ある夜

詩「ある夜」

静かな草原でライオンが
存りもしない偶然を待ち侘びる
見上げると満月の角とキスする雪
これから先も眠らないでいようよ
あの去ってく踵がうそぶいてる

あの街の明かりのうちどれかが
いつか見た太陽沈んだ星ぼし
その瞬きが
誰かの微笑みを拾おうとしてる

風と遊ぶヒゲの隙間から
家路をたどるせわしない火のこ
馬鹿な瞼おろかしい台詞
頬いっぱいの腕時計
仄めかす飼い馴らされた思い出

この空の下でその時がくればきっと
これまでを静かに見ていた大勢の心は
本当に目覚める

(2019年12月「小文芸誌 霓 xiii」にて発表)

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