【花咲徳栄甲子園優勝記念】千丸 剛主将の凄い所を全試合観た私が徹底解析!
どうも、はろーぐっばいです。
この記事では花咲徳栄高校を甲子園優勝に導く原動力となった頼れる主将千丸剛選手について語っています。
埼玉県予選から甲子園決勝までの全7試合を観戦した私が、千丸選手の凄さをとことん語り尽くした記事です。
プロ注目の西川、野村の派手な3、4番コンビもいいけど、太刀岡、千丸の渋いいぶし銀の1・2番コンビも好きって方に是非読んでみてください。
※ここからは有料エリアになります。
2017年8月に行われた第99回全国高等学校野球選手権大会は、埼玉県代表の花咲徳栄高校が圧倒的な強さで制した。
プロ注目でU-18日本代表の150キロ右腕・エース清水達也投手。
先発で抜群の安定感を誇った綱脇慧投手。
プロ注目のスラッガーの3番西川愛也外野手。
ミレニアム世代を代表する2年生4番打者・野村佑希内野手。
投打にタレントを揃えた花咲徳栄。
わきを固める選手も充実。
俊足巧打のリードオフマン・太刀岡蓮外野手、強打と好リードが冴えた5番打者・須永光捕手、堅守と勝負強さが光った9番・岩瀬誠良内野手。
挙げればキリがないほど、好プレイヤーが目白押しだった2017年の花咲徳栄高校。
王者に相応しい最強のチームだった。
ただ、その中にあって最もなくてはならない存在がいる。
それが今回クローズアップする2番・セカンド・主将の千丸剛内野手。
花咲徳栄の岩井隆監督が、「千丸がいないとチームは壊れる」とまで言い切るほど、全幅の信頼を寄せる男。
それが千丸剛選手だ。
私は埼玉県大会決勝から甲子園決勝までの全7試合を観戦した。
その中で、試合を観るたびに目を奪われるようになったのが千丸選手だった。
初めてプレイを目にしたのは埼玉大会決勝。
そこで最初に興味を持ったのは岩井監督が千丸選手には簡単に送りバントを指示しないことだ。
この試合で3度ランナー有り&無死もしくは1死で打席を迎えた千丸選手。
後ろを打つ3番西川、4番野村はプロ注目のスラッガー。
普通の高校野球のチーム、監督であれば送りバントを命じてもおかしくない状況。
是が非でも先取点が欲しい県大会予選決勝ともなるとなおさらだ。
しかし、岩井監督は様々な作戦をとった。
ヒッティング、エンドラン、送りバント...
対戦相手としてはこんなに嫌なことはない。
ただでさえ俊足の太刀岡を塁に置きながら、次打者の西川、野村のことも意識しなくてはならない厄介な状況。
簡単に送りバントをしてくれた方がどんなに楽か。
だが、花咲徳栄はそう簡単に送ってはくれない。
元々千丸選手は2年生の頃、強打の花咲徳栄で1番を任されていたほどの打力を持つ。
そんな選手に対して、相手チームはそう簡単にはストライクを投じれない。
しかし、千丸選手は選球眼にも優れるため、ボール球には手を出してくれない。
当然、相手バッテリーは次打者西川、野村のことを考えればランナーを貯めたくはない。
つまりあまりボール球を投げられる状況でもないのだ。
ストライクを投げたいが投げれば打たれる。
きわどいところを投げたいが投げても振ってくれない。
そんな真綿で首を絞められるようなプレッシャーをかける恐怖の2番千丸。
バッテリーの心理的な疲労感は相当なものだっただろう。
埼玉大会決勝で花咲徳栄高校は浦和学院に5-2で勝利。
この5得点は5回に一挙に奪ったものだ。
そのビッグイニングを呼び込んだのは2番千丸選手の強打だった。
0-0の同点で迎えた5回表の無死1塁で打席が回ってきた千丸選手。
送りバントも考えられる状況で、岩井監督がとった策は強攻。
カウントを悪くすることを恐れた浦和学院バッテリーがカウントを取りに行ったストレートを千丸選手は逃さなかった。
あわやフェンスオーバーという、ライトへのフェンス直撃のツーベースで無死2・3塁のチャンスを作った。
チャンス拡大したことはもちろん、浦和学院に与えた精神的なダメージは相当なものだった。
その結果、花咲徳栄は浦和学院投手陣の乱調につけこみ一挙5得点を奪った。
千丸がで安易に送りバントをしていたら大量得点は生まれなかった。
もしかしたら試合の結果すらも変わっていたかもしれない。
試合後、千丸選手は自身のtwitterで『俺のこと埼玉新聞は嬉し涙とか書いているけど、そんな軽いものじゃないよ。去年は嬉しかった。今年も嬉しいよ。でももっと深い』とコメント。
3年連続の甲子園出場を期待されたチームにあって、最もプレッシャーを感じていたキャプテンの言葉だけに、その言葉は深くて重いものがあった。
重圧を跳ね除けた男の真価が発揮されたのは甲子園の本戦。
全6試合に2番セカンドでフル出場した千丸選手。
27打数11安打、打率.407と大暴れ。
1回戦の開星、2回戦の日本航空石川戦では1安打に終わったが、3回戦以降の決勝までは4試合連続でマルチヒット(2安打)以上を記録。
大事な試合になればなるほど、結果を残したのだ。
中でも驚異的だったのは1番太刀岡選手との出塁力。
太刀岡、千丸選手は全試合でそれぞれ32打席立った。
その内二人が連続で凡退しのは11回。
32回中21回はどちらかが出塁したのだ。
つまり相手チームは約7割近い確率でランナーがいる状態で西川、野村の強打者を迎えていたのだ。
ただでさえ厄介な打者を俊足の太刀岡、もしくは千丸を塁に置いて投球することがどれほどプレッシャーがかかることか。
想像に難しくないだろう。
この太刀岡、千丸コンビのレベルの高さを見せつけたのが2回戦の日本航空石川戦。
初回無死2塁、フルカウントで打席を迎えた千丸選手。
通常ならこのケースでは進塁打を狙って打者は引っ張りを意識する。
最低でも1死3塁の形で、西川に回したい。
そこで日本航空石川バッテリーが投じたのはアウトコースの速球。
最も右方向に引っ張りづらい最高のボールだった。
しかし、そのバッテリーのリードを狙いすましたかのように千丸は華麗な流し打ちで三遊間を破るレフト前タイムリーを放った。
通常高校生、下手をするとプロレベルでもこのケースで左方向に打つのは勇気がいる。
もしサードやショートゴロに終わればランナーは進塁できないからだ。
引っ張りを警戒してバッテリーがアウトコース中心に攻めてくるとはいえなかなか流し打ちを選択しづらい。
仮に進塁打を打てなければ、監督やコーチから責められるからだ。
よほど技術に自信がなければ、出来ない選択。
かつてアライバコンビ(荒木雅博、井端弘和)でならした、井端選手が時折見せていたような芸当を高校生が実践できるとは。
それをさせたのは千丸の技術と洞察力、そして岩井監督の全幅の信頼があったからこそ。
監督に怒られるのを恐れず(千丸レベルならそんなことすら考えていないだろうが)、勇気を持って最善の策をとった千丸選手はさすが。
また、このケースで躊躇なく本塁を落としていれた太刀岡選手の走塁技術もさすが。
通常このケースでは左方向の打球では進んではいけない。
初回無死2塁、次打者西川を考えれば自重してもおかしくない状況。
そこで迷いなくスタートを切れた太刀岡選手の走塁センスは非常に高いものがあった。
個だけを見ても厄介な太刀岡、千丸コンビが束になって襲いかかってくる。
こんなにプレッシャーがかかることはない。
高校野球史上に残るハイレベルな1、2番コンビだった。
後に続く西川以降も含めて、花咲徳栄打線の美しくまでの機能美をいつまでも見ていたかった。
そう思わせてくれるほどにチームを機能させたキャプテン千丸選手の技術とキャプテンシーには脱帽させられっぱなしだった。
その千丸選手のプレーで印象深かったのは決勝戦の二つの走塁。
いずれも高校生離れしたハイレベルな走塁だった。
千丸選手の走塁があったからこそ花咲徳栄が優勝できたと言っても過言ではない。
花咲徳栄は1回表に無死2・3塁のチャンスを迎える。
この時、千丸選手は2塁ランナー。
打者西川選手の詰まった当たりの打球はセンターとセカンドの間にポトリと落ちた。
フライをダイレクト捕球される可能性があった中で、千丸選手は落ちることを確信して迷いなく本塁を陥れた。
この走塁には解説の古田敦也氏も舌を巻いていた。
落ちるのを見てからスタートを切ったとしても無死1・3塁で4番野村。
状況としては決して悪くない。
しかし、千丸選手は貪欲に次の塁を狙った。
結果的に複数得点を初回に奪ったことで、花咲徳栄はこの試合常にリードした状態で進められたのだ。
次に驚かされたのは5回表無死1・2塁の走塁。
千丸選手は1塁ランナーだった。
4-2で花咲徳栄リード。
ただ、広陵がじわじわ追い上げてきていただけに、なんとしても追加点が欲しい状況だった。
ここで打者西川選手がライト後方へ大飛球を放った。
ライトがギリギリ捕球出来ず、結果的に走者一掃のタイムリースリーベースとなった。
ただ、ライトが捕球してもおかしくない状況だっただけに、一塁走者は3塁止まりでもおかしくなかった。
だが、一塁走者の千丸選手は迷わず本塁を陥れた。
このケースも、打球が落ちるのを見てからスタートを切ったとしても無死2・3塁で野村選手を迎えることもできた。
状況としては悪くない。
しかしまたしても千丸は積極的な好走塁で本塁を陥れた。
この積極的な走塁が勢いをもたらし、花咲徳栄はこの回一挙6得点。
試合の流れを完全に自分たちのものとしたのだ。
思えば花咲徳栄は埼玉大会決勝でも、5回に大量得点を奪って試合を優位に進めた。
そして、甲子園の決勝でも5回に大量得点。
それを呼び込んだのはキャプテン千丸の積極的なプレイだった。
記録上はいずれも1安打と1得点。
打点を上げたわけでもなく、ハイライトシーンでは目立たない活躍。
しかし、間違いなく最も貢献したのは千丸選手だ。
チームのために最善かつ、最高のプレイをし続けられる頼れるキャプテンがいたからこそ、花咲徳栄は埼玉県勢初の栄冠に輝いたのだ。
優勝後の勝利キャプテンインタビューで千丸選手は「本当に、先輩たちの悔しい思いを目の前で見てきて、自分たちこそはと我慢我慢でやってきて、我慢が実を結んで本当にうれしい。後ろには西川、野村というすばらしいバッターが揃っているので、後につなぐんだという気持ちが結果につながりました」と話した。と謙虚に答えた。
普通の18歳ならこれだけの活躍をして甲子園優勝となれば自分語りをしてもおかしくない。
むしろそれをしても良いし、それだけの活躍をしている。
しかし、千丸キャプテンは最後の最後まで黒子役に徹したのだ。
実は千丸選手は2年生の時の甲子園で苦い思いをしている。
3試合に出場して8打数1安打、打率にして.125。
大舞台に思うような活躍が出来ず、先輩たちに有終の美を飾らせるとができなかった。
その悔しさをバネにして、技術的にも精神的にもたくましくなったのだ。
その原動力になったのは監督とチームへの恩返しの気持ち。
決勝進出を決めたインタビューでは下記のように語っている。
「初優勝とか、何年ぶりとか興味はありません。応援していただいている方に喜んでもらうためにも、プレーで恩返しするしかない。岩井先生(隆、監督)を日本一の監督にする。それだけです」
どこまでも滅私できる最強で最高のキャプテン。
それが千丸剛という男なのだ。
今後千丸選手がどんな野球人生を歩むのかはわからない。
大学や社会人で活躍するだけの力はあるし、そこで成長できればプロの道も見えてくるかもしれない。
次のステップでの彼の活躍が今から楽しみでしかたない。
2017年、甲子園に燦然と輝いたダイヤの原石の更なる成長に期待したい。