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9月2日〜3日 舞鶴港→小樽港 スーパーカブで北海道上陸


前回からの続きです。今回は9月3日の夜に北海道へ上陸するまでの流れです。


買い物を終えて小樽の舞鶴に着いたのは夕方の6時半頃だった。まだ夕焼けが始まったくらいの時間で、先程よりは人も増えたがまだまだまばらだ。

燃えているみたいなすごい夕焼けだ。

原付を駐車場に止めて、乗船手続きをしに行った。私は聴覚障害を持っているので受付で障害者手帳を見せなければならない。少し緊張したが、係員さんが優しく対応してくださったのでスムーズに手続きを終えることができた。

支払いはもう済ませてあるので、メールで届いた「申込番号」を伝え、手帳の情報を入力して乗船券を印刷してもらった。乗船券は意外と小さく、私の片手より少し大きいくらいだ。折り畳めば財布やポケットにも入りそうである。

手続きを終えて、受付のある建物を散策した。3階建てで、1階が受付、2階が待合室、3階が徒歩で乗船するお客さんたちの乗船口になっている。

1階

受付。下見の時に撮影したので係員さんがおらず窓口が閉まっている。


お土産屋や、奥に小さな食堂もあった。


小樽や舞鶴のパンフレットが置いてある。何種類か頂いてフェリーの中で読むことにした。


2階

2階埠頭(陸)側。寝てる人が何人かいた。


2階フェリー(海)側。コナンを放送していた。

3階はどうやら乗船開始時刻まで閉鎖されているようだ。


手続きが思ったより早く終わったので時間はたくさんあるし、お腹がすいてきたため夜ご飯を食べることにする。今日のディナーは激安コロッケと激安焼きそば、ついでにサラダだ。

ドレッシング35円。上手い人はこういう所を工夫してもっと安く抑えられるんだろう

まずはコロッケ。100円なのに4つも入っている。これ本当にじゃがいもか??得体の知れない南米の芋だったりしないか?

口に運ぶ。咀嚼。思ったよりも薄く、衣はしっとりと油に濡れ、だいたい想像していた通りの味が口に拡がった。うむ。
美味しくはない。しかし、これを不味いと判定するかどうかは意見が分かれそうだ。110円ということを鑑みると、私は全然ありだと思う。ちゃんとじゃがいもだし、申し訳程度に刻みにんじんのようなものが断面から見える。

次は焼きそばだ。ビニールを剥がすと美味そうな匂いが広がった。おおっと思い口にすると、くにょっとした麺の感触が。一瞬ん?と思ったが、すぐにソースと青のりの味が口内に広がる。ふむ。美味しい。110円とは思えないクオリティーの味だ。妙に水っぽくて柔らかい麺はともかく、ソースはちゃんとしたやつを使っているらしい。


総評
(※私個人の感想です)

コロッケはボリュームや、内に孕んでいるであろうカロリーが高得点。味の方の評価は薄味でいまいちだったが、KAGOMEソースなりオタフクソースなりをかければ化けそうなポテンシャルを持っている。完成されてしまっている焼きそばと違い、購入者がコロッケを受け入れる準備ができているかどうかでも評価が変わるだろう。

焼きそばはボリューム、カロリー、味ともに超高得点。特にその風味がちゃんと美味い焼きそばだった。妙に水っぽい麺は、作り置き故だろうか。初めは気になったが、これはこれでありだ。人によっては普通の焼きそばと同じくらい美味いと言う人も居そうなくらい完成度が高い。110円クオリティーとしては、満点だと想う。

偉そうに講評してしまったが、味なんて食べる人によって評価が変わる水物なのだ。何より、110円という驚安の殿堂も泡吹いて倒れそうな値段でここまで美味い食事を提供してくれたドラッグストアに感謝を述べたい。ありがとうございます。


脳内でこんなくだらない講評をしていると、だんだん日が暮れて辺りが暗くなってきたので、そろそろ原付を待機所に移動させようかと思い立ち上がった。

荷物載せすぎじゃないかと心配していたが、周りにも結構載せてる人がちらほらいてちょっと安心した。

1番や2番と書かれているところに停めればいいらしい。係員さんにそう伺った。停めに行くと、どうやらタイミングが悪かったらしく2番の先頭になってしまった。初めてのバイク乗船で先頭は避けたかったが、一度停めるともう動かせないらしい。

仕方ないので後ろにやって来たゴツいバイクのおじさんに初心者である旨を伝えた。おじさんは「大丈夫大丈夫」と笑ってくれたので、それで少し気が楽になった。

荷物は降ろしやすいようにまとめてある。多すぎてうまくまとまらなかったものもあるが、とりあえず移動や乗船には支障が出ないよう気を使ったつもりだ。

まだフェリーが来ていないので跳ね橋の向こうには黒々とした海が拡がっている。

乗船時間になると、バリケードがどけられて係員さんの支持に従いながら、奥の跳ね橋からフェリーに乗ることになるらしい。


8時過ぎに、手持ち無沙汰で港をうろつき回っていた私の目の前にそれは現れた。

初めは遠かったこともあり「そんなに大きくないな」と思った。しかしすぐにそれが間違いであることに気付いた。

フェリーは真っ直ぐこちらに向かってくる。私が見ていたのは正面に過ぎなかった。

私が立っている埠頭から、数百メートルあるいはもっと離れた場所で、フェリーは旋回し始めた。ゆっくりと回転し、その全貌をあらわにしていく。思わず声が漏れていた。
「デカすぎんだろ...」

こんなデカい鉄の塊が、ほとんど波を立てないでこちらに寄ってくるのに操船の「技術」を感じた。

見ると、ほかの人たちもカメラを構えている。釣りをしていた人たちも、竿をあげてフェリーが通過するのを待っていた。

やがてそれは接岸し、凄まじい駆動音を響かせた後に止まった。船体の前方には「あかしあ」と書かれている。

私は伊勢湾フェリーに乗ったことがある。伊勢湾フェリーもかなりの規模を誇る連絡船(だと思っている)が、新日本海フェリーと比べてしまうとまるで子供のようだ。幼稚園児と成人男性くらい違う。

フェリーが完全に接岸を終えたのは8時45分頃だった。

あれに今から乗るのかと思うと興奮が抑えられない。しかしまだ乗船開始まで2時間半ほど時間がある。バイクも動かせないし大人しく待っているしかない。

今は待合室でnoteをまとめている。待合室には気持ち程度だが冷房が入っているのが偉い。外にいると夜とはいえ蒸し暑く体力を消耗してしまうので待合室でのんびりすることにした。


しばらくして、乗船開始時刻の30分ほど前になったので待機所へ移動した。既に大量のバイクが停められており、多くのライダーが集結している。待機所全体が異様な熱気に包まれていた。

すごくワクワクする。


乗船シーンの撮影ができるようにGoProの調整をしたり、目の前を通過して一足先に乗船していくトレーラーたちを眺めていたら後ろのバイクに乗っていたおじさんが話しかけてくれた。さっき「大丈夫大丈夫」と言ってくれたあの人だ。

話を聞いてみると、どうやら長崎から2日かけて来たらしい。フェリーに乗るのはこれで2回目だと話していた。
さらに、九州の最南端、最西端は既に踏破済みで今回の北海道旅行は3日間で最北端と最東端を制覇して四極踏破証明書を完成させる予定だと話してくれた。

四極踏破証明書の完成は、私が大学生活中に達成したい目標のひとつだ。四つの極点、それにたどり着いたという証明。紙で貰うことで、思い出を形に残すことができる。大人になって年老いてバイクに乗らなくなってしまってからも、それを見返して「あの旅は楽しかったなあ」などと考えるのが私の夢だ。

だから、既に2枚の証明書を持っているというおじさんの話をもっと聞きたくなった。あれこれ話していると、あっという間に乗船間際になった。

トレーラーの積み下ろし。おじさんも昔はトレーラーの運転主をやっていたと話してくれた。

係員さんの指示で、バリケードがどかされる。右側の1番レーンの人達がいっせいにバイクをふかし始めた。辺りに凄まじい轟音が鳴り響く。まるで爆発が起きたみたいだ。これが大型バイクの力か...

1番レーンの人達が次々と乗り込んでいく。私は2番レーンの先頭だ。呼ばれるのを待った。心臓がドキドキする。
数分後、私の番が来た。係員さんに乗船券を見せ、アクセルをひねる。私のスーパーカブは、ほかのバイクよりもややゆっくりと、それでも力強くレーンを登っていった。

ついに乗船した。興奮冷めやらぬまま、早速荷物をまとめて船室に向かうことにする。

なるべく軽く、転倒しないような安定した形に荷物を積み直した。愛車よ、また明日会おう



自室の様子

乗船後、自分の部屋に荷物を置いた後にすぐさま浴場へ向かった。今日はまだお風呂に入っていないのだ、早く汗を流したい。現在時刻は夜の12時。浴場は深夜1時までしか空いていない。

他の人も同じ考えのようで、浴場はものすごく混んでいた。私はギリギリ入れたが、靴箱が空いてなくて諦めて部屋に帰っていく人もいた。

できれば湯に浸かりたかったが、次から次へと人が入ってくるのでシャワーだけ浴びて上がった。

そしてその後、体を冷ますために展望デッキに出てみたところ、素晴らしい夜景とゆっくり遠くなっていく舞鶴港が見えた。しまった、初めに風呂に入ろうと思ったのは失敗だった。こちらを優先するべきだった。

浴場が混むことは予想できていたのだから、初日に風呂に入るべきでは無かった...。せっかくの夜景だが、風呂に入っていたせいで少し見遅れてしまった。

もし読者さんの中に舞鶴から小樽へ向かう新日本海フェリーに乗船の予定がおありの方は、フェリーに乗る前に風呂を済ませておくことをオススメする。

そのまま遠くなっていく夜景を眺めて、フェリーが若狭湾を出た頃に、部屋に戻ろうとしたところ声をかけられた。

誰かと思ったら、さっき話したおじさんだった。どうも連れの1人が先に寝てしまったようで、せっかく声をかけて頂いたのだし少し話すことになった。

おじさんは、ビールの缶をふたつ開けており私と話している最中にもひとつ追加で開けていた。そんなに飲んで大丈夫かと聞いたら、風呂で汗をかけば酒が抜けるから大丈夫だと言っていた。そういうものなのだろうか、私はまだ酒が飲めないのでよく分からない。

おじさんとの話は非常に盛り上がり、バイク談義から始まってこれからの旅の話、普段何をして過ごしているか、それから人生訓のようなものについても説いてもらった。

おじさんはもう47歳だが、大型バイクの魅力に取り憑かれてしまってからはあちこちに行き倒しているらしい。酒が深まってからは口癖のように「君はまだ今からよ、今から」と言っていた。

おじさんの話で特に印象に残っているのは、「バイクに乗る意味」についてだ。楽しいから乗るのはもちろんそうなのだが、おじさん曰くそれだけではなく、「バイクに乗ることで冒険心を育てるんだ、その育てた冒険心が将来君が色んなことに挑戦する時に役立つ」という。

バイクに乗って、色んな所へ行く。それは、私にとってただ「見たい景色を見るため」「遠い所へ行って達成感を味わうため」の行為でしかなかったが、おじさんの話を聞いてからは「私は、変わるために旅をしているのかもしれない」と思いはじめた。冒険心のない、自信が無い私から、自信満々で自分を肯定できる、「俺はすげえんだ」と宣言できる私になるために。

きっと今回、原付で北海道を巡る経験は私にとって、これ以上無いほどの自信の源になる。おじさんと話をしながら、そう思った。

1時間ほど話し込んでいたら、いつの間にか深夜2時になってしまったので、話も落ち着いた所でぼちぼち寝ることにした。おじさんと別れて、自室へ戻る。

おじさんと話していた場所


フェリーは相変わらず揺れているが、エンジンの「ドッドッドッドッ」という細かい揺れと船全体がゆっくり揺れる「ズーーーッ...ズーーーッ...」というゆったりした揺れの2種類があるようだ。あまり船酔いはしない方だが、夜更かししたせいか若干体調が悪くなってきたので早々に寝ることにした。



翌朝。9時半頃に目覚め、顔を洗って髭を剃ってから展望デッキに向かい、前日に買ったおにぎり等を食べることにした。

豆ご飯の豆が枝豆じゃなく、グリーンピースだった。裏の原料の所にもグリーンピースと書いてあったので、表示詐欺では?グリーンピースも好きだからいいけれど…


展望デッキにはあまり人が居ないようだった。少し暑いが許容範囲だ。そして何より景色が素晴らしい。

180度どこを見回しても綺麗な海と空。最高。


起きたあともなんとなく自室で本を読んでいたせいで、朝ごはんを食べた時には10時半を回っていたので、朝ごはんを多めに食べてお昼ごはんを抜くことにした。

朝ごはんを食べたあとは、カフェの展望スペースでのんびりツーリングマップルをめくりながら旅の予定を立てた。インターネットが繋がらないのでGoogle検索はできないが、こういう時に紙の地図があると助かる。

つまみは昨日コメダで買った豆。めちゃ美味いので5つくらい開けてしまった。


船の中では、皆が思い思いの時間を過ごしており、ゆったりと時が流れている。周囲にいる乗客は半分以上が50代から60代のおじいさん、おばあさんばかりで、若い人は少なかった。こういう船旅を、時間のある学生のうちに経験する事ができてよかった。

2時くらいに予定を立てるのにも飽きて、手持ち無沙汰になってきたので浴場に向かうことにした。今の時間なら空いているだろうと見てのことだ。

浴場はやはり空いていた。更に、時間帯も相まって青い海と空がとても綺麗に見えた。体をササッと洗って、ゆっくり湯船に浸かる。しばらくすると、周りにいた先客も上がっていき、私一人になった。

のぼせてしまわないように風呂に足だけ浸かりながら、海を眺めてこれまでのこと、これからの事に思いを馳せた。たった2週間前は、右膝が腫れて痛くて、自分一人ではとても生活できない状況だった。それが今、右足は多少の違和感こそあれ自由に動かせる。失って始めて、歩くために膝がどれだけ重要か痛感した。

もう失敗はできない。私の夏休みは、既に一度死んだのだ。残機は残っていない。普段は大して何も考えずに無鉄砲な行動をしがちな自分に、心の中でそう言い聞かせた。

風呂に入ってから40分ほど経つと、他の客も入ってきて体を洗い始めたので、ぼちぼち上がることにした。自室に戻り、荷物の整理をする。少し眠たくなってきたので、目覚ましをかけてから船室で横になりぼーっとしていた。

その後、到着も近くなってきたので下船の支度を整え、自室を後にする。おもむろに展望デッキに出てみると、小樽港の夜景がぼんやりと近付いてきていた。いよいよだ。あの大地で、私の旅が始まる。そう思うと、ワクワクしてたまらなくなった。

下船前。車が全て降りてから、バイクの降車が始まる。

早めに車両甲板に行き、荷物の積み直しをしてその時を待つ。電波が繋がるようになってきたのでスマホをいじっていると、背中を強めに叩かれた。誰かと思ったら、昨日のおじさんだった。どうやら背中を叩いて気合を入れてくれたらしい。
おじさんは、「頑張れよ」と、笑顔で言ってくれた。私も、「はい、頑張ります!」と、気持ち大きめの声で返事をした。おじさんは、それを聞いて満足そうな顔をして、「じゃ」と、自分のバイクの方へ戻って行った。

おじさんは丸一日程の短い時間に、自分に何度も声をかけてくれた。最後の別れの挨拶も、おじさんの方からだった。内気な自分に何度も声をかけてくれて、本当に嬉しかった。私に足りないものは、おじさんのような積極性なのかもしれない。人に自分から声をかける勇気。私もおじさんを見習わなければ。せめてこの旅の間は、自分から積極的にほかの旅人と交流しよう。そう思った。

しばらくして、乗用車の下船が終わりバイクの下船が始まった。乗った時とは逆方向に誘導されていく。係員さんの誘導に従い進む。ゆっくりと下船口が近づいてくる。下船口からは、小樽の夜景と冷たい風が吹き寄せてきた。舞鶴の重く湿った風とは全く違う。これが北海道の風か...。


前のバイクについてスロープを下る。下船完了だ。ついに、憧れてやまなかった北の大地北海道に自分の力で上陸したのだ。感無量だった。

感動を噛み締めながら、小樽から札幌へ向かう。今夜は快活CLUBに泊まる予定だ。


札幌の中心街にある快活CLUBに泊まる予定だったが、周囲にバイクの駐輪場がない。おかしいと思い調べてみると、札幌では冬季にバイクに乗る人がいなくて儲からないため、バイク専用の駐輪場はそもそも無いらしい。

ヘトヘトに疲れるまで2時間あまり札幌の中心街をさまよったが、いい駐輪場所を見つけられず結局郊外の別の快活CLUBに泊まることにした。落ち着いて睡眠を取れる頃にはもう1時を回っていた。

上陸初日から既に雲行きが怪しいが、明日から始まる北海道の旅を思えばこのくらいはなんでもないように思える。いよいよ明日から本格的に旅行が始まるのだ。

本日の記録

舞鶴フェリーターミナルから小樽港、札幌の快活CLUBまで






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