今年は豊作だ
放送演劇台本「今年は豊作だ」
語り
むか〜しむかし、ある所に不作村という、たいそう不作な村があったそうな。ずっと野菜や米がとれなかったが、ある年、いきなり米がたくさん実ったんじゃそうな。不作村に住んでいる男の子、チョピスケは、一度も食べたことのないその米でオムスビを作って食べてみた。
チョピスケ
んん〜…うんめぇ〜!これが米かぁ!おらこんなうめえもん食ったことねぇぞ!ひゃっはー!おっとうとおっかあにも食わしてやろ!
語り
チョピスケはオムスビを家のおっとうとおっかあにも食わせてやったそうな。
チョピスケ
米ができたぞー!オムスビ食ってけろー!おっとうとおっかあも食ってみろや!
おっとう
あぁあ〜…うめぇ…うめぇよ〜!
おっかあ
おいしいわぁ…米なんて、本当に久しぶりですねぇあんた!
おっとう
んん〜んん〜…(涙)
語り
ちょうどそこへ、ノラ猫のニャンコロスケが通りかかったそうな。
ニャンコロスケ
ん?何食べてるにゃん?
おっとう
おぉ、ニャンコロスケ、おまえも食ってみぃ!米のオムスビだど!
ニャンコロスケ
何?オムスビにゃん?…もぐもぐ…んんー!うまいにゃーーーーーーーーーーーーんッ!
おっとう
そうだろぅ、そうだろぅ。オムスビはうまいよなぁ。
ニャンコロスケ
チカラが、チカラがみなぎってくるにゃ!チカラがどんどん湧いてきて思わずひゃくれつ肉球にゃーん!にゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃ!猫パンチ!あ、そうだにゃん、このオムスビ、隣村でシコふんでるお相撲さんにもわけてやるにゃ。
語り
ニャンコロスケはもらったオムスビを、隣村でいつもシコを踏んでる力士にわけてあげることにしたそうな。
力士
どすこーい!どすこーい!はぁ…はぁ…はぁ…ど、どすこーい!
ニャンコロスケ
おい、力士!
力士
?何だ、にゃんこぉ!どないした?
ニャンコロスケ
隣の不作村で米がとれたにゃん!おまえにもわけてやるにゃん!
力士
なんと、にゃんこぉかたじけのぉ!いただきます!もぐもぐ…んんんんんんんんー!!!!んんんんんんんん!んーーーーーーーーーーーーーー!んーーーーーーーーーーーーーー!
ニャンコロスケ
どないしたん?
力士
うまいでごわす!うまいでごわす!これが米のパワーか!チカラがみなぎって思わず巴投げ!どすこーい!どすこーい!
語り
力士がオムスビを食べた時、ポロポロ落ちた米粒はなんでか知らんが地獄まで落ちていったそうな。地獄の鬼たちは天から米粒が降ってきたんで皆びっくりぎょうてん。
鬼A
うわぁー!なんだこれ!
鬼B
し、白いのが落ちてきたぁー!あぁああぁああ!あーーあぁあああ…あ?…?もぐもぐ…これ…美味いぞ?
鬼A
え、マジで?もぐもぐ…ホントだ!うまし!これ米じゃね?
鬼B
これ米だ!ぜったい米!米米米米米米米米米!
鬼A
あ、いいこと考えた。この米集めてオニギリつくって閻魔様に差し上げようぜ!俺たち褒められて給料アップかも!
鬼B
せやな!
語り
鬼たちは降ってきた米粒を集めてオニギリをつくって、閻魔様に持っていったそうな。
閻魔様
はぁ〜なんか最近疲れててぇ〜、ちょーヤル気出ないってかんじ〜。舌抜く気力ないってかんじ〜。ちょべりば〜…
鬼B
閻魔様ー!オニギリっすよー!
鬼A
食ってけろー!
閻魔様
え、オニギリ?…もぐもぐ…あ、ちょーおいしい!米のチカラまじでパネェな!なんかヤル気出てきたかも!ちょっとそこのあなた、舌出してごらんなさい!そこの奥さんも舌出して、ね!んん!素晴らしい!
語り
すっかりご機嫌になった閻魔様はそのオニギリを、ペットとして飼っているアザラシのタマちゃんにも食べさせてやることにしたそうな。
閻魔様
タマちゃーん!タマちゃーん!
タマちゃん
あっあっあっあー!
閻魔様
タマちゃーん!おいでー!
タマちゃん
あっああーぅ!あっあー!
閻魔様
おーよしよしよし!おータマちゃんよしよしよしよしよしよしよし!
タマちゃん
あっあー!
閻魔様
ねぇタマちゃん、今日はね、タマちゃんにプレゼントがあるんだよ♪
タマちゃん
あっあー?
閻魔様
ほら、コレ、なんだかわかるかな?
タマちゃん
あー?
閻魔様
コレはね、人間が米っていうので作った、オニギリっていう食べ物なんだよ♪
タマちゃん
あっあー!ハァハァハァハァ!
閻魔様
はい、どうぞ♪
タマちゃん
ムシャムシャムシャムシャムシャ!
閻魔様
タマちゃん、おいしい?
タマちゃん
ムシャムシャムシャムシャ…あっああーー!あっあー!
閻魔様
そうかそうかそうか〜♪よかったね、よかったね〜!
タマ
あっああー!
語り
こうして、その年は不作村を中心としたごく一部の人たちが幸せになったんだとさ。めでたしめでたし。
(2011年)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?