SHINWA

仲間たちが書いた自分の神話たちの紹介です。

SHINWA

仲間たちが書いた自分の神話たちの紹介です。

最近の記事

草原のバッファロー (さっちゃん)

草原のバッファロー 2016年2月。関西への移住がほぼ決まった頃、わたしは雪の残る那須の森のほとりに居た。“スウェットロッジ”というネイティブアメリカンに伝わる儀式に参加するためだ。 集まったわたしたちはまず、祭司のヒロさんに教わりながら、竹を切り出してドーム状に組み、上から大量の毛布を掛けてロッジをつくった。 それから、水着に着替えてバスタオルを掛け、車に乗り込み、滝つぼに向かう。儀式の前に真冬の水に潜ることを知ったのはその時だった。 驚きながらも、サンダルで一歩一歩

    • 初めに、未来があった。(エリー)

      その世界は、初めに、未来があった。 そして、その未来に向かって、時が進んでいく。 ただ、その未来は、儚くて、微細で、その命を守るためには、私たちは注意深く、そして繊細で いる必要があった。 大学3年生のエリーは、ある映像を受け取った。 川のほとりにある高層ビル。そのビルには、たくさんの画面が並んでいた。 画面いっぱいに数字が表示され、その数字が忙しく動いている。 3年後、エリーはその映像の中にいた。 生まれ育った和歌山を離れ、東京の証券会社のトレー

      • 小角 (まこりん)

        いまから千年以上前のこと。 人里離れた山の中で暮らしていた小角(こつの)は、ある憑き物の声を聴いたのを機に山を降り、葛木の里へ帰ることを決めた。 精霊たちと対話し、自然とつながり、山野を逍遥する日々にとくに不満があったわけではない。ただ、何か胸騒ぎがする。 直感に導かれ、何年かぶりに里へ向かう道中、小角は月を見上げながらたたずむなかで、再び憑き物の声を聴いた。「初めから何も無ければよかったんだ」、そんな強い虚無の言葉で全身を縛りつけてくる。 いつもは術で払い除けられる

        • ある月のはなし (さっちゃん)

          昔々、小さな島に LAU という不思議な子がいました。 島は海の幸に恵まれていましたが、いつからか十分な魚が捕れなくなりました。 困った島人は「そうだ、あのLAU を海に捧げよう」と、葦舟を作り、荒波に放ちました。 その日は満月。LAU はふるえながら月に訊ねます。 「おつきさま、わたしどうなるの?」 「大丈夫。今はゆっくりおやすみ。」 朝になると LAU は、鳴尾という見知らぬ浜辺にいました。 見上げると森があったので、まっすぐ歩いていきました。 森にはオガ

        草原のバッファロー (さっちゃん)

          カカ〜母なる大地の物語〜 (まみーた)

          カカは、田畑が広がるとある村に生まれた。一族の初孫で、大層可愛がられて育った。しかし、その村は男が強く、女はかしずかなければならない。カカは女である。 いずれこの村の女たちのように男に支配されるのか。カカは、男を恨み、女であることを呪った。ある日、いつも遊ぶカシの木の下で、カカは自分の内側から強烈な光が出て、体が2倍にも、3倍にも大きくなるのを感じた。「私は新しいものにならなければならない」肚は熱く体の芯の芯から、そんな声が聞こえた。 しかし、成長とともに、カカは、いつの

          カカ〜母なる大地の物語〜 (まみーた)

          ピンクの地球 (きょん2)

          私はワイプヒア。風の力を借りて水しぶきを遠く大地に飛ばし、眠っていた新たな生命を育ませる。まるで春一番のように。 ワイプヒアとして生を受ける前の私は、正義の中で生きてきた。ジャンヌダルクのように正義のためには戦いも厭わない。私は私の正義に従ったし、多くの民は私に従った。けれど、私には苦しさが残った。私は本当の力を持っていたのだろうか? いつしか自分を大きく見せるために私を偽り続けなければならなかった。 過去の呪縛から抜け出すべく大地に戻ってきた私は、地球のエネルギーととも

          ピンクの地球 (きょん2)