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9月9日 スーパーカブで北海道旅行7日目


皆さんお久しぶりです。


昨日は雄武町日の出岬キャンプ場に宿泊した。昨日の温泉が非常に心地よく、すっかり旅の疲れが取れたおかげか、今日はそれなりに早く目覚めることができた。
適当に寝袋をしまってテントの露を拭ってから8時過ぎには出発。

空は心地よく晴れ渡っている

旅もそろそろ折り返しだ。最初の頃はぎこちなかった荷物の積載も、何度も繰り返すうちに"自分流"にまとまって素早く行えるようになってきた。自分がどんどん旅に特化していく感覚、というのだろうか。

銭湯に行くだけでもボックスを開けて荷物を全部ひっくり返し、あれが無いこれが無いとやっていた頃が懐かしい。
今となっては何が必要なのか考えなくても、雑多な荷物の中から自然とタオル、ビニール袋、貴重品、それとシャンプーなどが入ったポーチをすぐに選び出すことができるようになった。

旅の中で変化していく自分をはっきりと自覚するたびに嬉しくなる。


オホーツク海沿いの道路をぐんぐんと進んでいく。1時間あまり走ると、紋別の街が見えてきた。市街地をサッと走り抜け、道の駅オホーツク紋別に到着。

博物館や美術館のような佇まいだが、道の駅だ。

駐車場がかなり広く、どこに停めていいものか少し迷った。最初はカニの爪のモニュメントをGoogleマップの目標に設定していたのだが、道の駅から意外と離れていたのでUターンして少し戻った。

ここの流氷科学館では、オホーツク海に冬から春にかけて流れ着く流氷についての展示を行っている。
(もちろん道の駅らしくトイレやお土産コーナーもある)
メインの展示は有料だが、流氷に興味があったのでチケットを購入して見学することにした。


立派なシロクマの剥製!

無料エリアにも、見ごたえのある像などが展示してあった。チケットを買い、進むと物々しいゲートが目の前に現れた。

この先には-20℃に保たれている展示エリアがある。夏服のままではとても耐えられる寒さではないので、入り口にあるダウンジャケットを借りた。

すごくもこもこなダウンだが、これを着ても寒かった。

ゲートをくぐるとすごい冷気だ。ダウンを着ていてもしばらくするとじわじわと寒くなってくる。息を吸い込むたびに肺がじんじんする。バイト先の大型冷凍庫もこんな感じだが、あそこよりももっと気温が低いだろう。

氷は透き通っていて、花の美しさを当時のままにとどめていた。

まず目に入ったのは、色々な花を氷漬けにした展示だ。マリーゴールド、チューリップ、クロッカスなどの観賞用の花から、ハッカやラベンダーもある。

花というよりは海藻のテングサみたいだ。

なかでも目を引いたのは手前にあるアッケシソウだ。潮の影響を受ける湿地にしか生えないとされる花。北海道には有名な群生地がいくつかあるが、本州では岡山の寄島干拓地にしか生えていない。
北海道の自然を代表する花のひとつだ。

これは砕けてかなり細かくなったもの。

そして、流氷。これは本物の流氷を保存したものであるらしい。
北海道を訪れるまで、流氷はNHKの特集でしか目にしたことのない、まさにテレビの向こう側の景色だった。その感覚は今も変わっていないが、ここで本物の流氷を見て触ることで、テレビの中の事象が現実のものであるという実感がわいてきた。

他にも、あらゆる魚が氷漬けにされている展示もあった。ホッケやクロソイなどの寒海にすむ魚が多かったが、サヨリやナマズなど本州でみられる魚も多く標本にされていた。
かなり魚種のバリエーションが豊富で、ちょっとした水族館のようだった。

かつては東北の日本海側で多く水揚げされていたハタハタ。

なかでもサケは解剖標本、銀毛、黄金色、卵(イクラ)などかなり力を入れて展示されていたのが印象的だった。


カニの爪と流氷。

また、冬季にこの科学館前の海岸にまで流氷が接近している写真も何枚かあった。いつかはこんな風に白く雪に包まれた北海道を旅してみたいものだと思う。
もうひとつ印象的だったのは、海が流氷に閉ざされると、特殊な砕氷船を除いて一般の漁船は海に出られなくなるという事だ。考えてみれば当たり前のことなのだが、どれだけ寒い冬でも海が凍るなんて、故郷の静岡県ではありえないものだから、何とも言えない感慨があった。

ドリルは男のロマン!!

砕氷船のなかでも「氷なんか砕いて進んでやる!」という強い意志を感じるデザインのガリンコ号。もちろん大好きなデザインだ。

ハサミの根元のトゲトゲがやけにリアル。

科学館を出たあとは、少し移動してカニの爪で写真撮影。ライダーの定番スポットらしい。
結構デカい。冬になると、辺りは白い雪で覆い隠されて、爪だけが白い雪原に取り残されることになるんだろう。想像してみるとややシュールだな…

撮影の後は、1時間ほどカブに乗りサロマ湖へやってきた。湖口に灯台があるらしいが、どうやらそこまで行く道は通行止めのようだ。どうしたものか…。

とりあえず駐車場で撮影。涼しいけど日が差して来ると汗ばむ。

少しGoogleマップを眺めてみると、灯台自体はそのままで、そこへ至る道が工事で通行止めになっているようだった。立ち入り禁止にはなっていない砂浜の方から灯台まで歩いていけないか、試してみることにした。
片道2キロくらいだろうか。

そこそこ距離があってきつそうなので、ガラナ補給。うまい!

歩き始めてしばらくは、こういった砂丘に植物が生えているような風景が広がっていた。

太平洋側と植生が似ているが、やや見慣れない植物もあるな…

この辺りは植物がしっかり根を張って地盤を固めてくれているので、歩きやすい。
Googleマップを眺めながらてくてく歩く。

そこそこ距離があるな…

立ち入り禁止区域には入ってないからいいはずなのだけど、なんだか悪いことをしているような気がして落ち着かない。ドキドキする。

クジラの肋骨のような流木。でかい。

しばらくするとまばらな草原が終わり、ただ延々と続く砂浜に入った。たった数kmといえ、すぐに崩れて歩きにくい砂浜を歩くのは骨が折れた。
時折立ち止まり、休憩がてら広がるオホーツク海を眺めた。こうして見ると、夏のうちは黒潮の砂浜とそんなに変わらないな。

普通に灯台だ!

そうして、辿り着いた。サロマ湖口灯台だ。
辿り着くまで灯台も工事をしていて立ち入り禁止なのではと気が気ではなかったが、どうやらそうでは無かったようでひと安心。
お腹がすいてきたのでここでカロリーメイトを食べる。

対岸が見える。


絶景というほどでもないが、悪くない眺めだ。通行止めのおかげか、ここまで訪れる旅人も居ないようなので独り占めできる。
はるかに広がる黒っぽい海。ここが冬になると、流氷に閉ざされる。白い氷が、ぎちぎちぎしぎしとひしめき合うさまは夏の風景からするとまるで想像できない。

定番のメープル味!喉が渇くなぁ…ガラナだと糖分が多すぎて水分補給にはならないし失敗したかも

カロリーメイトをかじりながら、ふと駐車場にあった看板の内容を思い出していた。
ここ、サロマ湖は昔から漁業が盛んだったが、昔は外海と繋がる道が冬の間に開く自然のものしかなく、漁師は広がる砂丘を超えて船を持ち上げて進んだこともあったという。

何度か外海との連結穴を開削しようとする工事が行われたが、すぐに砂で穴が塞がれてしまう。
そうこうしているうちに、時代は昭和へと移る。そしてあくる年、幾度目かの開削工事の後に大嵐が起こって連結穴が自然に大きく広げられたという。それが、今の湖口灯台(第一湖口)だそうだ。

こんなデカい砂丘を船で超えるなんてすごいな

昼飯のカロリーメイトを食べ終わったので、駐車場までまた数十分かけて戻った。久しぶりに運動したので、事故の時ぶつけた右膝がちょっとだけ痛む。まあでも、これくらいなら問題ないだろう。それよりも、汗をたくさんかいたのでお風呂に入りたい。

駐車場で座り込んでいると、蚊がいっぱい寄ってきた。北見ハッカ油をシュッとスプレーしたら、スプレーしたところだけ避けるようにプンプンまだ飛んでいる。しつこいなぁ。
全身にくまなくスプレーする訳にもいかないのでさっさと退散することにした。
さすがにカブのスピードにはついてこれまい。

この蚊…デカい!

サロマ湖の西側道路沿いには、数箇所展望所があった。といっても、別に高台などではないので、生い茂る草に阻まれて全景を見渡すことはできなかった。

サギ沼原生花園のあたり

道路沿いには今でも漁師たちの生活が息づいていて、走っているだけでもいくつかの港が見受けられた。


少し走って、脇道にそれる。こちら側にどうやら、アッケシソウの群落があるらしいのだ。
路面がアスファルトから砂利に変わったので、広めなところにカブを置いて歩いていくことにした。

荷物を乗せていなければ走れないこともない路面だが、50ccカブのチューブタイヤはパンクするとあっという間にしぼんで走行不能になってしまう。私はパンク修理をやった事がないし道具も持ち合わせていないので、歩いて到達できるなら余計なリスクを負う必要はないと判断してのことだ。

そんなに距離はなかったけれど、隣のやぶからヒグマが出て来やしないかビビりながら歩いていた。

日陰の道なので先程と比べて驚くほどに楽だ。加えて地面が砂のように崩れたり沈まないので、足首に負担がかからず歩けた。

小島のように突き出た地形。「サンゴ岬」というらしい

15分ほど歩いただろうか。看板と、対岸に繋がる吊り橋が現れた。ちっちゃいけどちゃんと吊り橋だ。いわゆるトンボロのような地形の砂州に歩いて渡れるようだ。

吊り橋は狭く、人がすれ違えるかどうかくらいの幅しかない。歩くたびにギシギシきしんで揺れる。

足元に目をやると、水深が少し深くなり1mくらいありそうなところに小魚が群れていた。他に、石の上にはハゼの仲間が張り付いているのも観察できた。浅い所なら底が見えるので、揺蕩う海藻などをしばし眺めた。


小島は一帯が湿原になっており、遊歩道などは特になかった。砂浜に足跡が少しあったが、それだけだ。植生を傷つけないために、歩くのは僅かにある砂浜だけにしておくことにした。

アッケシソウはまだ色付き始めたばかりのようで、大半が緑色だった。
それでも、僅かに赤色のものもあり、グラデーションを描いていて美しい。
いずれは一面に広がる赤く色づいたアッケシソウの中を歩いてみたいものだ。

湖畔で少し休憩。海水が少し茶色く濁っている。

次は北見へ向かう。今夜は快活CLUBに泊まる予定なので、テントの設営の必要がなく、それに従って普段より少し遅い時間まで観光ができる。

真っ直ぐすぎる

ちょっとした峠を超えたりもしながらしばらく走り、北見の市街地にほど近い所までやってきた。
ふと時計を見ると、時間が押している。
あまり日数を取れなかった関係で、明日にはここを発たなければならない。急がねば

駐車場に誰もいない。これ...営業してるのか?


まずは北きつね牧場へやってきた。キタキツネ自体は先日、初山別村のみさき台公園でキャンプをした時に見かけたが、少し距離があったのでもう少し近くで見てみたいと思っていた。


中に入ってみると、お土産コーナーがとても広くて驚いた。なんか木彫りの熊がやたらと置いてある。玉ねぎもあるな

なんかあのダンボール箱、近所のスーパーでも見た気がする

時間もないことなので早速入場券を購入し、中へ入らせていただいた。
牧場と言うから人馴れしたキツネが殆どだと勝手に想像していたが、意外とそんなことはなく殆どのキツネたちは人間が入れないエリアで思い思いにくつろいでいた。
人間の通路を歩いている個体もいるが、こちらが近づけばそれとなく離れていく。街のカラスと同じくらい警戒心が強いな。

気持ちよさそうに日向ぼっこしている。

キツネをこんなふうにまじまじと眺めて観察する機会は今までなかったので、つい何枚も写真を撮ってしまった。

実家にいるコーギーにそっくりだなぁ…まあコーギーのほうがふわふわもこもこしているのに対して、キツネはシュッとしているからよく観察すると結構違う。

日陰でぐっすり。

これでもここのキツネたちは人馴れしており、実際の野生のキツネはもっとずっと警戒心が強いとのことだった。やはり牧場のような閉鎖空間で何世代も育てられれば、必要のない警戒心は薄れていくのだろう。

「大雪の親爺」と書かれている。毛皮の質感の表現の仕方がすごい。

帰りさしにサッと売店コーナーの木彫りのクマを見ていくことにした。
そこらの土産屋にはまず置かれないような値段の商品がいくつも並んでおり、ちょっとした美術館のようだった。


いつからここに置いてあるのだろうな、それなりに古そうだけれど

一枚目の写真の「大雪の親爺」は51万円、二枚目右の商品は28万円、そして二枚目左の親グマと子グマが木に登っている商品に至っては198万円だそうだ。すげえ、大型バイクを新車で買えちゃうような値段だ。

とても一般の観光客向けには思えない。どういった経緯でここに置かれているのか気になるところだ。

木彫りのクマに見とれていたら、時間が押してきたので急いで次の目的地に向かう。
そうしてやってきた北の大地の水族館。ここは淡水魚専門で、北海道に生息している魚が数多く展示されている。
特にここのイトウは館長曰く「多分日本の水族館に展示されている中では一番大きいんじゃないでしょうか」とのことだった。


他種のサケ、マス類と比べて体が寸胴で丸太みたいだ。

イトウ自体は北海道の水族館ならちょこちょこ展示されているのだが、体長80センチから90センチくらいの中型個体を数匹、といった所が多い。しかし、ここの水族館ではそんなイトウを20匹近く展示している。そして、中には1メートルを越すような大型個体も何匹かいる。そんな訳だから、かなりすごい水族館ってことだ。


特にデカい個体

なかでも群を抜いて大きい個体などもおり、あくまで目測だが120センチくらいありそうな特大の個体もいた。これを見るためにわざわざ北見まで来たのだ。デカい魚にはロマンがある…。

産卵のために川を遡上してきたサケを展示している水槽もあった。この水槽では、北海道の河川で採れたサケを漁協の人に分けてもらって展示しているらしい。

遡上サケは皮がブナの木目のように見えることからブナと呼ばれる。


9月初旬の現在、今年の遡上はまだ本格化していないらしい。が、既に数匹のシロザケや、なんとカラフトマスも泳いでいた。

既に背中が盛りあがってきている

カラフトマスは図鑑でしか見たことがなかったので、これは嬉しい誤算だった。産卵期になると、雄は身体が紅色に染まり、顎がぐっと曲がる。そして何より特徴的なのは、背中が盛り上がり、紡錘形だった身体が円形に近づくことだ。この変化は不可逆的に起こるため、シロザケ同様二度と元の体型に戻ることはない。一世一代の繁殖に文字通り全てをかけているわけだ。

そして、この水族館で最も美しい展示だと感じたのは、この滝つぼ大水槽。

とんでもなく美しい。


青色の光の中を乱れ泳ぐ渓流魚たちは煌めいていて本当に美しかった。ドーム状になっていて、横からだけでなく下からも魚の泳ぐ様子を観察できるのも好きなポイント。
思わず見入ってしまったが、閉館が近いのを思い出して後ろ髪を引かれながらもその場を後にした。

Twitterの湿地帯界隈では有名な人

そうそう、事務所の横の壁にTwitterで前にバズった館長が出てくるボタンもあった。
多忙な人なので、残念ながら不在のようだ。まあ居たとしても恥ずかしいのでボタンは押さないと思うけれど...

水族館の隣にドライブインのような場所もあった。もう夕方なので大半のお店は閉まっているけど、晩飯を何にするかまだ決めていなかったのでやっているお店がないか少し歩いて回った。

水族館を中心とするこの一帯で遊べば、半日くらいは潰せそう

やっているお店は少しあったが、フライドポテトなどの軽食しか置いてないようだったので、別のところで食べることにした。

今日はガッツリ食べたい気分だ。そういえば北見は焼肉が有名だったな…
さすがに焼肉は懐が許してくれないが、豚丼というのもいいな。
そう思い、少し調べると近くに美味しそうな定食屋さんがあるのを見つけた。

レストラン小政というお店らしい

カブを停めて中に入ると、常連らしきおじさんがひとり新聞を読んでいた。カウンターの奥からおばさんがやってきて、机に案内してお水を置いてくれる。食べたいものはもう決まっていたので、そのタイミングで注文を済ませた。

アットホームな感じだ。駐車場も狭いし、観光客向けではないのだろう。薄暗い店内の古びたテレビでは夕方のニュースをやっていた。なんとなくぼんやり眺めて待った。いい夕方だ。

うまそ〜!

しばらくして、豚丼セットが運ばれてきた。魚もいいが、やはりたまにはこうして肉も食べたくなる。上に乗っている紅しょうがもいいアクセントになっており、箸が止まらなくなってしまうくらい美味かった。

その後、お会計を済ませようとしたら、お店のおばさんに「あのカブで旅してるの?」と声をかけられた。どうやら窓の外から見えていたらしい。はるばる広島からやって来たことを伝えると、たいそう驚いていた。

「夜は街灯がなくて暗いし、鹿もいるから気をつけてね〜」
「は〜い、ご馳走様でした!」

外に出るとすっかり暗くなっていた。市街地だと思っていたが、確かに街灯が少ないようだ。普段より気持ちゆっくり走り、30分くらいで北見の中心街の快活CLUBに入店した。

思ったより距離があったが、相当な直線道路なので走るのは楽だった。思えば北海道に来てから日没後に走るのは上陸初日以来かもしれない。
50ccのカブの貧弱なライトでは郊外の夜道を走るのは普通に危ないな。旅行も折り返しだけれど、この後も夜の移動は避ける方針でいこう。

我慢できずに小樽で買った推しグッズを広げた図


本日はここまでです。
大変お待たせいたしました。3月11日に広島のアパートを出発し、3月31日に九州、沖縄から無事帰ってきました。述べ21日間の、自分史上最長の旅でした。目標としていた四端制覇も果たしたので、次の目標を考え中です。

大学のほうも無事進級でき、3年生になりました。卒業もそろそろ視野に入ってきます。
今年の夏休みは就活の関係で、あまり長い期間の旅行はできなさそうですが、2週間くらいなら何とか捻出できるかもしれないので、その期間で北海道に行けないか画策中です。

本日の走行距離

雄武町日の出岬キャンプ場から、快活CLUB北見店まで


















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