データ基盤を作ってもデータ分析ができるようにはならないので、作るのと使うのは一緒に考えよう

データ基盤は令和の箱物行政にしないために

どうもデータ基盤を作ったりするのに比べると、データを使う話、特に意思決定のための分析について語られることが少ない。

もちろん単純に比較できるような話ではなく、データ基盤が不要だという話でもない。それにしても偏りすぎであり、この10数年(どころかずっと前から)かわらない。

その理由の1つには「データ基盤を作ってデータを集めておけば、あとはデータが活用できる」という考えがある気がしている。今回は、それは間違いであり、正しく使うためのスキルはデータ基盤を作ることでは養われることはないということを書いた。

データ基盤があっても正しくデータ分析ができるようにはならない

「食材と調理器具があれば料理はできる」は間違いではない気がする。しかし「正しく料理ができるか」という点から考えると怪しい。

料理をするにしても、何も教えずに食材と道具を渡すだけだと何が起きるか。例えば、

  • 生肉を切ったまな板を洗わずにサラダ用の生野菜を切る

  • 猫の手を作らずに包丁を扱う

  • 油、塩、砂糖を大量に入れたらおいしいからと毎日作り続ける

といったことが問題だと知らなければ健康を損なうどころか生命の危険のリスクさえある。つまり「食材と調理器具があれば正しく料理はできる」は間違いである。材料と道具を渡すだけでなく、料理のやり方まで伝えなければ正しく料理ができるようにはなれない。

同じようにデータについて考えてみると似ていることがわかる。データは食材であり、データ基盤はシステムキッチンでありフライパンであり冷蔵庫である。

つまり、「データ基盤があれば正しくデータ分析ができる」もやはり間違いである。

道具だけ揃えてもデータ分析はうまくはならない

一流選手と同じ道具を使っても一流選手と同じプレーはできないし、豪華な設備があれば料理がうまくなるわけではない。特に初心者であれば道具での差など微々たるものだろう。まともに使えないぐらいぼろぼろでは困るが、とりあえず使えるぐらいのレベルでも問題はない。

これも同じように考えると、どんな高性能なツールもたくさんのダッシュボードも、ただ誰でも使えるようにするだけではうまく分析ができるようにはならないということもわかる。

ないよりはあるほうがいい、は嘘ではないがそれはコストパフォーマンスを無視してもいい場合だけだ。予算が有り余っているのであれば誰がどれぐらい使うのかわからないまま先にデータ基盤に投資してもダメージは少ないが、他にリソースを費やした方がよい企業の方が多いのではないか。

きちんと使いたければ分析するためのスキルが必要だ

つまり、データ基盤をきちんと使いこなすためには、分析が正しくできるスキルを身に着ける努力をしなければならない。

データに関わっている人にとっては当たり前でも、世の中ではまだまだ「データを扱うから」とひとくくりにされている。それは求人情報などでも基盤の構築から分析(あげくは施策を検討して意思決定まで)までが1つの職種の募集要項に書かれていることが多いのを見ればわかる。

「データを作るスキル」があるから「分析するスキル」もあるだろう、と考えてもいけない。ビルの建築家に「ビルが作れるのだからビルの中で行われれる会社経営もできるだろう」と期待するようなものだ。

中には両方できる人も、独学でうまくやる人もいるだろう。しかし、特定の個人のがんばりを期待してシステムとして作らない、というのは日本の悪弊の一つだと思う。頑張ってくれる個人が出てくるか採用できることを期待するよりも、正しく使える人を増やす方法についてもっと取り組んでもいいのではないか。

データの活用はデータの専門家に任せることではない

システムに組み込んで自動化したり、局所的で限られたデータで改善ができる部分については”データの専門家”に任せる方がいい。しかし、それが成立するのは分析の中でも一部でしかない。

  • 経営の方針を決める

  • 来年の計画を作る

  • どこの会社にどのような提案をすればよいかを考える

  • 誰を採用するのかを決める

といったような問題を”データを扱う専門家”に任せる人はいないだろう。かといってビジネスサイドがデータのリテラシーというべきことを身に着ける機会もない。そのために「データの専門家に丸投げする」か「抽出してもらったデータを見てるだけ」になっていることが少なくない。

データ基盤を本当に活用したいのであれば、ビジネスサイドもデータの扱いを身に着ける必要がある。それはSQLがちょっとかけるとかダッシュボードが作れる、ということではない。

  • 分析は決める前にやる

  • グラフを正しく読む

  • 中立的に考える

といった、分析のために知っておくべきことがもっとあるはずだ。

データ基盤を作るのと同時に、分析に使うことも一緒に考えよう

「データを使うこと」が先にあってそのためのデータ基盤であるはずだが、「データを作ること」の方が盛り上がっている。そうではなく「作ること」と「使うこと」は同時に考えるべきだ。

そのためによりビジネスサイドがデータの使い方はもちろんのこと、さらにデータを使う人の使い方についても身に着けてほしい。しかしいまのところ学ぶ術がなさそうなので、自分なりにまとめて提供するつもりだ。

と、構想から2年ぐらい経ってるが全然進んでいない。そろそろまとまったものはあきらめて、できたところから小出しにしようかと思っている。

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