ海道カブツーリング(5月上旬)




GW明けの5月某日。北海道へ行くための資金を貯める毎日だったが、連日の快晴についにツーリングしたい欲が抑えきれなくなり、しまなみ海道へ繰り出すことにした。

しかし明日の一限目が始まる前に帰ってこなければならない。履修登録が下手すぎて1週間のうち4日間は一限目からのコマ割りになってしまっているのだ。これは普通にやらかした。

今日の午後に福山を出発して夕方に今治に到着、ネットカフェで一泊して翌日早朝に帰宅という流れで急遽予定を組んだ。

午前中は予定があったため、それが終わってからの出発となる。1時頃に尾道からしまなみ海道へ入った。

回数券が1枚だけ残っていた。

しまなみ海道は原付で通る場合、通行料が合計で500円(50円×4回、100円×1回、200円×1回)必要になるため財布からお金を出して、あらかじめポケットにしまった。

料金所は狭いため、料金所の度にいちいちカバンをゴソゴソやっていると後ろから来たほかの原付にせっつかれてしまうのである。

しまなみ海道を通るのはちょうど2ヶ月ぶりだ。前来た時には真冬だったが、今はもう初夏だ。

向島の坂道。個人的にしまなみ海道の中でも三本の指に入るであろう長い坂道。

初夏のややきつい日差しを浴びながら、上機嫌で原付を走らせた。
平日の昼下がりということで道はかなり空いており、走りやすかった。

所々心に留めておきたくなるような景色を見つける度に、カブを端に寄せてパシャリ、と1枚2枚写真を撮る。

因島の、海が見える住宅街。

私はそこまで記憶力がよくないので、こうして積み重ねた写真を後から見返して、旅の思い出をいつでも振り返れるようにしておくのだ。

noteに載せた写真にはかならずメモをして、自分なりにそこで何を感じたのか、どんな物が心を動かしたのか思い出せるようにしている。

因島のどこか。渡ってきた因島大橋が右端に見えている。

もうしまなみ海道を通るのも4回目ほどになるだろうか。同じ道を往復しているものだから、だいぶ道も分かってきた。
初めて来た時、おっかなびっくり料金所にお金を入れた事だとか、側道の狭さに驚いたりしたのがもう随分と昔の事のように思える。

とはいえ、今でも原付道の入口がどこだったか分からなくなってしまう時もある。
看板などである程度誘導はされるものの、いくつもの分岐を正しく曲がらなければ最短距離で今治まで行くことはできない。
油断していると島の奥深くの行き止まりに迷い込んでしまったりする。


生口島。交通量はかなり少なかった。


あっという間にしまなみ海道の中間に位置する生口島にたどり着いた。ここの島はレモンが有名で、多々良大橋の袂にあるレモン谷の絶景が有名である。

ところで、私はツーリングサポーターというナビアプリを使用しているがこの生口島では、案内を原付設定にしてあるのに何故か自動車専用道路であるしまなみ海道に案内されるのだ。しかも毎回。

最初はまんまと引っかかり、高速道路のマークを見つけて何とか引き返した。
他にも高速道路の入口はたくさんあるが、ナビが先導して案内してくるのはここだけだ。

アプリの何かのバグだろうか。まあ途中に料金所があるためうっかり本道にまで迷い込んでしまうことは無いのだが…。

ツーリングサポーターはこれを除けば非常に優秀なアプリなので、現在もGoogleマップと併せて使わせて頂いている。


小さな船着き場から撮った多々羅大橋。しまなみ海道の中でも特に「しまなみ」を感じる橋だと思っている。

今回もしれっと高速道路に案内されたが華麗に無視して原付側道の入口へ向かう。
ちなみに、生口島の南側は特に写真が綺麗に撮れるスポットが集中しているため個人的おすすめポイントでもある。

こういう自販機って田舎を感じられていいよね

自販機をぼ〜っと眺めていたら、昔夏休みに父の実家に家族で帰省していた時に、ジュースがギリギリ買えるくらいしかない小遣いを握りしめてジュースを買いに行った記憶が蘇ってきた。

父の実家は田舎の住宅街にあり、海沿いに田んぼが並びその後ろに背の低い山が連なっている。
夏になると山からじっとりと熱気を孕んだ風が吹き下ろしてきて、焼け付くように暑い。

田舎なのでやることがなく、暇だった私は嫌がる妹を無理やり誘ってジュースを買いに行くことにした。

土地勘があまりなく、スマホもなかったから自販機の場所が分からなくなってしまい、妹とふたりで自販機を探して誰もいないあぜ道をうろついたものだ。
あの頃は妹に蛇蝎のごとく嫌われていたが、妹も暇だったようで飴を渡すと渋々ついてきた。

結局散々さまよったあげく、元の道から少し逸れたところでやっと自販機を見つけた。喉がからからに乾いていたから、買ったジュースはその場で半分ほど一気に飲んでしまったっけ。
妹はお気に入りのよく分からない炭酸飲料(すごく安いけどすぐに炭酸が抜けてまずくなる)を見つけてご満悦のようだった。

妹は元気にしているだろうか。そんなことを思いながら、重たいヘルメットを外して自販機をしばし眺めた。




そうして、レモン谷へやってきた。今日は天気がいいためかかなり自転車の人が多く、谷を登る道のあちこちに自転車を押して歩く人、水を飲む人がいた。

今まで冬のガラガラなしまなみ海道しか知らなかったが、これがハイシーズンのしまなみ海道の、本来の姿なのだろう。
今日は平日だがコロナも収まってきたことだし、GW中に休めなかった人達が有給を使って来ているのかもしれない。

原付に乗る人も普段の倍はいた。通勤や日常生活で乗っている人と趣味で乗っている人では、明らかに装備が違うので見ていて面白い。


レモン谷。随所にあるベンチには水を飲む人や写真を撮る人、ぼーっと海を眺める人などが座っていて賑やかだった。


谷を登るうちに、嗅ぎなれない匂いが鼻を刺激してきた。なんだろうと思い辺りを見回してみると、レモンの木に花らしきものが咲いていた。

上の写真だと分かりにくいが、写真の真ん中辺りに花が咲いている木が白っぽい帯のように見える。

私はレモンの花を見るのは初めてだった。「レモンの花の香り」と聞くと柑橘系の爽やかな香りを思い浮かべる人が多いかもしれないが、なんとなくえぐみを感じる甘い香りだった。
そこまで好きな香りではなかったため少し残念に思ったが、果実を楽しむ品種だと花の香りまでは改良されていないのかもしれない、とも思った。

少し調べてみると、果実の香りとはかなり趣が異なる香りのようでなかなか奥が深い。


多々羅大橋を渡って大三島へ上陸。
「道の駅今治多々羅総合公園」でお昼ご飯を食べることにした。

ここを通るときはいつも朝早かったり夜中だったりするので売店の営業時間内にここを訪れるのは何気に初めて。


売店が営業していたので、軽く覗いてみた。
食堂のメニューがかなり充実していて美味そうだったが、ラストオーダー(15時)を過ぎてしまっていたので、途中のコンビニで買ったパンなどを食べることにした。

こんないい景色を眺めながらのんびりできる場所って中々ないと思う。

人はそこそこ居たが、そこまで多くはないようだ。昼下がりのゆったりとした空気を味わうことができた。

異彩を放っている刻みネギは賞味期限が切れていたので使い切って捨てるつもりで持ってきた。


もう3時を回っているので、あまり食べすぎるのも良くないと思い今日は控えめの内容だ。じゃりぱんは宮崎の名物らしく、いつか本場のものを食べたいと思っている。今日食べたものもなかなか美味しかった。


どこでも買えるセブンイレブンの、ありきたりなおにぎりとパン。だが、最高のロケーションで食べることができたのでいつもの倍は美味しく感じられた。



お腹を満たしたあとは、ゆったりと走り1時間ほどで今治市に到着した。
本日の目的のひとつは、今治の銭湯に浸かることである。

ここ「喜助の湯」はサイクリスト向けの温泉で、自転車工具の貸し出しがあったりサイクリスト浮世絵(???)があるなどチャリダーに対する手厚いサポートが至る所にあった。

原付を止める場所が見当たらなくて少し焦ったが、スタンドにかけるタイプの自転車専用駐輪場がおびただしい数ありその端っこに申し訳程度の原付、バイク駐輪場があった。

何だか肩身が狭い。

かなり目立つ立地で、分かりやすかった。

入浴料は700円(非会員)。脱衣所はそれなりに広めで、思っていたよりも人が少なかったのでのんびりとお湯に浸かることができた。
湯温は低めだったが、ここも最近流行りのサウナがメインなのだろうか。
私はサウナに若干の苦手意識があり、未だにサウナに入ったことがない。

1時間ほどでお湯から上がり、着替えて牛乳を買ってテレビのある休憩所で飲むことにした。
テレビでは夕方のニュースで藤井選手が将棋界の最年少新記録に挑むといった内容のことをやっていた。「同じくらいの歳なのに私とはえらい違いだなぁ」と思いながらぼけ〜っとテレビを眺める。

すると、編笠を被った壮年の男性が「ドスン、ドスン、ドスン」と音を立てながらやってきて、私の2つほど隣に座った。
あまりに大きな音を立てて歩くものだから、驚いて牛乳をこぼすかと思った。

男性はどうやらお遍路さんのようで、編笠には仏教的な用語が筆で書かれ、寝袋やリュックサックなどの大量の荷物を重そうに自分の足元に置いた。

歩き遍路だと、広い四国の海沿いから山中までくまなく回るものだから相当な体力や時間を必要とするだろう。
まともにやろうとすると2ヶ月はかかると言われているのを聞いたことがある。
現代社会では2ヶ月も休める職種はそう多くない。歩き遍路の難易度はかつてよりもむしろ上がっているのではないだろうか。

そんなことを思いながら男性をちらちらと横目で盗み見る。目が離せなくなるほどの強い圧を放っているのに、何故か不思議と存在感が薄いのだ。男性を視界から外すと、「そこに人がいる」のかどうかすら分からなくなるほど場に溶け込んでいる。
強烈な異物感を放ちつつまるでそれが当たり前かのように馴染んでいるのだ。

うまく説明できないが、本気で歩き遍路を成し遂げようとする人は普通とは違った雰囲気を纏い始めるのかもしれない。

あまり見ていると、不審に思われるかもしれない。そう思い牛乳を一息に飲み干して銭湯を後にした。



次は晩御飯だ。まだ昼ごはんを食べ終わってから3時間ほどしか経っていないが、明日は朝が早いため今日は早く寝なければならない。必然的に晩御飯の時間も早くなるのだ。

今治市の名物で、学生の財布に優しく、それでいてしっかりとお腹にたまるもの。
条件に合いそうなものを検索すると、「今治ラーメン」なるものがヒットした。
銭湯から1キロも離れていないところに良さそうな店を見つけたので、ここで晩御飯を食べることにする。


夕暮れのご飯時だというのに、お客さんがほとんどいなかった。

原付を止める場所が分からなくて、駐車場内ウロウロしていたら中の店員さんに見られているのに気付いた。恥ずかしい。

いそいそと荷物をまとめて店内に入る。店内は清潔で、モダンな雰囲気だ。
注文はデジタル機器で行うらしい。今風だが、店員さんとのコミュニケーションにもリスクが付きまとう昨今の情勢には合っていると感じた。

美味しそうなメニューがいくつもあったが、ここはやはり今治ラーメンを注文。店の二番人気らしい。

ラーメンにはレモンがついてきた。


スープは透き通っていて、ほんのりと魚介の香りがする。こってりとした豚骨スープに慣れた舌には少し薄く感じたが、よくだしが効いていて美味かった。麺の量も現在のお腹具合に丁度いい感じだった。




店を出ると、丁度日が沈み始める頃だった。辺りはまだ明るい。随分と日が長くなったものだ。あとひと月もすれば蒸し暑い夏至がやってくる。
銭湯とラーメンのおかげでシャツにうっすらにじんだ汗を暮れの風がにわかに冷ましていった。


本日の宿は、「バンビーズ」というネットカフェだ。泊まるのは初めてだが、前評判はそんなに悪くない感じだった。

アイマスクを忘れてしまい天井の光が眩しかった。


泊まってみた感想としては、ネットカフェの王様である快活CLUBと同レベルのサービスは期待しない方がいい、という感じだ。
具体的には、個室のつくりが安っぽかったり(そもそも仕切られてるだけで密室では無い)テレビのスペックが一段下だったり…と言った感じだ。シャワールームも鍵がかかっていてはいれないようだった。(1人しか入れない?)
快活CLUBは割と誰でも泊まれる感じだが、ここは若干人を選ぶのではないかと思う。

しかし、それを鑑みてもやはり料金の安さは魅力的だった。2000円で9時間横になれるのは凄い。お客さんも私の他にはあまり来ておらず、空き個室が多くあったのも良かった。

漫画もかなりの数読み放題だし、ジュースもコーヒーも飲み放題。なかなかに満足である。



漫画を数冊読み、部屋に帰って横になった。
目覚まし時計を家に忘れるという痛恨のミスをやらかしてしまったのでスマホのアラームを4重くらい念入りにかけて寝ることに。

私は普段腕時計型の目覚まし時計を使っている。これは音が出ずに震えて起こしてもらうことができるので、今回のように音を出したくない環境の時に重宝しているのだ。
9時頃に就寝。


翌朝、3時45分起床。正直寝不足だが、ここで踏ん張らないとサボり癖がついて大学を休むようになってしまいそうだ。最悪留年。それは困るので気合と根性で起きた。

ポップコーンは自分でよそえるので、キャラメルがたっぷりかかっているのが多くなるようによそった。


仮の朝食である。眠気覚ましのコーヒーと、スープとポップコーン。ポップコーンは意外と腹が膨れるので非常に助かった。


4時すぎに会計を済ませ、4時半頃に給油をしつつ今治を出発。

朝の来島海峡大橋。夜が明け切ってない空がいい感じだ。


時間があまりなかったため写真はほとんど撮らずに進んだ。途中腹が痛くなってトイレに駆け込むなどのトラブルもあったが、無事に因島までたどり着いた。


ここでやっと本当の朝食である。本日は1限、2限とお昼まで何も食べられないのは確定なのでここで1度しっかりした朝食を取っておく必要があった。

ローストビーフが好物で売っているとつい買ってしまうが、今回のパンは400円もしたので少々痛い出費だったと思っている。


旅が終わってしまうのが寂しくて、北海道のツーリングマップルをパラパラとめくりながらおにぎりを食べた。
ライダー憧れの地である北海道。ほかにも行きたい場所は日本中にある。時間がある学生のうちに、色々なところを訪ねてみるつもりだ。




今回も半ば衝動的に旅に出たが、安く泊まれる所も見つかったし久しぶりにしまなみ海道を走るのは気持ちが良かった。次の旅はいつになるか分からないが、今から楽しみである。

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