見出し画像

別室登校について

私は今高校3年生でもうすぐ高校を卒業する身である。だから、タイトルにつられて、これを読んでいる少年少女には是非とも、まるで先輩からのくだらない昔話かのように聴き流してほしい。だが、私が本当にこの話をくだらない昔話だと思っていたのなら、私はこの文章を書いていない。つまり、何が言いたいかというと、読んでくれたら嬉しい。

今回書く文章は思い出の話であり、私がなぜ別室登校をすることになったのか、ということは割愛し、また別の機会にまとめようと思う。

私の通っていた中学校は田舎とも都会とも言えないような場所に位置していた。それなのに何故か、その当時生徒数は市で一番を誇っていた。だから、本当に色んな同級生がいる学校だった。私のように別室登校をしなくて、3年間通っても、名前を知らない同級生がかなりいるくらいだ。だけど、私はそれに少しだけ救われていたと思う。色んな同級生が、いや、生徒がいたのだと思う、私が入学する前にも。だから、別室登校ができる別室が用意されていた。担当の先生もいた。私はそういう歴史と別室という部屋と先生で守られていた、そんな時代の話である。昔話である。

朝は普通に通っている生徒(普通という言葉を使うのは苦手だが、この言葉以外に表現が見つからなかった)より、30分ほど、私は遅れて登校した。もちろん、それは遅刻だったが、私は通知表の遅刻数が増えることより、朝に登校する生徒で溢れている正門を通ることが怖く、嫌だった。何が怖かったか、それは人の目で、私のことを知っている人に会うことだ。だから、遅刻して、登校した。

別室に着くと、上靴を脱いだ。別室にはマットレスがひかれていたからだ。まず、それが教室に通うこととの徹底的な違いだったように思う。そして、並んでいる上靴を見て、誰がいるかわかる。(今日は〇〇いないんだな。)なんて把握したりする。

別室の中にはテリトリーみたいなものがあり、私は真ん中の壁側の席を使っていた。そこの席に着き、少し勉強をする。そして、みんなのタイミングが合えば、トランプをした。真剣衰弱や大富豪やここで書いてもわからないようなルールのものまでたくさんのトランプゲームをした。

ここまで読むと、別室登校って楽しそう、だとか思う人もいるとは思うが、そういう声に対して、私は否定も肯定もすることができない。なぜなら、別室で響くのは笑い声だけではなかったからだ。

別室登校をする前に面談というものを私の中学校では行わなくてはならなかった。その面談で別室登校を許可されるかされないかが決まった。そして、少なくとも私はこれからどうしていきたいのかということも聞かれた。教室に行きたいということなら、教室に行く科目を徐々に増やして、最終的に教室に復帰できるように先生たちはサポートをしていたように思う。だが、教室に復帰をするのは簡単なことではないと私は思い悩む彼彼女らを見て、あるいは私自身の問題から、そう思っていた。

私は常に葛藤していた。このままここにいることはなんの解決にもならないんじゃないか、高校にちゃんと行けるのか、下がる内申点、でも行きたくない。そんな思いが頭を駆け巡り、苦しかったのをよく覚えている。

そんなことを考えて、少し無理をした後に、私は何もできなくなってしまい、病名が付いた。病名が付いた後か前か忘れたが、ある日私は大泣きし、先生に「ずっとここにおったらいいから。」と、言わせてしまう。私は担当の先生が代わっても、代わる前のその先生の言葉を心の避難所にしていた。先生のその言葉をくれる前から身体の避難はもうしていたけど、心は避難できていなかったらしい。

結局その後教室に行くこともあったが、私は卒業が近くなるとあまり教室に行くこともなくなった。最後の別室登校の日には最後の挨拶をして、手紙をもらい、色んな先生や同じ別室の仲間からのメッセージを寄せ書きして、壁に貼ってあったあの作品がすごく印象に残っている。

今でもあの儚い日々のことを思い出すことはある。高校に入学したばかりの当初はよく思い出し、戻りたい、と思っていたが、今はそう思うことはない。なぜなら、戻ることなどできないからだ。それにあの頃も素敵だったと思うが、今はもっと素敵だ。だから、思い出したら、色んな人に、色んなことに、ありがとう、と心の中で思う。それぐらいの距離感だ。

高校3年生になっても、別室の仲間で集まることはできていない。先生が忙しいことということもそうなのだが、単純に連絡先を交換することができなかった。

みんなは今、どうしているのだろうか。男の子はかっこよくなっていたりするのだろうか、女の子はかわいくなっているのだろうか。元気にしているのだろうか。

私は元気だよ。何も後悔なんてしなかった。そもそも想像なんてできない。別室に行かずに教室に通っていたらなんて、みんなと出会えてないってことを想像することじゃんか。だから、ありがとね。あのときあの別室に居てくれて。そう思ってる人がここに居ること忘れないで。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?